第31話 偏向報道の被害に遭うヴァン
そうして、夕食を済ませた二人は先ほどと同じようにソファーに座ってテレビを見ていると、
「はあ?何で俺が悪者みたいなことになってんだよ」
昼間の出来事のニュースが流れていた。
それも偏向報道でヴァンが悪者になっているというものが。
ヴァンはあまりにも酷い偏向報道についついツッコミを入れてしまう。
このニュース番組では、政府の研究施設が非道な研究を繰り返すマッドサイエンティスト御用達の研究施設だと紹介されている。
しかし、実際はまともな研究しかしていない超クリーンな研究施設だ。
何なら、特設サイトでどんな研究をしているのかも全て載っている。
ヴァンも中を確認した感じ、特にそのような雰囲気もなかった。
何なら、今日会った研究者のマニシャは楓のホムンクルスたちを保護していた。
だが、テレビのニュースでは非人道的な研究をしていることになっている。
あまりにも酷すぎる偏向報道にヴァンは深いため息をつかざるおえない。
それだけならまだマシだったのだが、ニュースではそのような施設から非人道的な実験に巻き込まれている人々を救うために真聖教会が動いたことになっていた。
実際は真聖教会が一方的に攻め込んで来たのに加え、ヴァンはあくまでも防衛戦をしていただけだ。
逃げた真聖教会の者たちは普通に見逃している。
それなのに、逃げる信徒たちに追い討ちをかけ、皆殺しにしたと報道されている。
一体、あの場面を見てそう思ったのか脚本を書いたやつの頭を見てみたいものだ。
そのせいで、彼らの侵攻を止めたヴァンは極悪人としてニュースで批判されていた。
確かに、ヴァンは良い人とも言えないが、それでも非人道的な実験などしたことがない。
このカーサスの街では割と普通の方である。
それなのに、ヴァンは極悪人扱いでニュースに出演しているキャスターたちに批判されている。
そのことにイライラしたヴァンは今からでもニューススタジオに突撃して皆殺しにしてやろうかと思った。
しかし、あくまでも思うだけであり、実際の行動には移さない。
何故なら、暴れたところでヴァン側にはメリットがないからだ。
なので、ヴァンは怒りこそはするものの、別に何かしらの行動に出ることはない。
それに、偏向報道などこの街では当たり前の日常だ。
きっと、この報道局は真聖教会の息がかかっているのだろう。
それならば、このような偏向報道をするのも納得がいく。
本当にメディアは平等性のかけらもない奴らばかりだなとヴァンは呆れる。
そうして、ヴァンはため息をついていると、
「よくもまあ、こんな偏向報道を堂々と公共の電波に流せるものだな。どんな頭をしたらこんなことが出来るんだ?ここのメディアは頭おかしいのか?」
隣で楓が偏向報道をするメディアに呆れ返っていた。
それも偏向報道をされているヴァンよりもだ。
そんな楓にヴァンは話しかける。
「そうか?メディアっつうもんは大体こんなもんだろ。そっちの世界では違うのか?」
「ああ、私の国では偏向報道なんてした日には、放送法違反でその会社は取り潰しになるぞ?」
「マジか。そっちの世界のメディアは結構まともなんだな」
「まあ、まともになったのはだいぶ最近のことなんだがな。ちょっと頭の悪いメディアが私の国の王様の妃を馬鹿にしたことがあったんだ。それ以降からメディアはまともになったらしいぞ?」
「あれか?その王様が怒ってメディアの偏向報道を規制する法律でも作ってことか?」
「いや?怒った王様はそのメディアの関係者全員を自分の手で皆殺しにしただけだぞ?特に法律の制定とかはしていない」
「それ、余計にヤベェじゃねえか!!」
楓からの予想外の返答にヴァンはついつい、大きな声でツッコミを入れてしまう。
それに対して楓は答える。
「うちの国は王様が絶対のルールだからな。まあ、あれはメディアが悪い。それに、その王様は凄く優しいんだぞ?会ってみたら分かる」
「そんなヤベェことしたって聞いた後じゃあ、そうは思わねぇけどな。てか、そんな気軽に会えるのか?」
「会えるぞ?王様はそこら辺を徘徊してるからな。もしかしたら、ここにも来たことがあるかもな」
「王様なのに、そんな好き勝手に動き回って良いのか?」
「ああ、問題ない。王様は基本的に政治に口出ししないし、政務もしてないからな」
その話を聞いたヴァンは『それ、王様いる意味ある?』と思ったが、口には出さない。
それに、国王という身分の者が好き勝手動き回っているのは危険ではないかとも思った。
しかし、ヴァンは先ほどの楓の発言を思い出す。
メディアの関係者を全員その手で殺したと。
そのことから、国王は間違いなく非力ではないことが分かる。
いや、きっと絶大な力を持っているに違いない。
だって、楓が「もしかしたらここにも来たことがあるかもな」と言っていたからだ。
普通に考えて、自力で別世界に行くなど不可能だ。
それなのに、楓の口ぶりからするに、その国王は世界間移動も可能であるのだ。
そんなの強くないわけがない。
そして、楓もそうだが、国王の蛮行に文句をつけるどころか、メディアの方を批判していることから、国内の人気の高さも窺える。
ヴァンは楓からの話を聞いて、少しその国王に会ってみたいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます