第17話 過去に苦しむ
これは何年前のことだろう?
まだサイボーグになる前のことだ。
いつものように仕事を終え、家に帰ってくる。
家に帰ると誰かが出迎えてくれる。
それはとても大切な存在でーーーー
「おい!!ヴァン!!いつまで寝てるんだ!!もう朝だぞ!!」
ヴァンは誰かの声で夢の世界から目覚める。
目覚めたヴァンは眠い目を擦りながら起き上がると、目の前にはエプロンを着た少女が立っている。
その時のヴァンは久しぶりに夢を見たこともあり、寝ぼけていたのだろう。
ヴァンは意識せずに言葉が出てしまう。
「アーシャ、、、もう朝か、、、」
かつて、何よりも大切だった存在の名が。
「アーシャ?それは一体誰だ?」
寝ぼけたヴァンに知らない名前で呼ばれた楓は少し不機嫌な声でヴァンに聞き返す。
楓から聞き返されたことでヴァンも自分がやらかしてしまったことに気づく。
そして、ヴァンの頭の中には過去の出来事がフラッシュバックする。
ヴァンはフラッシュバックする記憶に気分が悪くなる。
だが、直ぐに思考を切り替え、気分を落ち着かせるために深呼吸をする。
その様子を見ていた楓はとても心配そうな表情で声をかけてくる。
「大丈夫か?ヴァン?すごく顔色が悪いぞ?」
楓は凄く心配した様子でヴァンのことを見つめている。
それに対し、ヴァンは何度か深呼吸をし、気分を落ち着かせた後、
「いや、大丈夫だ、、、すまねえ、心配させちまったな」
ヴァンは笑って大丈夫だと答える。
だが、
「本当に大丈夫なのか?今も凄く顔色が悪いぞ?今水を持ってくるから待っててくれ」
いまだにヴァンの表情は優れなかった。
そのことを心配した楓が水を撮りに部屋から出ていく。
楓が部屋から出て行ったのを確認したヴァンは大きなため息をつく。
まさか、あの時のことを夢で見るとは。
そんなこと久しくなかったため、ヴァンは少し取り乱してしまった。
ヴァンは気分を落ち着かせるように何度も深呼吸をする。
先ほどよりもその回数は多く、呼吸も深い。
ヴァンは何度も深呼吸を続けているうちに少しずつ気分が落ち着きだす。
そうして、荒れる心を落ち着きが戻ってきている最中、
「水を持ってきたぞ」
心配した様子の楓が水の入ったコップを手渡してくる。
ヴァンはそれを受け取ると、ゆっくりと水を飲む。
深呼吸に加え、水を飲んだことでヴァンはだいぶ落ち着くことが出来た。
顔色の方もだいぶ良くなってきているため、楓は安堵した顔をしている。
ヴァンは水を飲んだ後、大きなため息を吐く。
「落ち着けたか、ヴァン?」
そんなヴァンに楓は優しい声色で話しかける。
ヴァンはそれに答える。
「ああ、だいぶマシになった。すまねぇな、心配かけちまって。今度こそ、もう大丈夫だ」
自分ならもう大丈夫だと。
その様子を見た楓はヴァンは決して無理をして取り繕っているわけではないと判断する。
そして、楓はヴァンが落ち着きを取り戻したことに安堵してため息を吐く。
ヴァンは安堵する楓を見て罪悪感を感じる。
だが、その思いは表に出さないよう心の中にしまい込む。
ヴァンが水を飲んで落ち着きを取り戻すと、楓が話しかけてくる。
「それで、朝ごはんは食べるか?一応作ってあるが」
「ああ、もちろん食べるぜ?楓のメシは美味いからな」
「それならリビングまで来てくれ。朝ごはんの準備は既に終わっているからな」
楓はそう言うと、寝室から先に出て行った。
ヴァンもベッドから立ち上がると、楓について行くように寝室から外へ出て行く。
リビングにやってきたヴァンはテーブルにつくと、机の上には朝食が既に置かれていた。
メニューはフレンチトースト、ベーコン、目玉焼きにサラダである。
これまた美味しそうな食事にヴァンは涎が垂れるような感覚に陥る。
そうして、ヴァンはテーブルについて食事にしようとしたのだが、とあるものが欲しくなった。
そのため、ヴァンは直ぐにテーブルにはつかず、とある棚までやってくる。
そして、ヴァンは棚の中を物色した後、一つの瓶を取り出す。
そう酒だ。
酒瓶を取ったヴァンは楓の前の席に着いたのだが、彼女からの視線は痛い。
ヴァンは楓の視線に気づかないふりをして右手をコルク抜きに変形させ、酒瓶のコルクを外す。
その様子を見ていた楓は、
「おい、ヴァン?昨日もバカみたいに飲んでいたよな?なんで朝から飲んでいるんだ?」
ジト目でヴァンのことを見つめながら朝っぱらから酒を飲み始めたことを咎める。
実は昨晩の夕食の際もヴァンは酒を浴びるように飲んでおり、あまりにもたくさん飲んでいたため、楓は引いていた。
しかし、酒をどれだけ飲もうがヴァンが酒臭くなることはなく、これもサイボーグ化の影響だろう。
一応、ヴァンは脳味噌があるため、酒を飲み過ぎると酔ってしまうはずである。
だが、彼の胃袋は炉となっており、栄養は炉によって食べ物から分解された後、必要なものだけが脳に送られる仕組みになっている。
なので、ヴァンはいくら酒を飲んだところで脳にアルコールが届かない仕組みになっている。
と思われるかもしれないが、普通にアルコールも脳に運ばれる。
そのため、単純にヴァンが酒に対する耐性が高過ぎるだけなのだ。
楓にジト目で朝っぱらから酒を飲むことを咎められたが、ヴァンは止める気はない。
何故なら、お酒は美味しいからだ。
そうして、ヴァンは美味しい朝ごはんをつまみに酒を朝から飲みまくったのだった。
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