第30話 お互いが気になる二人
楓が夕食を作りに行ったこともあり、ヴァンは一人になった。
一人になったヴァンは先ほど楓と話した内容を思い出す。
彼女は別の世界からこの世界に召喚されたと言っていた。
それは確かだとヴァンも思う。
ヴァンは楓と話している際に話が食い違っていたり、常識が違ったりなど不審な点は沢山あった。
そのため、楓が違う世界から来たとしてもおかしなことはない。
実際に、過去には異世界から召喚された勇者が世界を救ったと言う話も残っている。
なので、異世界からやってきた人はとても珍しい存在であったとしても有り得ない話ではない。
しかし、ヴァンは思う。
彼女は確かに他の世界から来たのかもしれないが、彼女は本当に人間なのだろうかと。
彼女の能力は明らかに人間のそれを超えている。
楓は普通ではない。
楓は本来ならヴァンと同程度の実力を持っていると言っていた。
その時点で楓は普通ではないと言っているようなものだ。
ヴァンは自分が普通ではないことはよく理解している。
だから、ヴァンは自分と同程度の実力を持っているであろう楓も普通ではないと考えたのだ。
まあ、楓が普通の人間でなかったところで、ヴァンは彼女からの依頼を破棄するつもりはないので、さほど問題ないのだが。
それに、彼女はどうしても放っておけない。
楓が今は亡き妹と重なってしまうのだ。
だから、ヴァンは彼女のことを見捨てることはできない。
それでも気になるものは気になってしまうのだがな。
一方、楓は夕食の準備をしながら考える。
ヴァンは明らかに人間ではないと。
この世界は今のところ会ってきた者たちはヴァンを除いて、全て人間であった。
ヴァンの力は明らかに人間の領域を超えている。
いや、人間どころの話ではない。
彼は本当にこの世界の者なのだろうか?
楓は明らかに強さの次元が違うヴァンにそう思わずにはいられない。
だが、それは楓にとっては好都合だ。
自分は命を狙われており、これからも刺客が送られてくるだろう。
その刺客たちよりもヴァンが強いことの方が圧倒的に多い。
そのため、命の危険に晒される可能性が大きく下がる。
それに、自分と同じ世界の異物であるので、一緒にいると安心する。
何処か兄や弟たちにも似ている気がするため、親近感もあるし。
後は冷酷に見えて実は優しいところとかも凄く良い。
だが、このままヴァンを放っておくのは危険だ。
家に帰れることになれば、何とか彼を説得して自分の世界に連れていく必要がある。
それが出来ないにしても、父や所長さんに報告しなければならない。
彼らなら大事になることはないと思うが、おじいちゃんに先に見つかった時はまずい。
そうなった時は何とかヴァンのことを守らなければ。
楓はそう決心を固めながら夕食を作ったのだった。
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