第五話
軍を率いてG国へと向かっている最中。
ゲホーデン「…そういえば、G国の近くにはピュアゴールド族とピュアシルバー…現ゴールドメッキ族が住む洞窟があったな。…G国を攻め落とした後で立ち寄るか。もし勇者一行が来たとしても、G国は平和ボケした国だ。先日の大規模な戦いでもG国の兵士は数も少なく、圧倒的に弱かった。恐らく現在G国の軍は壊滅状態…楽に攻め落とせるだろう。」
そうこう考えている内にG国が見えてくる。
ゲホーデン「よし。全軍、一斉にかかれ!…ほう?あそこにいるのは…クックック…人間に化け、我らを欺き…撹乱しようと言うのか…?面白い、ならばそのまま私の元まで来るが良い…!」
ゲホーデン(何故だ…何故、魔族が私を裏切る…!ピュアゴールド族の生き残りめぇ…!貴様に恐怖を植え付けてやる!)
ゲホーデン「はっきり…クックック…!見えたぞ、ピュアゴールド族の生き残り!何故我らに楯突く?私はお前たちの境遇を見かねてわざわざ策を講じてやったというのに?……………クックック、愚か!哀れ!間抜け!貴様らなんぞゴミのように見捨てておけば良かったわ!!!!!死ねぇ!!!」
無数の光線を放つ。
ピュアゴールド族「ぐぁぁぁぁぁ!!」
ゲホーデン「…私に逆らう者、生きるべからずッ!極悪非道の魔王に楯突くとこうなると覚えておけ…くそ…何故だ…何故なんだ…っ!」
魔族に逆らわれた事で精神的に傷を負ったせいか、冷や汗が止まらない。そこへ勇者、魔法使い、戦士の3人が魔物たちを蹴散らしながらやって来た。
ゲホーデン「…来たか」
勇者(魔王…!)
ゲホーデン「…なに、貴様らの考えなど言わずとも読める…そうだな、貴様らはあの魔物の事が心配で心配で堪らんのだろう?クックック…あいつは私が跡形も無く消し飛ばした…クックック…!」
勇者(…許さんぞ!魔王!!)
戦士(やはりこいつは生かしておいてはならない…)
魔法使い(もう、私とこいつの関係がなんなのかを考えている場合じゃない。こいつは消さないと!)
ゲホーデン「おお怖い怖い…殺気がだだ漏れだな?もっとも、貴様らに私を殺すなど不可能だがなぁ…クックック…!」
勇者(クソ野郎がァ!)
勇者が衰弱しながらも力を込めて剣を振るったが、首に当てた瞬間に剣が折れてしまった。
勇者(ぐぅっ!?)
ゲホーデン「…死ね。」
殺意を込めて脳天に光線をお見舞いする。
戦士(勇者!…くぅぅっ!!魔法使い!後は頼む!)
ゲホーデン(自爆魔法は精神力によって威力が増減すると聞いた事がある…今のこいつに出せる威力はいかほどか…?)
ボガァァァァン!
ゲホーデン「ぐぬっ…なるほど…以前よりも威力が大幅に上昇しているな、面白い。さて、残りは貴様だけか?」
魔法使い(…魔王、あんたは私たちの思考が読めるのよね?だったら聞きたい事がある。)
ゲホーデン「…ほう?」
魔法使い(あんたは…魔族なの?)
ゲホーデン「…私は人でありながら魔物を統べる者だ。ただ、おまえよりも魔族の血が濃いだけだ。」
魔法使い(つまり、私にも魔族の血が少しは流れていると?)
ゲホーデン「そうだ。人間である母と魔王であった父の間に生まれし双子であるからな。」
魔法使い(母からは、私とあんたが生まれてすぐに父親に引き離されたと聞いてる…あんたは元魔王の父親に育てられたってわけね。)
ゲホーデン(やはりそうだったのか…まだ幼い頃、父から妹の存在を仄めかされた記憶がある…正直な所、あまり信じてはいなかったが…確かにこの境遇には何か違和感があった。それが何かはっきりとは分からなかったが、今なら分かる気がする…だが、それを知った所で何も変わりはしない。)
ゲホーデン「…私は何を喋っているんだ?こいつは殺すべき相手だというのにな?クックック…」
魔法使い(時間稼ぎ出来るのはここまでみたいね…でも、良い事を知ったわ…)
ゲホーデン(…何かを掴んだようだな。挑発は苦手だが、ここはひとつ挑発してみよう。…奴の性格に合わせてな。)
ゲホーデン「今の私は気分が良い、もし逃げるなら今の内だぞ?まあ、貴様が尻尾を巻いて逃げるとは思えんがな…?クックック…」
魔法使い(そうね、あんたにキツイの一発お見舞いしてやらないと気が済まないもの…)
ゲホーデン「…貴様の事は…嫌いだ。貴様のような軟弱生物と血が繋がっているなど到底信じられん。さぁ…」
ゲホーデン(地獄はこれからだ…!)
ゲホーデン「始めよう…まず、貴様に更なる苦痛を与えてやろう。…はァッ!」
ゲホーデンが無数の光線を放つ。
魔法使い(…!はっ!)
魔法使いも熱線魔法で応戦する。
ゲホーデン「クックック…魔力の無駄使いだぞ…?この程度の光線にそこまでの力を出すというならば貴様に勝ち目なんぞあるわけがない!」
魔法使い(だったら…生命力を全て魔力に変えて!特大の魔法をお見舞いしてやるわよ!)
