第12話 罪の無い生き物

ツチフミチャガマは先ほどよりも高く足を振り上げると、勢いよく振り下ろした!



ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォォォォォォン



地面に猛烈な衝撃が走り、家が倒壊する!


人々の悲鳴や生物兵器たちの鳴き声が聞こえてきた。



ナトは焦った。


「(街の中心部へ この巨大生物を行かせちゃダメだ!一刻も早く倒す必要がある…)」



彼はツチフミチャガマの柔らかい足元を もう一度殴る!


ズドォォォン



また赤くなった。効果はある。


しかし奴の足が突然ナトを蹴るように動き、彼を吹っ飛ばした。



「ぬわぁ⁉︎」


「終わりだ」


ツチフミチャガマから蔓が猛スピードで伸びてくるのが わかる。



「(⁉︎…空中でこの攻撃は躱せない!)」


ナトは蔓に蹴りを一発打ち込み、なんとか直撃を免れた。



バシャァァァァァァァン



彼は いつのまにか できていた沼に落ちる。


どうやらツチフミチャガマが踏んだ所のようだ。奴が踏んだ場所は沼地と化すらしい。


「(うっ、寄生虫でもいたら大変だ…早く抜け出さないと…⁉︎)」


ズバァァァァァァァァァァァァン


周りが暗くなったかと思えば、頭上にはツチフミチャガマのブラシのような根が!



「ぬわっ⁉︎」


間一髪で沼地を抜け出し、奴に踏まれずに済んだ。


そして流れるようにツチフミチャガマの根へ拳を叩きつける!



「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」


バシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン



ツチフミチャガマが根から伝わる痛みに耐え切れず、その場で転んでしまった。


下の部分が地中に埋まり、頂の部分だけが地面の上に残される。


「(今だ、蔓植物へ直接攻撃できる!)」


ナトは頂に聳える家へ向かって走った。


「(させるか)」


頂の家の庭が茶釜の蓋のように開き、中から紫色の巨大な舌が出てきた!


「⁉︎…」


ナトは急停止できず、舌に捕まってしまう!

ツチフミチャガマは舌で頂を舐め回し、ナトを捕食した。


「おー美味い…ブッ」


彼は納豆だらけになったナトを吐き出す!

どうやらナトは体中に納豆をつけて、吐き出させたようだ。


「ハァハァハァハァ…」



家の屋根の上に上手く着地し、街の中心部を見る。

どうやら人は いないようだ。


「(なんでだ?)」


彼は そう思いながらも、納豆を蔓植物に向かって撃つ。


ズバンズバン



しかし蔓で納豆を弾かれた!


だかしかし、ナトも それだけでは終わらない。


「うおォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」


彼は家に絡みついた蔓植物の眼球を殴る!


ブシャァァァァァァァ



「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!」


その衝撃でツチフミチャガマは地面から体を出した。

そして体を縦にし頂に立つナトを勢いよく落とす!


「(うわァァァ、クソッ振り落とされちゃダメだ!)」


ナトは必死にツチフミチャガマの体に しがみついた。


だが体勢を整えたツチフミチャガマは、胴体を地面に叩きつけたり、引きずったり しながら街の中心部へ歩き始めた。


「うわっ⁉︎」


このツチフミチャガマの動きは、頂に乗っているナトを吹っ飛ばすと同時に、足元に湖ほどの大きい沼地を作り出す事が可能なようだ。


「うわっ⁉︎」



ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ


ズドォォォン



やはり吹っ飛ばされたナト。そこら中に沼地があり歩きにくい。


「(まずい…負ける!)」


ブワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ


ジャキジャキジャキジャキッッッッッ



突然ツチフミチャガマの根に亀裂が走り、奴が倒れた!


「⁉︎…マグロー!」



どうやらマグローが猛スピードでツチフミチャガマに近づき、鰭で根に攻撃したらしい。



「(よし、このまm)」

↑マグロー


シュルルルルルルルルルルルルルルルルルル



だかしかしマグローはツチフミチャガマから伸びる蔓に捕まってしまった。

そして蔓に棘が生えてきて、彼の体を傷つける。


「(人々を避難させていたから この生物兵器への攻撃が遅れた!ナトは無事なのか…ゔっ)」


マグローが棘のついた蔓に縛り付けられているのを見ながら、ナトはツチフミチャガマの根に攻撃する。


「グォォォォォン」



ズバァァァァァァァァァァァァン



↓ナト

「(もう一度 体勢を崩せた!あの頂の家の中に蔓植物の心臓があるようだ。早く家の中へ侵入しなけれb)」


下の部分が埋まり、移動できなくなったツチフミチャガマは花のような目から種子を発射した。


ズキュズキュズキュズキュズキュズキュズキュズキュズキュズキュ


「⁉︎」


弾丸のように高速で飛んでくる種子を避け続け、ナトは家との距離を離されてしまう!


