第10話 VS ミーヤ
まずは一人目であるエンジを仕留めたヴァンは空中からミーヤの様子を窺う。
彼女は一度心が折れかけたが、すぐに立ち直り、ヴァンへ激しい憎悪の感情を向けている。
ヴァンは気づいていた。
エンジよりもミーヤの方が格上だと。
そして、ミーヤがエンジと合わせるために本気を出せていなかったことも。
これからが本番だ。
ヴァンは気合を入れると同時にこれからの戦いに胸を躍らせていた。
ヴァンが空中でミーヤの様子を窺っていると、彼女が先に動いた。
魔法陣を展開せずに空中に無数の氷柱を生み出す。
それも先ほどまでとは比べ物にならないほど温度が低く、氷柱の周りの空気は凍りついている。
そして、ミーヤは先ほどまでとは比べ物にならない速度でヴァンはへ向けて氷柱を発射する。
ヴァンは空中から一気に地上スレスレの位置まで降下することで氷柱たちを回避すると、そのままミーヤとの距離を詰める。
ミーヤとの距離を詰めると、胸あたりから射出された筒状の取手のようなものを右手で掴む。
その瞬間、筒からは1.5メートルほどの赤色のレーザーが形成され、レーザーブレードとなる。
レーザーブレードを展開したヴァンはそのままミーヤへ向けて斬りかかる。
その速度はエンジでは既に対応できない領域まで迫っていた。
しかし、ミーヤは氷の剣を作り出すと、ヴァンのレーザーブレードを防いだ。
ヴァンはこのまま押し切ろうと考えたが、ふとあることに気づく。
それは自分の体の一部が凍りついていたことだ。
ミーヤの冷気は恐ろしく、近くにいるだけで体が凍りついてしまう。
もしも、生身の人間が彼女に近づけば、肺が一瞬にして凍ってしまい、そのまま死んでいただろう。
「ホーリーシット!!生身だったら今頃死んじまってなあ!!サイボーグの体に感謝だぜ!!」
そのため、ヴァンはサイボーグの体に感謝したのだった。
だが、このまま彼女の近くにいれば、体が凍って脆くなってしまう。
それでは変形が上手く出来なくなる可能性が高い。
なので、ヴァンは右腕を変形させ、右腕側面に無数の穴が出現する。
そして、無数に現れた穴からレーザーがまるで、ショットガンのように放たれる。
ミーヤはすぐに魔術障壁を展開することでショットガンレーザーを防ぐことに成功する。
しかし、その隙にヴァンには逃げられてしまった。
ミーヤとの距離を取ったヴァンは両腕を合わせ、高速変形させていき、二つの腕を合わせた砲台へと変わる。
両腕を砲台に変形させたヴァンはそのままミーヤへ向けて極太レーザーを放つ。
ミーヤは地面に魔法陣を展開すると、氷の壁を出現させ、ヴァンのレーザーを防ぐ。
氷とレーザーがぶつかり合い、辺り一面が水蒸気爆発を起こし、二人は煙に包まれる。
視界が悪くなったことで、ミーヤはヴァンの姿を見失ってしまう。
だが、ヴァンはミーヤのことを見失っていなかった。
彼女が自分の姿を見失っているうちに煙を突き抜け、一瞬で空高くまで飛び上がる。
そして、ヴァンは全身を変形させていく。
ミーヤはヴァンからいつ攻撃をされても問題ないように周りを警戒しているが、全く相手から攻撃される気配がない。
もしかしたら、相手も自分と同じように見失っているのかもしれない。
そう思い始めた時、やっと煙が少しずつ消えていく。
視界が戻ったことにより、ミーヤはヴァンの姿を探し始める。
地上付近には彼の姿は見当たらない。
そうなると、空へいる可能性が高い。
そう考えながらミーヤが視線を上へ向けた時、目の前に広がっていた光景に絶句する。
何故なら、空にはまるで、衛星砲のような兵器が浮かんでいたからだ。
それも既にエネルギーはチャージし切っており、発射する直前だった。
ミーヤはすぐにあの衛星砲はヴァンが変形したものだと理解すると、自分の前に無数の魔術障壁と氷の壁を展開する。
それと同時に、衛星砲から今までとは比べ物にならない威力の超極太レーザーがミーヤへ向けて放たれる。
放たれたレーザーはミーヤの全魔力を注いだと言っても過言ではない防御壁たちを一瞬にして溶解させ、破壊する。
このレーザーの前では彼女の防御など無意味に等しい。
レーザーを防ぐことは不可能だと分かったミーヤは急いでその場から離れようとするが、既に遅かった。
最後の魔術障壁を突き破ったレーザーがミーヤのことを飲み込み、一瞬にして蒸発させる。
もしも、防御ではなく、回避を選択していたとしてもミーヤの結末は変わらない。
時間が稼げない分レーザーの到達速度は速くなり、ミーヤは回避する前に蒸発させられていた。
彼女が生き残る方法はたった一つだけ。
それはヴァンと戦わないこと。
そう、彼女たちは最初から選択を間違えていたのだ。
彼女たち程度ではヴァンに勝てる可能性はゼロだ。
そうして、二人の魔術師を倒したヴァンは衛星砲の中から出てくると、そのまま地面に着地する。
そして、身に纏っていたアーマーを解除すると、実は収納魔術であるアイテムボックスにしまっていたカウボーイハットを取り出すと、再び被り直した。
「さて、邪魔者を片付けたことだし、戻るか」
そうして、ヴァンはマザーの店へと戻って行ったのだった。
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