助手席

野名紅里

助手席

火事を見にゆく助手席に乗りにけり

姿見に二人映れば冬の海

鮟鱇や改装中の美術館

楪のあたりで地図をまはしけり

双六の様子伺つてから出る

でたらめに熊語通訳してくれし

心臓といふ狼のくらがりよ

バレンタインデー泣き真似の泣けてくる

肩いつも春コートより小さくて

土筆つてどこかどうにかなる途中

反転の写真蛙の目借時

鶯は正解もなく鳴いてゐる

蕗を煮るあひだの安全なこころ

航跡の失せゆく朝に李生る

振つて消す燐寸泰山木の花

夏帽子もらふ名前をもらふやうに

月にかかる雲まなぶたの厚さして

手花火をべりべり台紙からはがす

捩れつつ林檎の皮の落ちつきぬ

どんぐりをどれも同じく愛せれば

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助手席 野名紅里 @nonaakari0128

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