魔法使いが全ての生命力を魔力に変換し魔力を全て消費して特大魔法を放つ。
ゲホーデン(…奴はまだ、私を本気で殺す事に僅かながら迷いを持っている。…そうだな。プライドを折るつもりで力を誇示してやろうか。…もっとも、奴のプライドは折れんだろうがな…おそらく奴は、悔しさをバネにして成長するタイプだ。だがそれで良い!いつか強くなり私を止めてみせろ!)
ゲホーデン「効かんなあ!迷いのある攻撃なんぞ、私には通用せんわ!半端な覚悟で私と貴様を産んだ母と!!私に醜悪な名を与えた父への恨みを…!!今ここでェ!貴様へとぶつける!はァァ!!!」
特大の魔力を込めた一撃を放ち魔法使いは倒れる。それでも、ゲホーデンは一切容赦しない。魔法使いのプライドまで焼き尽くす程の火球を放ち、トドメをさす。…魔王軍にも飛び火があったが。
ゲホーデン「しまった、兵たちが…私の過失だな…兵士たちには後で詫びの品を配るとしよう…」
僧侶(あれは…魔王…!)
ゲホーデン「…ん?あれは…僧侶か?…なるほど、さっき3人しかいなかった理由はこれか…しかし、奴も衰弱しているはずだ…あの数の魔物を相手するには少々厳しいと思うが…?」
僧侶(勇者たちがいつ戻ってくるか分からないから今は何も考えずにこのG国を守る事だけ考える…!)
ゲホーデン「…ふっ…!笑わせるな!貴様ごときにこのG国が守れるとでも…!?はァァァ…!」
僧侶「ゲホッ…バリアっ…!」
ビキィン!
僧侶(く…気を抜いたら割られそう…!)
ゲホーデン「…らあっ!」
ガシャァァン!
ゲホーデン「死ねぃ!るぁあ!」
僧侶「うっ…!ゲホッ…エルヒール…!」
ゲホーデン「さっさと…死ねぇぇえ!!」
僧侶「バリアッ!」
キィン!
ゲホーデン(先程から何か手応えに違和感がある…バリアの強度も先程より上がり、咳の頻度も減ってきている…馬鹿は風邪をひかないと言うが、もしやこいつがそうなのか…?クックック…)
僧侶(ここを耐えれば勇者たちが来るはず…)
ゲホーデン「無駄なあがきだ!おららら!!」
ピキッ…ガシャァン!
ゲホーデン「ふんっ!れぇい!はぁ!」
僧侶(痛い…!でも…ここは…私が食い止めッ…)
ゲホーデン「ふむ…回復魔法や防護魔法を使うだけあって中々耐えるな…」
ゲホーデン(どうやらただの馬鹿ではないらしい。無駄なあがきと分かっていながら少しでも時間稼ぎをしたかったわけか…本当に無駄なあがきだな!)
ゲホーデン「…だが、そろそろ終わりにしよう。」
瀕死の僧侶にとどめをさそうとした瞬間、背後から雷を纏った剣が振り下ろされた。
ゲホーデン(ッ…!勇者か…!)
ゲホーデン「復活が早いな…だが、何度来ようとも同じだぁ!死ねぃ!」
勇者「うっ…」
戦士「ぐふ…」
僧侶(勇者に…戦士も!……エルヒール!)
ゲホーデン「…させるかァッ!」
僧侶「ぐ…」
ゲホーデン「ふぅ…終わったな。さて、このG国を消し飛ばすとしようか?なぁ?」
G国の兵士「あっ…あ…!」
ゲホーデン「そんなへっぴり腰でよく兵士になれたものだ!もう良い!貴様ごときをわざわざ殺す気も起きん!ちっ…王はどこだ!言え!」
G国の兵士「あっ…あ…ほ…堀の…隠し通路…!」
ゲホーデン「王への忠誠心も無いのか。呆れるな…とっとと失せろ。」
G国の兵士「あ…はひ…!」
ゲホーデン「…堀に隠し通路があるとはな。通りで堀に水が張られていないわけだ…ん?となると何故堀のような形にしたんだ…?…まあ良い。G国の王が無能だったと考えよう。…こんな丁寧に階段まで付けやがって。」
堀の隠し通路を進んでいく。
ゲホーデン「…見つけたぞ。」
G国の王「…な…何故ここが…!」
ゲホーデン「クックック…兵士が教えてくれたぞ?王は堀の隠し通路にいる…と。」
G国の王「た…助けてくれ…!」
ゲホーデン「薄っぺらいな。もう一度。」
G国の王「助けてくれ!」
ゲホーデン「態度!もう一度!」
G国の王「たっ、助けてください!」
ゲホーデン「誠意が足りない!!もう一度!」
G国の王「た…助けてください…お願いします…」
ゲホーデン「それで良い。今までの王は強情でな、頑なに頭を下げなかった。だが貴様は国民のため、自らのプライドを捨ててまで頭を下げた。その態度に免じ、G国の住民たちの命は保証しよう。」
ドギュン!
G国の王「あ…が…」
ゲホーデン「だがそれでは国を滅ぼすための労力と釣り合わないのでな…命は貰っていく。……魔鳥!魔鳥はいるか!」
近衛魔鳥「ギ…魔王様、いかがなされましたカ?」
ゲホーデン「流石。隠し通路にも一瞬で駆けつけるとはな…………勇者一行は必ずG国に戻ってくる。奴らを分断させろ。」
近衛魔鳥「承知しまシタ…!」
ゲホーデン「…最初からこうすれば良かったのだ。これより作戦を開始する!」
次回に続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます