第4話 粉

老人が納豆に釣られて辿り着いた場所には、やはりナトがいた。


「……」



「さぁお姉さん、この近くの岬で何か起きているのでしょうか?力になりたi」


「儂は知らん。早く帰らないと、熊に襲われるぞ」

「熊が千葉県に生息している事は確認されていません」


「………」



「お姉さん、僕はこの集落に来て1日しか経過していませんが、ちゃんと理由があって来たんです。

偶然ここへ辿り着いた訳じゃありません」


「儂は お前らを信用しとらん。少しは慎め、若造」


「虫がいるのでしょう?とんでもない虫が この近くに」




「…さぁ なんの事やr」

「危なi」


ズドカァァァァァァァァァァァァァァン



ドォォォォォォォン



いきなり砂が舞った。


ナトは老人を庇い、砂が飛んできた方を見つめる。


なんとそこには、5mほどの巨大な蛾がいた。

我々がよく見る蛾と違い、足は無く顔の部分に嘴のようなものが ぶら下がっている。


体色は黄色だがジャージのような繭をつけている。

青い羽は小刻みに動き、蛾の大きな体を浮かす。昨夜聞こえた音と同じだ。


「正体を現したか、カクレアゲハ…」


ナトが蛾に向かって言った。


↓カクレアゲハ

「【悲報】ワイ、ついに見つかってしまう。

まぁ良い そして、お前は生物兵器だが機械科だろ?軽く蹴散らしてやらぁ。

この山の動物も集落の人間も食い尽くしたし、そろそろ生物兵器でも食べたいなぁ」



カクレアゲハという蛾は にちゃにやちゃ しながら呟く。

ねちねち した喋り方は面倒さを感じさせた。


「俺は お前を倒しに来た!お姉さん、安全な場所に隠れていてください!」

「お、おう」


ナトは老人を避難させると、マグローを呼んだ。


「はいはい俺の出番だぜぇ」


「マグロー、カクレアゲハが姿を現した。行くぞ!」

「おっけおっけ」



「ワイは明日の朝早く起きてアニメ見るんや!」


スッ



「⁉︎」「は⁉︎」


なんとあの巨体を持つカクレアゲハが目の前で一瞬にして消えてしまった!


「消え…いや違う避けろ!」

「は⁉︎」


ズバァァァァァァァァァァァァン



何もいない所から突然 風が飛んできて、マグローを吹き飛ばす!


「⁉︎………」


ブワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ


彼は海の方へ飛んでいく!ナトは焦った。


「(この蛾は透明になれるんだ きっと!透明になって背後に回り、羽でマグローを吹き飛ばした!クソッ)」


ナトは納豆を姿を見せたカクレアゲハに向けて発射。


カクレアゲハは素早く動いて納豆を避けた。


「遅いなぁ、ワイのやっている弾幕シューティングの方が弾速が速いぞ」


彼は ある事に気づく。


↓カクレアゲハ

「(おや、唯一の人間かな?今日はこれで良いや)」


彼は隠れている老人を見つけたようだ。


「(まずい!)」


ナトは猛スピードで走って老人の元へ向かう。

しかしカクレアゲハの方が速そうだ。


↓カクレアゲハ

「お前は……これでも喰らってな!」


ブファァァァン


「はぁ⁉︎」



カクレアゲハが放った粉を頭から被ったナト。


「(視界が⁉︎く、暗い!)」

↑ナト


彼は粉によって今まで月明かりで なんとか見えていた周りが、完全に見えなくなってしまった。


「(本当の意味で視界が真っ暗になった!月すら見えない…自分の体も!

あの粉は視界を真っ暗闇にさせる効果があるのか⁉︎)」


辺りが見えないので、カクレアゲハに攻撃する事も老人を守る事もできない。


「(ヤバい、老人が…)」

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