第26話 ヴァンの魔術
ロボットはレーザーが当たる直前にエネルギーフィールドを展開し、ヴァンのことを吹き飛ばす。
それと同時に、砲台から放たれたレーザーはエネルギーフィールドによって弾かれてしまう。
エネルギーフィールドに弾かれたヴァンは体勢を一瞬崩したが、直ぐに立て直す。
しかし、その一瞬の隙にロボットは地上にある砲台を狙い撃ちにし、砲台はロボットによって破壊されてしまう。
そのままロボットは背中にある超大型の銃器を手に取ると、ヴァンへ向けて放つ。
銃器からは超極太のレーザーが放たれ、ヴァンのことを飲み込もうとする。
このままでは被弾してしまう。
今の状態から回避行動に移っても遅いだろう。
変形の方は相手の大型武装を防ぐための防御壁を展開する時間はない。
ヴァンは手詰まりの状況にため息をつく。
そして、ヴァンは小さな声で呟く。
『ハウルーーーー』
その瞬間、ヴァンから膨大な魔力が溢れ出す。
その出力は凄まじく、ロボットの超高性能な計測機器を乱れさせるほどだ。
そして、あまりの魔力出力にロボットが放ったレーザーは魔力の壁を越えることができず、そのまま消滅してしまう。
ロボットもヴァンから放たれる魔力に吹き飛ばされ、体勢を大きく崩す。
その隙にヴァンは左手をロボットへ向ける。
そして、唱える。
「ハウンドーーーー」
次の瞬間、ヴァンの掌の前に白く輝く魔弾が生成され、ロボットへ向けて放たれる。
その速度は先ほどまでのレーザーよりも速く、目で捉えることは不可能だ。
しかし、相手は人間ではなくロボットだ。
ロボットはその高性能な探知機により、魔弾のことを捉え、ロケットブースターを全力で蒸し、回避する。
目標を外れた魔弾はそのまま空中を切り裂くように飛翔し続けた後、大爆発を起こす。
その威力は凄まじく、このカーサスの街全体に光と音が轟いた。
ちなみに、カーサスの街は1万5000㎢もあるので、その威力の凄まじさが伝わるだろう。
先ほどまで地上の隅で隠れていた異端審問官もあまりの威力に驚きを隠せない。
それと同時に、自分は彼に遊ばれていたのだと気付かされる。
自分ではどう足掻いても彼の足止めはできない。
ヴァンと戦って勝ち目のある者はきっと
そう思った異端審問官はなんとかこの場から離れようと動き出す。
そのことを空中で見ていたロボットは逃げようとする異端審問官を仕留めに行こうとする。
しかし、ロボットの前にヴァンが立ちはだかり、異端審問官の元へ行けない。
そして、ロボットはヴァンに問い詰める。
『貴様の狙っていた獲物が逃げようとしているが、無視しても良いのか?』
「ああ、構わないぜ?今のあいつは俺の相手には不十分だからな。逃げ帰って強い奴を呼んでくれるならwin-winだ」
『その強い者が聖人だったとしてもか?』
「それなら万々歳だ。俺も聖人様とは一回戦ってみたいと思っていたからな」
『ふん、お前らしいな』
ロボットはそう言うと、ヴァンに背中を見せる。
「おいおい、俺に背中を見せるとか、撃ち落として下さいと言ってんのか?」
その姿を見たヴァンは冗談混じりに言う。
それにロボットも答える。
『お前のことだから、どうせ撃ち落とさないのだろう?それならば、帰られせてもらう』
「おいおい、目標はもう良いのか?今にも転移魔法陣で逃げようとしているが?」
『追ったところで貴様が邪魔してくるだろう?マスターもお前に邪魔されたと言ったら任務失敗でも許してくれるだろう。いや、お前から無傷で帰れたのだ。逆に褒められるかもな』
ロボットはそう言うと、背面に装着している大型ロケットブースターを激しく蒸す。
「確かに、あいつなら俺相手によく粘ったと褒めてもらえるかもな?良かったじゃねぇか」
『だが、任務に失敗したことには変わりない。次こそは任務を達成する』
「おう、頑張れよ〜まあ、俺と獲物が被ったらまた失敗するだろうがな」
『ふん、お前はいつも余計な一言を言うな。まあ、いい』
ロボットはそう言い捨てると、目にも留まらぬ速さでどこかへ飛び立っていった。
それと同時期に、異端審問官も転移魔法陣で撤退した。
この場に唯一残されたヴァンは、
「これで任務完了か。まあ、アクシデントはあったが、良い暇つぶしにはなったな」
呑気に今までのことを振り返っていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます