第21話 真聖教会

 真聖教会とは、この世そのものであるオリオンという存在を信奉している集団だ。


 オリオン自体の存在は確認されておらず、彼らの崇める存在が実在するかは不明である。


 しかし、オリオンから祝福を授かった代行者という超常的な力を操る者たちがいる。


 その力は魔術でも科学技術でもない第三の力であり、真聖教会は神通力と呼んでいる。


 そのため、真聖教会に力を授けている超越者がいることは確かだ。


 そして、この世界の約三分の一が真聖教会の信者であり、世界最大の宗教である。


 そんな世界トップの宗教が政府の施設へ攻撃を仕掛けてきた。


 これは一大事と言っても過言ではないだろう。


 ヴァンは面倒ごとに巻き込まれたなと思いながらこの場を離れようとした時、通信機器に連絡が入る。


 その相手は予想できていたので、ヴァンは通話に出る。


「それで、要件はなんだ?」


『話が早くて助かるよ』


 その相手は政府の役人だ。


 政府の役人は早速ヴァンに要件を伝える。


『今そちらの施設に攻撃を仕掛けている真聖教会の迎撃をしてくれ。我々の戦力ではだいぶキツいのでね』


「報酬は?」


『それは要相談かな。君が施設の被害をどれだけ抑えられるかにかかっているよ。まあ、君の納得できるだけの額は提示するから安心してくれ』


「分かった。その依頼受けてやるぜ?」


 ヴァンは条件も良かったので、政府の役人からの依頼を受けることにした。


『それは助かるよ。それでは、真聖教会の方は任せるからね』


 政府の役人もヴァンが引き受けてくれたことを感謝しつつ通話を切る。


 政府の役人との通話が切れたことで、ヴァンの方も動き出す。


「俺はこれから真聖教会の奴らを血祭りにあげてくるから、お前はホムンクルスたちを連れてさっさと逃げろ」


 ヴァンは事態への理解が追いついていないマニシャにホムンクルスを連れて逃げるように命令する。


 マニシャはヴァンから命令されたことで落ち着きと状況への理解が追いつき、彼に言われた通りホムンクルスたちを連れて研究室から出ていく。


 ヴァンもそれに続くように研究室を出ると、足をタイヤに変形させ、背中に生やしたジェットで廊下を高速で移動する。


 廊下を抜け入り口付近までやってくると、いかにも聖職者と言わんばかりの装飾を身に纏った集団が外にうじゃうじゃいた。


 ヴァンは更にジェットの出力を上げ、勢い良く外へ飛び出す。


 それと同時に体を丸め、大量の銃口がついたボールへと変形し、回転しながら無数にある銃口からレーザーを放つ。


 レーザーは予測不能の軌道で信徒たちを撃ち抜き、甚大な被害を出す。


 そして、ヴァンは地面に到達する前にボールの中から勢い良く飛び出し、地面に着地する。


 地面に着地したヴァンは真っ直ぐ信徒たちのことを見つめながら呟く。


「仕事の時間だ」


 呟くと同時にヴァンは足をジェットへと変形させ、勢い良く飛び出す。


 高速で飛ぶヴァンはそのまま近くにいた信徒の頭を掴む。


 そして、腕をパイルバンカーに変形させ、掴んでいる信徒の頭を吹き飛ばした。


 頭が吹き飛んだ死体をヴァンはジェットの推力の乗った蹴りで飛ばし、近づこうとしていた信徒の一部を吹き飛ばす。


 そのままヴァンは左手をレーザーガンへ変形させ、死体とぶつかったことで体勢を崩している者たちへ向けて薙ぎ払うように放つ。


 彼らは体勢を崩していたこともあり、レーザーを回避できず、体を両断され、絶命する。


 この時点でヴァンは最低でも20人以上は仕留めている。


 しかし、信徒たちはまだまだいるのに加え、彼らからは恐怖という感情が見えない。


 目の前で多くの仲間が殺されているのにだ。


 そのため、ヴァンがいくら殺しても彼らは怯むことなく、ヴァンへの攻撃を仕掛けてくる。


 ヴァンがレーザーで信徒たちを両断したと同時に、彼に近づていた信徒が手に持つメイスで殴りかかってくる。


 それをヴァンは空中へ飛翔することで難なく回避し、左手のレーザーで頭を消し飛ばす。


 しかし、空中に上がったことで障害物がなくなり、信徒たちはヴァンへ向けて神聖術である光の矢を放つ。


 ヴァンは足だけでなく、背中に大型のジェットを生成すると、先ほどまでとは比べ物にならない速度で空を駆けることで矢の雨を躱す。


 ヴァンはその勢いのまま地面スレスレまでやってくると、全身をブースターのついた手裏剣へと変形する。


 そして、ヴァンは信徒たちが群がる場所へ向けて飛んでいった。


 信徒たちは魔術結界などで防御しようとするが、ヴァンの勢いは激しく、魔術障壁ごと体を両断していく。


 そうして、ヴァンが信徒たちを一方的に蹂躙していると、いきなり空から槍が高速で落下してくる。


 ヴァンは手裏剣の中から射出されることで槍を何とか回避する。


 一体なんだと思いながら、視線をぐるっと一周させた時、ヴァンは明らかに他の信徒とは格が違う者を見つける。


 その者は他の信徒と比べて装飾が豪華であり、放っているオーラも別格である。


 そして、胸にはとあるエンブレムがある。


 それは異端審問官である証だった。


 ヴァンは異端審問官を見つけると、一直線で彼の元へ駆けつける。


 そして、胸から射出されたレーザーブレードを手に持つと、切り掛かる。


 しかし、レーザーブレードは突如として異端審問官の手に戻ってきた槍によって防がれてしまう。


 そうして、異端審問官とヴァンとの戦いが始まったのだった。

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