第25話 入学半日で再び戦闘開始!【令和八年】

「おい、お前、調子に乗るんじゃねえぞ。善川ぜんかわリナだっけ?」


 その女子は……間違いない。特徴的とくちょうてきなハーフの顔立ち……茶色い髪の毛! 坊原ぼうはらモニカだ!


 でも、坊原ぼうはらモニカは浄界じょうかい世界に存在する女子……いじめっ子だ。


 しかも、手下の反畑はんばた葉子はこ――パン子までいる!


 なんで二人とも、この令和の世界にいるの?


「おどおどしてなんかムカつくな、お前」


 いたッ!


 モニカは私のひざってきた。


「な、何するんだよ!」

「あれ? 何こいつ、よわっ!」


 手下のパン子がそう言い、私の肩を横からドン、と押した。


 私はよろめいて壁に体をぶつけた。


 私は三日間ずっと寝ていたし、まだ体が完全に回復したわけじゃなかったようだ。


「お前の戦闘ライブ映像見たけど、ジャスイガラキって化け物倒したみてえだな。新入生のくせに生意気だ。どうせまぐれだろ」


 なるほど、「この」モニカは私のことを知らないみたいだ。


 私は腹が立って、言い返した。


「まぐれじゃない! 私は精一杯やった!」

「どうでもいいけどさあ……お前……昔の卑弥呼ひみこの生まれ変わりなんだって? あ、クローン人間か。なにそれ? そのありえない話、映画か何か?」

 

 ……確かにウォンダさんがそんなことを言ってたし、私もクローン人間のようなものを見た。


「私だって良く知らない! 卑弥呼ひみこのことなんて、全然分からない。それに、その話はあなたに関係ないでしょ」


 私が言い返すと、モニカは私の服をつかんで、すごんできた。


「お前、生意気なんだよ。ザコの邪霊物じゃれいぶつまれて死ねよ」

「離してよっ!」


 私がモニカの手を力強くはらいのけたとき――。


『学生諸君に告ぐ。東京都内で邪霊物じゃれいぶつおよび【ゼッコン様】を確認。善川ぜんかわリナ、アリサ・オルフェス、今里いまさと千弥子ちやこ三名はドーム内に集合せよ。他の生徒は学校内に待機たいきせよ――繰り返す』


 放送がホール内にひびいた。


 モニカは口をあんぐり開けて、放送がひびいているスピーカーを見やった。


「な、何? 善川ぜんかわリナが実戦に呼ばれた? 何でまたあんたが呼ばれてんの? あ、あんた、どういう新入生なんだよ」


 モニカは叫んだが、私はモニカを無視してドームに急いだ。


 ◇ ◇ ◇


 私とアリサ、チャコの三人は入り口付近で合流し校舎を出て、賢者大神殿の後ろにある室内庭園ドームに入った。


 そこにはウォンダさんが待っていた。私たちは青ローブ賢者の手伝いで「EOSイオスコート」に着替え、「24にいよん人力砲じんりきほう」も装備した。


「今回は私はついていきません。あなたたちでゼッコン様を打倒しなさい」


 ウォンダさんは言った。


「わ、私たちだけで? 私だって入学して二ヶ月ですよ?」


 チャコは眉をしかめたが、私が代わりに質問した。


「そもそも、どうして学校の生徒がゼッコン様と戦うの? そういうのって、自衛隊とか警察官とか大人が戦うんじゃないの?」

「ゼッコン様は、EOSイオスコートと24にいよん人力砲じんりきほうを持つ者でなければ打倒できない。つまりあなたたち、この士官しかん学校の生徒だけです。あの武器とコートは、この士官しかん学校の生徒たちのためだけに作成されたの」


 ウォンダさんが言うと、続けて私は聞いた。


拳銃けんじゅうとかは効かないの?」

「ダメね。ゼッコン様の独自の『結界』ではね返されるわ。戦車の砲撃でも無理」

「ウォンダさんが今日、来てくれない理由は……?」

「知ってるでしょ、この通りよ」


 ウォンダさんは骨にヒビが入っていて、杖をついている。


 分かってはいたが、不安だ……。


「代わりの大人は来てくれないの?」

「もう一度言うわ。この学校の生徒以外に作られたEOSイオスコートと24にいよん人力砲じんりきほうはなありません。私が対ジャスイガラキで使ったのは、単なる試作品よ」

「じゃあ……大人はモニターしに見ているだけ?」

「ええ。ゼッコン様はあなたたち若者が倒さなければ日本の未来はないわね」

「ペチャクチャうっせーな。早く行くんなら行こうぜ。化け物りによ」


 アリサがニヤリと笑って言った。


「もし新入生のあたしやリナがゼッコン様とやらを倒したら、こんな学校に入学する必要ねえんじゃねえの?」

「あなたたちがこの学校に入学する必要性を、あとで教えてあげるわ。たっぷりとね」

「何だと」


 アリサはウォンダさんをにらみつけた。


 アリサとウォンダさん、ケンカしてる場合じゃないって!


「では、今回のゼッコン様の出現場所をしめします」


 ウォンダさんはドームの壁部分にりつけられたモニターを指差した。


 そこには地図が表示されていた。

 

 地図に光の点滅てんめつが示されている。地名も書かれている。


「ここは『浅草地下商店街』です」


 ウォンダさんは言った。


 浅草? 浅草は知ってるけど、地下の商店街は聞いたことないな。


「わ、私、そこ知ってます!」


 チャコが声を上げた。


「日本最古の地下街です!」

「その通り。パラレルワールド化した場合――邪霊物じゃれいぶつの巣になっているかもね」


 ウォンダさんの言葉に、私はゾッとした。


 アリサとチャコもだまってしまった。

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