第23話 VS 異端審問官
ヴァンは異端審問官から自分の二つ名を何処で聞いたか伝えられた後、少しの間は無言だった。
異端審問官は黙り込むヴァンのことを警戒しつつ、自分から刺激を与えるような真似はしない。
なぜなら、異端審問官はヴァンがどれだけ危険な人物であるかをよく知っているからだ。
本当ならば、ヴァンとの争いは全力で避けなければならない。
しかし、今回は事情も事情なので、こうして戦闘せざるおえなかった。
そうして、しばらく時間が経った時、ヴァンがついに口を開く。
「お前がヤタールの人間じゃなければ、俺の二つ名を知っていようがどうでも良い。それで、お前はヤタール出身ではないよな?」
「はい、私はヤタールの出身ではありません」
「それなら結構だ。さあ、邪魔者たちの撤退も済んだことだし、続きと洒落込もうじゃねぇか」
ヴァンはそう言うと、右腕を変形させ、剣を作り出す。
異端審問官もヴァンが臨戦態勢に入ったため、槍を構える。
そうして、お互い武器を構えたまま相手の出方を窺い続ける。
その悠久とも思える沈黙を先に破ったのはヴァンだった。
ヴァンは足のジェットで加速し、異端審問官に斬り掛かる。
異端審問官は斬り込んできたヴァンを槍でいなす。
そのまま異端審問官はヴァンへ拳を突き立てたのだが、ヴァンは勢い良くジェットを蒸すことで無理矢理方向転換し、拳を回避する。
拳を回避したヴァンはそのまま空中へ飛翔したのだが、異端審問官はそんなヴァンへ向けて槍を投擲する。
その槍の速度は人間が投擲したとは思えないほどの速度でヴァンへ襲いかかるのだが、空中機動力の高いヴァンにあっさり避けられてしまう。
しかし、異端審問官が投げた槍はあり得ない軌道で再びヴァンへ向けて飛んでくる。
ヴァンはそのことを不審に思いながらも飛んできた槍を勢い良く蹴り飛ばした。
今度こそ槍を無力化できたと思ったヴァンであったが、蹴り飛ばされた槍は再び軌道を変え、ヴァンへ向けて飛んでくる。
その様子を観察していたヴァンは、あの槍には何かしらの力による追尾機能がついているのだと推測した。
ヴァンは追尾する槍を厄介に思いながらもそこまで脅威ではないと判断する。
理由としては様々であるが、まず、速度が思ったよりも遅い。
これにより、見てからでも余裕で回避が間に合う。
第二に数が少ない。
槍が一本しかないことから、質量による飽和攻撃がされない。
第三に触れることが可能であることだ。
触れられるのであれば、蹴るなどして方向をずらすことが可能だ。
以上のことからヴァンは追尾する槍はあまり脅威にならないと判断した。
ヴァンは再び襲いかかって来た槍を蹴り飛ばすと同時に異端審問官との距離を一気に詰める。
距離を詰めたヴァンはレーザーブレードを二本射出し、両手に持つと、そのまま異端審問官に斬り掛かる。
異端審問官は左右同時から迫り来るレーザーブレードを左右に障壁を張ることで防ぐ。
と同時に、ヴァンは胸を変形させ、巨大な砲台を生み出すと、そのまま異端審問官に向けて極太のレーザーを放つ。
異端審問官はいきなり目の前から放たれたレーザーを勢い良く真上へ飛ぶことで回避することに成功する。
真上へ飛んだ異端審問官はタイミング良く戻ってきた槍を手に取ると、ヴァンへ向けて再び投擲する。
ヴァンは投擲された槍を今度はレーザーブレードで弾き飛ばす。
本来ならば、槍をそのまま叩き切る予定だったのだが、この槍は特別製らしく、傷一つつけることは出来なかった。
ヴァンは投擲された槍を弾き飛ばすと、背中を変形させ、巨大なミサイルポッドを生成する。
そして、ヴァンはミサイルポッドから大量の小型ミサイルを異端審問官へ向けて同時に放つ。
小型ミサイルは様々な軌道から異端審問官へ向けて突撃する。
異端審問官は半球状に障壁を展開し、撃ち込まれ続けるミサイルを防ぐ。
そうして、異端審問官が撃ち込まれ続けるミサイルを防いでいると、下から何か来るという直感がした。
それと同時に、足場からいきなり鋭い刃物が異端審問官へ向けて伸びて来る。
異端審問官は直感が知らせてくれていたこともあり、回避に早い段階で移行できていたのだが、それでも完全に回避することは難しい。
地面から生えてきた刃に左太腿を斬られてしまう。
それも深く斬られてしまい、移動する際に支障が出てしまうほどにだ。
異端審問官は機動力を削がれたことに舌打ちをしつつ、障壁を前方へ展開すると同時に後方へ下がる。
障壁を前へ展開したことでいくつかのミサイルは障壁を越え、異端審問官へ襲いかかって来たのだが、ミサイルは全て光の槍によって迎撃した。
そして、投擲した槍を呼び戻しつつ、神聖術で左太腿の治療を開始する。
治療しながらミサイルの爆発によって発生した煙の方へ意識を向けていると、いきなり右手をジェットがついた巨大なハンマーへ変えたヴァンが飛び出して来る。
勢いに乗ったヴァンはその勢いをつけるようにハンマーのジェットを蒸し、勢いに乗った巨大なハンマーを叩きつける。
異端審問官は慌てて障壁を展開するのだが、叩きつけられたハンマーの威力は凄まじく、その衝撃までは防ぐことは出来なかった。
衝撃を抑えられなかった異端審問官は後方へ転がるように吹っ飛ばされてしまった。
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