第8話 VS エンジ
ヴァンは店の外に出ると同時にリボルバーを自分たちの追っ手へ向けて連射する。
ここはカーサスの大通りであり、周りには大量の人が行き来している。
そんな中、ヴァンは周りへの配慮など気にせずに大口径のリボルバーをぶっ放す。
この街では当たり前の行動であり、日常の光景なのだ。
このカーサスには警察などの法的自治組織が機能していない。
だから、街のどこで暴れても何の問題もない。
そして、民間人が何人死のうが関係なく、死んだ者は戦いに巻き込まれた可哀想な人で終わる。
逆に、巻き込まれた方が悪いという考えが一般的だ。
これがカーサスの街の常識であり、ルールでもある。
ヴァンがリボルバーを敵へ向けてファニングショットを決める。
敵と自分の間を通行していた可哀想な一般市民は彼のファニングショットによってズタズタに引き裂かれた。
だが、銃弾の威力は全く落ちていない。
それほどまで、ヴァンのリボルバーは高威力であるのだ。
しかし、ヴァンが放った銃弾は全て追っ手の前に展開された光の壁によって防がれてしまう。
ヴァンは舌打ちをする。
予想以上に強い敵が来たようだ。
だが、それは願ったり叶ったりだ。
ヴァンはとにかく強い敵と戦うことが大好きなバトルジャンキーである。
だから、これは予想外の誤算であり、嬉しい誤算でもある。
楓はマザーに任せているから安全だ。
だから、思う存分戦うことができる。
ヴァンはそう思うと、自然と顔に笑みが生まれる。
相手はそうは思っていないようであるが。
ヴァンは相手にファニングショットを防がれると、相手に語りかける。
「おいおい、あれを防いじまうなんて中々やるじゃねぇか。一体何処の誰なんだあ?」
ヴァンは大きな身振り手振りでわざとらしく相手に誰なのか語りかける。
ヴァンは既に相手が誰なのか分かっている。
相手はグリモワールの魔術師だ。
それも戦闘要員であり、それなりにやる方でもあると。
そして、ヴァンにはこの者に見覚えがあった。
しかし、相手に名前を聞くという高度な煽りをしたくなったので、我慢せずに煽り散らす。
相手はヴァンの煽りにキレそうになったが、歯軋りをするだけでそれ以上の行動は起こさない。
ヴァンもこの程度の煽りに乗るような者は雑魚だと思っていたので、敵の評価を少し上げる。
そして、ヴァンが再び相手を煽ろうとする前に魔術師が動き出す。
目の前に複数の魔法陣を展開すると、魔法陣から連続して炎の球を飛ばしてくる。
その炎の球の威力は凄まじく、近くで逃げ惑っていた一般人を飲み込むと塵すら残らずに燃やし尽くすほどにだ。
ヴァンは両足をジェットに変形することで一気に飛び上がり、炎の球を回避する。
それと同時に、ヴァンの頭を包み込むようにバイザーが展開され、目元にあるラインが赤色に発光する。
体の方も既に変形しており、金属の鎧のようなものを身に纏っているような姿となっている。
全身を変形させたヴァンはそのまま左腕を巨大な砲台に変形させ、魔術師へレーザーを放つ。
魔術師は飛翔魔術を起動し、レーザーを回避する。
しかし、レーザーを撃ち終えていたヴァンは既に魔術師との距離を目と鼻の先まで詰めていた。
ヴァンはレーザー砲台に変形させた左腕を再び変形させ、剣へと変える。
左腕を剣に変えたヴァンはそのまま斬りかかる。
魔術師も魔術によって炎の剣を生み出し、応戦を試みる。
そうして、二つの剣は激しくぶつかり合い、鬩ぎ合う。
このままお互い押しきれずに終わると思われた時、ヴァンの剣の後方が変形していき、複数のブースターが展開され、勢い良く炎を吹き出した。
それと同時に、ヴァンの剣の勢いは格段に上がり、一瞬にして攻防はヴァンが優勢になる。
ヴァンはそのまま押し切ろうとしたが、その前に魔術師が魔法陣を展開し、大爆発を起こす。
そして、魔術師はその爆風に乗ってヴァンとの距離を取る。
しかし、ジェットによる推力を持っているヴァンとの距離を取ることは不可能だ。
魔術師はすぐに追いつかれてしまう。
追いつかれた魔術師は魔法陣を展開せずに直接複数の火球を生み出すと、それをヴァンに向けて放つ。
しかし、火球は全てヴァンに躱されてしまう。
そのまま魔術師がヴァンに追い付かれ、トドメを刺されそうになった時、いきなり横から氷柱がヴァンに向けて放たれる。
ヴァンはその氷柱を剣で弾き飛ばすと、一旦魔術師との距離を取る。
距離を取ったヴァンは視線を氷柱が飛んできた方へ向ける。
視線の先には魔術師と同じローブに身を包んだ女性が立っていた。
これで相手の正体が確定した。
相手はグリモワールの戦闘部隊である火炎のエンジと氷結のミーヤであると。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます