第三話
ゲホーデン「よし。ひとまず今日の仕事の区切りが付いた。…側近!」
魔王の側近「お呼びでございますか?」
ゲホーデン「ああ。伝えておきたい事があってな。近頃、お前には色々な事を頼んでいたな。そして、いつも完璧な仕事で私を助けてくれる。だが…疲れが溜まらないわけではないだろう?」
魔王の側近「…いえいえ。魔王様のためとあらば、何時でもどんな仕事でもやれますよ。」
ゲホーデン「…私が父を討ってから、まだ一月しか経っていない。表は完璧でも裏ではまだ心の整理がついていないんじゃないのか?」
魔王の側近「…確かに、最初は動揺いたしました。ですが…私はいかなる事があろうとも、魔王の側近として魔王様に仕える事だけを考えております。」
ゲホーデン「…それで、疲れは溜まっているのか?正直に答えよ。」
魔王の側近「…実は、最近肩こりと目眩が酷く…」
ゲホーデン「それが聞けて良かった。側近よ、来週からは少し暇になる。その時に休暇を出そう。」
魔王の側近「い…いえ、そんなお気遣いなど私には勿体無いです…!」
ゲホーデン「だからと言って働き続けるのは身体にとって良くない。日頃から適度に休まねばここぞと言う時に力を発揮出来ないぞ?」
魔王の側近「………それでは、来週休暇を頂いてもよろしいでしょうか…?」
ゲホーデン「勿論だ。…それでは、料理長に夕食の支度に取り掛かるよう伝えよ。」
魔王の側近「承知いたしました!」
それから1週間後…
ゲホーデン「…今日から側近はしばらく休みだな。私もゆっくりと休ん…」
伝令兵「伝令!伝令〜!」
ゲホーデン「!?…何事だ!」
伝令兵「人間どもの連合軍がこちらへやってきます!その数…推定100万…!」
ゲホーデン「なんだと…!?近頃人間どもの動きが少なかったのはそのせいかっ…!魔王軍の一軍から八軍まで出し、九軍と十軍は城を守るよう伝えよ!人間どもを決して城内に入れるな!」
伝令兵「し…承知しましたぁ!」
ゲホーデン(人間どもめ…何が目的なんだ…?)
城の監視塔に移動する。
ゲホーデン「取り囲まれているな…」
近衛魔鳥「ギギギッ…魔王様…辺りを見渡した所、全体的に屈強な兵士が多いデス…恐らく、この日のために限界まで鍛え抜いたのデショウ…」
ゲホーデン「このままではまずい…私も出よう。」
近衛魔鳥「ギギッ…魔王様、城から離れてしまうとどこからか人間に侵入される可能性が…」
ゲホーデン「…飛行魔法などで侵入されるリスクは確かにある。だが、ここで私が出なければ九軍と十軍が城を離れざるをえない状況になる…」
近衛魔鳥「では、私は空を見張ってオキマス…!」
ゲホーデン「頼んだぞ!」
城の外へ出て、城下街へ下りる。
ゲホーデン「本当は辺りを爆破すれば早いのだが、城下街まで爆破するわけにはいかん…」
人間の兵士「…隙あり!」
ゲホーデン「ふん。」
ズゴンッ!
人間の兵士「ぐぶぇっ…!」
ゲホーデン「…敵も味方も数が多くて何が起こっているか把握出来ん…」
ウグワァァァ!
ゲホーデン「この声はまさか…!あの家から!」
悲鳴の聞こえた民家へと敵をなぎ倒していきながら進んでいく。
ゲホーデン「…!」
人間の兵士「はぁ…手こずらせやがって…!」
ゲホーデン「貴様ァ!」
ブズァッ!
人間の兵士「ご…ぶっ…!」
ゲホーデン「…おい!おい!」
魔王の側近「魔王…様…?」
ゲホーデン「側近!側近だな!?」
魔王の側近「ま…魔王様…不覚をっ…取りました…どうかっ…お許しを…」
ゲホーデン「そんな事はどうでも良いっ!とにかく絶対に死ぬな!これは命令だ!」
魔王の側近「魔…王様…私の事は気にせず…人間を退け…てっ…くだされぇ…!」
ゲホーデン「くそ…くそっ!私は…私はどうすれば良かったのだ…!お前に休暇を与えなければこんな事にはならなかったのかっ…!?」
魔王の側近「…魔王…様ッ…あなたは…正しいっ…これは…私の失態なのです…魔王様が…気に病む事は…無い…で…」
ゲホーデン「お…おい…!おいっ!目を開けろ…!死ぬな!…くそぁぁぁ!私のせいで…私のせいで!側近が…死んでしまった…!これではっ…父と何も変わらない…!私は…私は…!」
人間の兵士「…隙ありぃ!」
ゲホーデン「私は…」
ドグォッ!
人間の兵士「ごっ…が…」
ゲホーデン「…父を超えると決めた…魔王たる者…辛くても…立ち止まってはいけない…」
そこから、魔王は機械的に淡々と人間の兵士たちを殺していった。
ゲホーデン「…皆、ご苦労であった…」
近衛魔鳥(ギ、魔王様…どうしたのデショウカ…)
それから、3日が経過し…
ゲホーデン「側近よ、これで良かったのだろうか…私は…ますます父に近付いていってる気がする…」
ギィ!バターン!
ゲホーデン「…誰だ?」
勇者「やい!魔王!お前を討伐しに来た勇者だ!」
ゲホーデン「勇者…?…そうか、勇者か…」
戦士「ここでお前の野望を止める!」
魔法使い「世界中の人々のためにも…勝つ!」
僧侶「絶対に負けられない…!」
ゲホーデン(勇者たちよ…どうか私を止めてくれ…)
ゲホーデン「…クックック…よくぞここまで来た、私の名はゲホーデン!…さあ、来い!」
勇者「…うぉぉぉ!」
戦士「はぁぁぁぁ!」
僧侶「負傷したらすぐ回復する!」
魔法使い「熱線で援護射撃するわ!」
ゲホーデン「…避けるまでも無い!」
ビビビ…
魔法使い「えっ…」
ゲホーデン「はっ!」
熱線を動かずにそのままの体制で受け止め、眼から光線を放つ。
戦士「うっ…!」
勇者「がっ…」
魔法使い「うぁっ!」
僧侶「ぎゃあ…!」
ゲホーデン「…所詮この程度か。…勇者という事は女神の祝福があるはず。このままトドメをさすのは得策ではない…全ての魔力を以って最大限の呪いをかけておこう。はあ〜っ…はあっ!」
勇者「えっ…!」
戦士「なんだ…!」
魔法使い「何かかけられて…!?」
僧侶「…呪いだ!それもとんでもなく強い呪い!」
ゲホーデン「…呪いを抱えて死ね。」
戦士「ッ…」
勇者「ぐぁ…」
僧侶「ぎぁっ…」
魔法使い「うっ…」
ゲホーデン「貴様らなら私を止めてくれると思ったんだがな…とんだ見当違いか…」
ゲホーデン(…呪いを跳ね除ける程まで強くなり、私の息の根を止めに来てくれ…もう魔王でいるのは嫌なんだ…)
魔王はその立場上簡単に負ける事は出来ないのだ。そこで、勇者一行がいつか自分を殺せるだけの力を身に着けて来る事を期待し、あえて超強力な呪いをかける。自分が魔王から開放されるその日まで…
次回に続く
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