第20話 緊急事態発生
マニシャから楓のホムンクルスたちとの接触の許可をもらったので、実際に彼女たちに近づいてみる。
楓と姿は瓜二つなこともあり、ヴァンのホムンクルスたちとの身長差はとても大きい。
そのためか、ホムンクルスたちはヴァンに怯えているようだった。
ヴァンは怯えるホムンクルスたちに話しかけることはせず、まずは彼女たちの前に立って観察する。
楓は刺客に追われていたのに加え、ヴァンも最初は命を狙っていたため、初めて会った時はヴァンに怯えていた。
それでも彼女は勇気を振り絞ってヴァンに提案を持ちかけてきた。
それに対し、このホムンクルスたちには殺気などは向けておらず、ただ観察しているだけだ。
それなのに、ホムンクルスたちはただ怯えるだけでヴァンに話しかけようとする気すらない。
ならばと思い、ヴァンはリボルバーを抜き、彼女たちに向ける。
その姿を見たマニシャは慌てて彼を止めようとしたが、ヴァンに殺気のこもった目で睨まれたため、恐怖で固まってしまう。
ヴァンはリボルバーを向けたままホムンクルスたちに語りかける。
「俺はお前たちを殺しに来たんだ。大人しくしてたら痛い思いはせずに殺してやるよ」
ヴァンはリボルバーを構えたまま彼女たちにそう告げる。
ホムンクルスたちは自分の命の危機に恐怖はするものの、特に話しかけてくる気配はない。
それならばと思い、ヴァンは一番前に立っているホムンクルスにリボルバーを向ける。
そして、
「まずはお前からだ。何か言い残したいことはあるか?」
ヴァンは最後の言葉をホムンクルスに聞いてみる。
しかし、彼女は怯え切っており、特に反応はない。
そのことを確認したヴァンはため息をつくと、リボルバーを下ろした。
先ほどまで自分たちのことを殺すと言っていた男がいきなり銃を下ろしたことにホムンクルスたちは困惑する。
そんな彼女たちの気持ちなど無視してヴァンはホムンクルスたちに話しかける。
「まずはお前たちの名前を聞かせてくれ。左から順に答えろ」
ヴァンはホムンクルスたちに左から順番に名前を言うように命令する。
完全にヴァンに怯えてしまっているホムンクルスたちは、彼の指示通り自分の名前を答えていく。
ミカ、エレナ、ヒナ、カイ、ララ、リリ、サキ、ナナ、テト。
全員違う名前を答えたのだった。
そして、その名前の中に楓の名はなかった。
そのことから、ヴァンは彼女たちは楓の姿形だけをコピーした存在だと予想する。
しかし、断定するのにはまだ情報が足りない。
ヴァンは続けて彼女たちに語りかける。
「それじゃあ、自分の出身国はどこか言えるか?」
次にヴァンは出身国を答えるように命令する。
ホムンクルスたちはヴァンの命令に従い、彼からの質問に答える。
その答えは全員同じであり、誰も出身国が分からないと答えた。
楓は出身国の名前こそ言わないものの、自分の国の常識などは口にしていた。
そのことから、記憶を保持しているホムンクルスなら答えるはずだ。
嘘をついていたとしてもヴァンはある程度見抜くことが出来る。
特に素人であるのに加え、ヴァンに怯えている彼女たちなら嘘を見抜くのも容易い。
だが、彼女たちが嘘をついている様子はない。
そのことから、本当に何も知らないのだと判断する。
そして、先ほどから彼女たちと話している際、ヴァンに対して敬語を使っていた。
一方、オリジナルである楓はヴァンに最初からタメ口で話しかけていた。
それに、楓は命の危機が迫った際、生き残ろうと勇気を振り絞ってヴァンに話しかけるだけの度胸もあった。
そのことから、このホムンクルスたちは性格までもコピーしきれていないことが伺えた。
「それじゃあ、最後の質問だ。お前たちには家族がいるのか?」
ヴァンは最後の質問として、家族の情報について質問してみる。
今回の質問に対する結果も全て同じであり、誰も分からないと答えた。
それらの情報から、ヴァンはこのホムンクルスたちは見た目だけをコピーしたハリボテだと判断する。
そして、こんな見た目だけのハリボテコピーを誰がどんな意図で作ったのかヴァンは正直予想がつかなかった。
あまりにも杜撰で意図が読めない工作にヴァンは頭を悩ませる。
一体どこの誰がこんなふざけた真似をしたんだ?
ヴァンは頭の中で犯人の特定しようと思考を巡らせていると、いきなり研究施設が爆発音と共に大きく揺れた。
ヴァンはこの程度の揺れでは体勢を崩すことはないが、他の者たちは今の揺れでその場に倒れてしまう。
ヴァンは一体何事かと思っていると、研究施設内に警報音が響き渡る。
それと同時に、緊急アナウンスが流れ始める。
『この施設は真聖教会からの攻撃を受けています!!直ちに避難ブロックへの移動をお願いします!!』
それは敵襲を知らせるアナウンスだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます