第7話 新たな追っ手
ヴァンは政府の役人との電話が終わると、疲れたような表情で大きなため息をつく。
そして、顔を上げてみると、彼の前には心配そうな表情を浮かべる少女が立っていた。
どうやら、ヴァンと役人との会話を聞いていたようだ。
ヴァンは心配そうな表情を浮かべる少女を安心させるためにも先ほどまでのやりとりを全て話す。
ヴァンから事の顛末を伝えられた少女は安心したような表情を浮かべる。
「それで、これからはどうすればいいんだ?私はここで働くことになるのだろう?私は何をすれば良い?」
少女はこれからの予定をヴァンに聞く。
少女からこれからの予定を聞かれたヴァンは答える。
「まずはお前の日用品を買いに行くか。そんなボロボロの服のまま働かせるわけにもいかねぇしな」
ヴァンは少女のボロボロの服に視線を向けた後、そう答える。
確かに、この服のまま働かせるとなると、ヴァンの評価も落ちてしまうだろう。
それに、ヴァンは敵には非情であるが、それ以外の人に対しては案外優しかったりもする。
まあ、残酷な人であることには変わりないが、それでも優しさを持ち合わせていないわけではないのだ。
日用品を買いに行くことになった少女は申し訳ない気持ちになったが、この分は自分が働くことで返そうと思い、気持ちを切り替える。
そうして、少女とヴァンは日用品を買いに行くために再び外に出た。
そして、外を歩いている時、ヴァンはとあることを思い出し、少女に話しかける。
「そう思えば、お前の名前を聞いてなかったな。なんて名前なんだ?」
ヴァンはこれまでの間にいくらでも聞く機会があったのに名前を聞き忘れたことを思い出し、少女に名前を聞いたのだった。
少女の方も彼の名前を聞き忘れていたことを思い出し、ハッとしたような表情を浮かべていた。
お互い名前を聞き忘れていたことを思い出した後、少女が先に自己紹介をする。
「私の名前は
自分の名前は楓であるとヴァンに伝えた。
しかし、今は外にいることから何処に敵がいるか分からないため、今は他の情報は話せないことも伝えた。
その話を聞いたヴァンは確かに、日用品を買いに行く前に楓から事情とかを聞いておけば良かったなと少し後悔する。
だが、先に外に出てしまったのだから仕方ない。
事務所に帰ってから色々と話を聞き出せば良いかとヴァンは思考を切り替える。
楓の自己紹介も終わり、次はヴァンの番がやってきた。
「俺はヴァン・セントだ。この街で傭兵をやっている。気軽にヴァンって呼んでくれ」
ヴァンは簡単な自己紹介を楓にする。
自分がこの街で傭兵をやっているのだと。
楓はヴァンが傭兵であることを知らないことは見抜いている。
ただただ死にたくないがために適当なことを言っていたことも。
だから、自分は傭兵であることを改めて楓に伝えたのだ。
ヴァンから傭兵であることを伝えられた楓は特に驚いたような様子はない。
まあ、ヴァンが傭兵だと知らなくてもそれに近い職業であることは予想できる。
明らかに、荒くれ者のカタギではないことはグリモワールの構成員を殺したことや言葉の節々から伝わってきていた。
だから、楓は予想通りというドヤ顔をヴァンに披露していた。
そんな楓を見たヴァンは『こいつなんでドヤ顔してんだ?』と不思議に思ったが、気にしないことにした。
そうして、二人で世間話でもしながら歩いていると、自分たちをつけている者がいることを発見する。
ヴァンは相手にバレないように周囲へ視線を向けてみると、明らかに足取りが怪しい者を見つける。
その者は全身を包むほどのローブで身を包んでおり、顔は深く被ったフードのせいで見えない。
そして、その者は明らかに自分たちと一定の距離を取りながら歩いていた。
これは明らかにおかしい。
ヴァンは敵の襲撃だと判断する。
しかし、今は楓が近くにいる。
この場でいきなり暴れるのは少々まずい。
そのため、まずは楓を避難させる必要がある。
そうして、敵に気を向けながら歩いていると、目的地であった服屋に到着する。
目的地であった服屋に到着したヴァンたちはとりあえず中へ入る。
そして、ヴァンは楓に伝える。
「俺は今から跡をつけて来ていた敵をぶち殺してくる。その間に必要なものを選んでおいてくれ」
今から敵と戦ってくるから、その間に必要なものを選んでおけと伝える。
いきなりのことに楓は思考が追いついておらず、あわあわしている。
ヴァンは彼女が状況を理解するまで待つ時間などない。
仕方ないので、助っ人に楓の面倒を見てもらうことにした。
「マザー!!こいつの服を選んでやってくれ!!俺は用事で一旦ここを離れる!!」
ヴァンがマザーと呼ぶと、店の奥から全身がスライムのようにぷよぷよの生物が出てくる。
そのマザーと呼ばれた生物には足はなく、腕の代わりに触手が何本も生えている。
目の位置は左右非対称であり、口らしきものも見えていない。
このような姿でも服はしっかりと着ており、しかもとてもオシャレなのである。
見た目とは似つかない着こなしに楓は素直に尊敬した。
そして、マザーはヴァンに呼ばれて姿を見せると、
「はいよ、この子にピッタリ似合う服を見繕っておくよ。だから、お前さんはこっちのことを気にせず行ってきな!!」
楓の面倒は自分が見るから気にせずに戦ってこいと豪快に笑い飛ばす。
その姿を見たヴァンは安心したように店の外へ出て行ったのだった。
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