しかしナトは納豆の糸を家に巻きつけていたため、それを利用して すぐに家の目の前に移動できた。


「ぅぉぉぉおお!」


彼はドアを力強く開こうとするが、ドアに蔓が絡んで開かない。


「(なんでだ!まずi)」



家の庭が蓋のように開いて先ほどのように舌が出てくる。


「(食われるッ)」




ブシャァァァァァァァ


いきなり飛んできた鱗によってドアに絡まっていた蔓が細切れになった。


「(蔓が切れた!マグローの鱗だ…蔓に縛られながら鱗を撃ったのか…)」


急いで家の中に入るナト。

そしてやはり、家の中には巨大な心臓があった。


しかし心臓から鞭のように撓う蔓が伸びる!



シュルルルルルルルルルルルルルルルルルル


「(ゔゔっ、動きが速く本数が多い…避け切れない)」


ナトは蔓の攻撃を防御するように腕を構えながら心臓に向かって歩き始めた。


バチッン


蔓がナトの足に ぶつかると同時に火花を飛ばして彼を火傷させた。

蔓の攻撃は触れただけで火傷するほどの摩擦熱を起こすらしい。


「(だが もう終わりだ)」



心臓の目の前に来たナト。


「うおォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」


ブシャァァァァァァァ



彼は心臓に拳を叩きつけた!


それでも手応えが無い。


「⁉︎」


心臓と彼の拳の間に葉っぱがあった。この葉が彼の攻撃を吸収したらしい。


「(もっとだ もっと!!)」



ピチピチピチピチ



ブシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ



なんとかツチフミチャガマの心臓を破壊できたナト。


家がツチフミチャガマの胴体から吹っ飛び、空中で一回転して地面に落ちた。


ズドォォォォォォォォォン







「ハァハァハァ(なんとか奴を倒せた…マグローと街の住民たちは⁉︎)」



「ナト!」

「マグロー!」


煙のように消えていく蔓を抜け出したマグローはナトの元へ飛んできた。


「なんとか勝てたねぇ…」


「そうだな…周りの生物兵器たちさ皆んなツチフミチャガマに潰されたっぽい…」


「処理が楽になったねぇ」



家に絡まっていた蔓植物も しっかり消えていく。

これにて一件落着のようだ。





しかし、遠くから人が やって来るのが わかる。


↓ナト

「あ、あの まだ この辺りは危険ですので、遠くへ避難をs」


「いい加減にして!」

↑人


「「エ?」」



駆け寄ってきた人は、2人に向かって泣きながら怒鳴り散らかす。


「罪の無い生き物を○すのは やめて!」


「え…罪の無い?」


「麻酔銃か なんか で大人しくさせれば良いでしょ!そうすれば街も破壊されずに済んだのに!」


「生き物…今の巨大生物の事ですか…」

「そうです」



その人は名刺を出して泣きながら話し続けた。


「なんで生物をのですか」



「なんでって、野生動物が人里に降りてくると人間に被害が出てくるので…」


「麻酔銃を使えば良いだろ!」



「麻酔銃は射程距離が短く、我々に危険が及ぶ可能性が高くなる上に麻酔銃で興奮した野生動物が暴れる事も度々あるんです!

それに麻酔の量の調整って難しいし…」



「あなたは、そんな残酷な事をして恥ずかしくないのですか?」


「自分や自分の子供が先ほどの巨大生物に食い殺されても構わないのですか⁈

それに この街は今朝まで数え切れないほどの危険生物が巣食っていたのですよ!生態系も崩壊していたし」


「私は あなたたち の方が危険だと思っています。特に頭の作りや性格が」


「生物を絶滅させるべきではないのは わかってますし、ある程度 共存共栄は可能であります。動物愛護団体の皆さんの意見も尊重すべきであり、理解できる部分も多々ありますよ!

ですが生物によって人間が○されそうになった場合は、その生物は即時 射殺した方が良いかと」


「人でなし!」

「じゃあ もう良いです」



ナトとマグローは来た道を戻っていった。



↓ナト

「そうだ、修復費用は ここに置いておきますから」


生物兵器との戦いで街中の家が壊れてしまったが、ナトがこうなる事を予測し、ある程度はATMから下ろしていたらしい。



動物愛護団体の人は舌打ちし、修復費用を拾った。

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