第29話 リナとリナ①【令和八年&浄界八年】
私たちは
ジャビラビに
最初は光線がはね返されていたものの、やがてジャビラビの傷口から緑色の血が
「もう少しだ!」
アリサが叫ぶ。
やがて私たちの
「や、やったぁ!」
チャコが歓声を上げる。
ジャビラビはうめきながら首を
化け物は
だが、私たちが射撃を終えたとき――ジャビラビの目が光った。
ジャビラビの胸の位置に何かが浮かんでいる。
「お、おい!」
アリサが怒鳴った。
「気を付けろ!」
何かが
向かってくるのは、縦一メートルくらいの……角材だ!
恐らく舟かジャビラビに
嫌な音がして――。
私はふっ飛ばされた。
「あっ、う」
私は目がかすんでいた。
胸が痛い。私は地面に倒れ込んだ。
……ああ。……痛い……。
「ウ、ウソでしょ」
チャコが私を見下ろしていた。アリサも私を心配そうに見ている。
「リナあぁあああ!」
アリサの叫ぶ声がかすかに聞こえた……。
◇ ◇ ◇
「う……」
――ん?
私は……私は寝ていたんだろうか。
えーっと……私は
令和のリナの夢を見ると、私はどっちのリナだったか分からなくなることがある。
さっきまで令和のリナの夢を見ていたはずだ。
令和のリナが何かと戦っていた……と思う。
だが、よく思い出せない。
自分で思い出すことをブロックしている? そんな感覚がある。
それにしても……ここは……。
「え?」
思わず声が出た――ここは草原?
周囲には歴史の教科書で見た――確か――そう!
水田も向こうのほうに見える。
「じょ、
私は叫んでしまった。
いや、間違いなくこれは夢だ。
夢の中ならば、
「リナ……」
――そのとき、後ろから聞き覚えのある女の子の声がした。
「……
「あっ」
リナ! 令和のリナだ! 灰色のスウェットを着ている。
「……信じられないよ! 令和のリナ……! あなたとまた会えるなんて。この間、夢で
私は
「……私も
令和のリナは顔を赤らめて、私の両手をしっかり
「座って話をしない?」
私が
私たち二人は草原の上に座った。
向こうのほうでは古代の人々が水田で作業をしている。
本で読んだけど、魂の記憶というものがあるらしい。
多分、それを夢で見ているのかな?
「何で、私たちは古代の夢を見ているのだろう?」
私が聞くと、令和のリナは
「うーん……私にも分かんないな」
そういえば、令和のリナは歴史上の
それと関係があるのかも?
歴史上の人物の
「
令和のリナは楽しそうに言った。
「私も、学校に入学することになっちゃったんだよ」
「そうなの? おめでとう!」
私は令和のリナの肩を抱いた。
令和のリナは着実に幸せの道を歩んでいるのだ。
私は自分のことのように
「でもさ」
私は首を
「さっき夢で、令和のリナの行動を見ていたはずなんだけど……。夢の内容をどうしても思い出せないんだよ」
「……別にいいじゃん、そんなこと」
令和のリナは苦笑いした。
あれ? 何か
「私も
令和のリナは
えーっと……「キモい」の意味が分からない。
「キモい? キモいって日本語?」
「あ、ご、ごめん。
「キモい……キモい……分かった。令和の言葉、一つ覚えたよ!」
「覚えなくていいよ~。そんな言葉。だって『気持ち悪い~』って意味だもん」
私たちは笑い合った。
顔がもうそっくり。
まるで双子の姉妹だ。
えっと、何を話そうかな。――私は雑談をしようと思った。
「令和のリナは何が好き? 私はコーヒーとシュークリームが好きなんだ」
「令和の世界では、スターバックスって店があるよ。引きこもる前なら、良く行ってたよ」
令和のリナは顔を赤らめてそんなことを言った。
「スターバックスなら、本当に美味しいコーヒーが売ってるよ」
「スターバックスって……喫茶店のこと?」
「あ、そ、そうとも言うね。キャラメルマキアートとキッシュが美味しいよ。小学生のとき以来行ってないけど、また行きたいんだ……」
キャラメル何とか……の意味は分からないけど、コーヒーの種類なのかな。
キッシュも聞いたことがない単語だ。
――あれ? 令和のリナの様子がおかしい。
ちょっとうつむく回数が多い。
「ねえ、ちょっと
私は心配して聞いたが、令和のリナは笑って言った。
「うん……大丈夫だよ」
「ねえ、令和のリナ。今日のあなたの夢の内容……。あなたの
私がそう言うと、令和のリナは
何だか苦しそうだ。
「あ、ご、ごめんね」
私は心配になり、令和のリナの手を取った。
何かマズかったかな?
「顔が青いよ? 大丈夫?」
「うん……」
令和のリナは左胸を押さえている。
そして
「左胸が……痛い。苦しい」
「えっ!」
私は声を上げた。
――嫌な予感がする。
現実の令和のリナに大変なことが起こっているような気がする。
それはさっき見ていたはずの、令和のリナの
令和のリナがまた一瞬うつむいたとき、私は夢から覚めるのを感じた。
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