第27話 ヴァンの封印
政府の研究施設の防衛に成功したヴァンは役人からたんまりの報酬を振り込んで貰うと、すぐに研究施設から離れた。
単純に研究施設で調べたいことは全て調べ終わったので、家に帰ることにしたのだ。
それに、この研究施設にいる楓の偽物たちには怖がられているので、彼女の保護を行なっているマニシャからも帰るように言われているのだ。
流石に、あれはやりすぎたかとヴァンは反省した。
他にも研究施設に長くいると、マニシャに何かを気取られる可能性もある。
あの女は無能そうに見えてとても優秀な研究者だ。
少しでもヒントを与えると答えに辿り着いてしまうかもしれない。
それはそれで面白いことにはなりそうだが、今は現状に満足しているので、そう言うことは後回しだ。
それに、わざと情報を撒き散らすようなことをすると、依頼主である楓に怒られてしまう。
まあ、あまりにも破格な条件で依頼を受けてやっているので、多少のことは多めに見てもらえるだろう。
そうして、帰路についている時、ふと真聖教会のことを思い出す。
あの者たちはなぜ、政府の研究施設なんかに攻めてきたのだろう?
大体予想はつくが、あまり考えたくない。
彼らはきっと、楓のことを狙って政府の研究施設に殴り込みに来たのだろう。
それもわざわざ政府に喧嘩を売ってでも奪取しなければならないほどに。
あの宗教とはなるべく敵対しない方向で行きたかったものの、敵対せざるおえない状況なので、仕方ない。
まあ、これでやっと真聖教会のトップ戦力と戦えるチャンスを得られたので、結果的にはプラスであるのだが。
そのように、色々と考えているうちに事務所兼家に着いた。
家まで戻ってきたヴァンは鍵を開けて中へ入ると、彼の帰りに気がついた楓が出迎えてくれる。
「お帰りヴァン。派手に暴れていたようだが、何かアクシデントでもあったのか?」
「ああ、それは真聖教会の奴らが施設に攻めて来たんだが、所詮下っ端連中だったから余裕で撃退できたぜ?」
「だが、己に課している封印を一段階解いていたようだが?」
「それは知り合いと戦闘になった時に、面倒になったから少し力を解放しただけだ。てか、なんで楓は俺が自分に封印を課してることを知ってるんだ?」
ヴァンは楓が自分の力に制限をかけていることを知っていたことに驚きを隠せなかった。
ヴァンは楓の言う通り普段は魔力の大部分を封じている。
その理由としては単純に彼本来の魔力量が多すぎるあまり私生活で問題が起きるからだ。
そして、ヴァンはそのことを楓に一度も話したことはない。
それに、ヴァンは初見で自分に力の制限をするために封印を施していることに気が付かれたことはなかった。
そのため、驚きを隠せなかった。
そんなヴァンに楓は答える。
「私はこう見えて凄く目が良いんだ。だから、ヴァンが自分に封印を課していることはすぐに分かったんだ」
「なるほどな、楓には俺の封印が見えていたってわけか。なかなか良い目を持ってるんだな」
「そうだろう?小さい時から物を見抜く訓練をしていたからな。一発で分かったよ。それで、その封印はヴァンが自分で施したものではないだろう?一体誰がその封印を構築したんだ?」
「どうしてそう思うんだ?」
「ヴァンの体に施されている封印の術式が私の世界で使われていた術式と同じだからだ」
「おいおい、それマジなのか?」
ヴァンは楓から伝えられた言葉に驚きを隠せない。
それも仕方ないだろう。
ヴァンの封印の術式を刻んだ者もまた、彼女と同じく出身が不明の男だからだ。
もしかしたら、彼に頼ったら楓のことをもっと詳しく知れるかもしれない。
ヴァンが次の行き先について考えていると、
「それもその術式はとても特別なものだ。使用されている魔法文字は特殊で、その魔法文字を使える人は限られている。私も身近にしかその魔法文字を使える人は見たことがない。一体誰がその術式を刻んだのか教えてくれないか?」
楓がいつも以上に食い気味でヴァンに封印の術式を刻んだ者について質問する。
どうやら、ヴァンに施された封印は特殊なものらしい。
そのため、楓は術式を刻んだ者の正体が気になって仕方ないようだ。
そんな楓にヴァンは答える。
「俺も詳しいことはよく知らねぇんだ。言えることは俺をサイボーグに改造した張本人ってことだな」
その人物は自分のことをサイボーグに改造した者だと。
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