第24話 新たな敵

 後方へ吹っ飛ばされた異端審問官はそのまま転がり続けたのだが、途中で槍を地面に突き立てることで何とか止まることが出来た。


 何とか止まれた異端審問官はそのまま立ちあがろうとしたのだが、左太腿の傷が開き、力が入らずに膝をついてしまう。


 しかし、このままではヴァンにやられてしまうため、槍を杖代わりにして何とか立ち上がる。


 立ち上がった異端審問官の服は転がったことでボロボロであり、所々に血が滲んでいる。


 それでも異端審問官は立ち上がると、神聖術で体の治療を開始する。


 魔力はまだ残っている。


 この調子ならもう少しなら戦うこと出来る。


 異端審問官はそう思うと、槍を構え直す。


 その様子を見ていたヴァンは彼の不屈の精神を素直に賞賛する。


 そうして、ヴァンは異端審問官のことを誉めながらも戦闘を続けようとした時、サイボーグへの改造手術の際につけた探知機に何かが引っ掛かる。


 その何かはまっすぐこちらに向かっているようであるようだ。


 そのことを知ったヴァンは異端審問官の方へ視線を向ける。


 もしも、異端審問官の仲間ならば、彼がここまで粘るのも理解できるし、探知に引っかかった者の正体にも予想がつく。


 だが、異端審問官にはそのような雰囲気などはなく、真っ直ぐヴァンの方を睨んでいる。


 どうやら、異端審問官はこちらに近づいている何かに気づいていないようだ。


 この近づいて来ているのは一体なんだとヴァンが探知機の精度を上げてみると、その何かの詳しい情報が視界に映し出される。


 その情報を見たヴァンの顔が歪む。


 こいつはヤベェのが来た。


 ヴァンはそう思うと同時に、先ほどまでとは比べ物にならない速度で異端審問官に近づくと、そのまま服を掴み、自分の後方へ投げ飛ばす。


 それと同時に空から何かが勢い良くヴァンの方へ向かってくる何かを視認する。


 ヴァンは全身を高速変形させ、突撃を防ぐための防御壁になる。


 そして、ヴァンが防御壁へと変化すると同時に何かがヴァンへ向けて突進してくる。


 その威力は凄まじく、先ほどヴァンに投げ飛ばされた異端審問官はその衝撃で再び後方へ吹き飛ばされた。


 ヴァンは最初は変形後の防御壁だけで耐えようとしていたが、予想よりも相手の勢いは強く、仕方なく魔術障壁を何枚も展開する。


 それでも相手の勢いを殺し切ることは難しく、ヴァンの防御壁は少しずつ押し潰されていく。


 このままでは破壊されるのも時間の問題なので、ヴァンも次の手を打つことにした。


 ヴァンは防御壁を展開したまま中から飛び出すと、上半身を砲台へ変形させ、突進してきている何かへ向けて放つ。


 流石の相手もヴァンのレーザーを直に受けるのは避けたいのだろう。


 ヴァンがレーザーを撃つと同時に回避行動に出た。


 ヴァンは回避行動に移った相手に向けて追撃として全身を超巨大なミサイルポットへと変形させると、雨のような数のミサイルを同時に放つ。


 大質量による飽和攻撃によって相手は身動きは取れず、そのまま大量のミサイルに襲われる。


 そうして、ミサイルポットの中から出てきたヴァンは相手の様子を窺っていると、いきなり爆発によって発生した煙が突風によって晴れる。


 そして、煙の中から出てきたのは全長4メートルほどの巨大な人型ロボットであったのだった。

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