第二話

ゲホーデン「…よし。今日の鍛練は終わりだ。」

魔王の側近「お茶を用意しましょうか?」

ゲホーデン「ああ。今日は紅茶の気分だ。」

魔王の側近「承知いたしました。」


側近に紅茶を淹れてもらう。


ゲホーデン「…側近よ。相談したい事がある。」

魔王の側近「何でございましょうか?」

ゲホーデン「10年程前にだな、毎日のように妙な夢に悩まされていた。私が魔王の座に就任してからは夢に悩まされる事は無くなったが…あの夢には何か意味があるのか、今になって気になったのだ。もう気にする事も無いのかもしれんが…何か大事な事である気もしてな…そこで、夢の謎を解き明かすため夢の力を司る魔物を連れてきてはくれまいか?」

魔王の側近「はっ。承知いたしました。」


数時間後…


魔王の側近「魔王様!連れて参りました!」

夢の力を司る魔物「魔王様…お呼びでしょうか?」

ゲホーデン「うむ。そなた、名前は?」

夢の力を司る魔物「私の名前はソムニーです。」

ゲホーデン「…ソムニーよ。10年程前に私が毎日のように見ていた夢が何なのか解き明かしてくれ。」

ソムニー「はっ。それでは、魔王様の頭に触れてもよろしいでしょうか?」

ゲホーデン「…分かった。」

ソムニー「ありがとうございます。では…」


診察が続き、1時間程経った頃…


ソムニー「…分かりました。」

ゲホーデン「ようやくか。」

ソムニー「…夢の正体は、恐れです。」

ゲホーデン「恐れ…?」

ソムニー「今では立派で優しい魔王として世界中に知られていますが、10年程前は魔王の責務を果たす自信が無かったのでは?」

ゲホーデン「…そうだな。」

ソムニー「…他にも要因はあると思いますが、主な要因としては自信の無さが恐れとして魔王様の夢に表れていたのでしょう。」

ゲホーデン「なるほど…ありがとう。助かった。」

ソムニー「…しかしながら魔王様、ひとつ不可解な点がありまして…このような形の夢には他人が登場する事は無いのですが、魔王様の夢には謎の人物がいるのです…その人物に心当たりはありますか?」

ゲホーデン「…いや、全く無い。」

ソムニー「そうですか…もしかしたら、恐れの中で無意識に助けを求めていたのかもしれません。その相手があの謎の人物である可能性が…」

ゲホーデン「無意識に知らない者に助けなぞ…」

ソムニー「覚えていないだけで記憶の奥底にはその人物がいる…という事かもしれません。」

ゲホーデン「そうか…なら、その人物が人間である理由は分かるか?」

ソムニー「…私にはこれ以上の事は分かりません。申し訳ありません…」

ゲホーデン「いや、十分だ。礼を言う。…側近よ、ソムニーを家まで連れていってやれ。」

魔王の側近「はっ。」

ゲホーデン(夢の正体が恐れから来ていたとはな。だが…あいつはいったい、誰なんだ…?夢の内容は今でもはっきりと覚えているが…あいつとは見た事も無ければ会った事も無いはずだ…接点が無い……いや、いくら考えた所で結論は出ないな…考えても仕方ない…仕事に取り掛からねば…)


謎を全て解き明かす事は出来なかったが、ひとまず仕事に取り掛かるのであった。


次回に続く

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