第3話 老人

さっきの宣言通り、ナトとマグローは その岬へと向かっていた。



東京を抜け、千葉に辿り着いた2人。

そこまでは電車などに乗れば移動が楽なので まだ良いが、目的地が田舎の徒歩で行くしかない。


目的地が房総半島の最奥で、人がほとんど いないからだ。




「疲れてないか?マグロー」

「まだまだ平気だよ」



虫や蛙が鳴き、うるさい夜の田んぼの道を走っていく2人は、立ち止まる!



目の前に生物兵器が現れたからだ!!


「カップケーキの群れか…まぁすぐ倒せる」


鋼のような殻から頭と足を出して、まるでカップケーキのような姿をしたピンクの一つ目の生物兵器。

それらが群れを成して2人に襲いかかってきたようだ。



「ナト、囲まれたよ」


「後ろは頼んだ、マグロー」

「おっけー」


ナトは前方のカップケーキたちに向かって走っていく。

カップケーキたちも突撃してきた!!


「ふんッ」



ズババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ


ナトは走りながら手刀でカップケーキたちを切り刻む!


カップケーキたちは消滅していった。



そしてマグローも、口からイクラを広い範囲に発射して、カップケーキたちの心臓を破壊する!



「壊滅できたねぇ」

「そうだな、だが岬までは まだまだ距離がある。少し急ごう」



2人は走って山の中に入った。


「この山を突っ切った方が早い。善は急げ…行くぞ」

↑ナト



夜の獣道を走って走って走って行く2人。

足が速かった。




「ニャァァァァァァァァァァァァ」



突然丸い毛玉のような猫が現れた。鉄球を持っている。


↓ナト

「ろっくけだまる だ!」


ろっくけだまる は鉄球をナトにぶん投げた。


ブシャァァァァァァァ



鉄球は彼の腕に掠り、腕を吹っ飛ばす!

しかし腕をすぐに再生し、もう一方の腕から納豆の糸を発射。



シュルルルルルル


糸で鉄球を手元に引き寄せ、ろっくけだまる に直撃させた!


ブシャァァァァァァァ


「ニャァァァァァァァァァ…」


ボロボロボロボロ…



消滅していく生物兵器たちを眺めながら、ナトはマグローに言う。


「あそこが例の岬から最も近い集落だ。行くぞ」

「そうだな!」



山を降りた先にある集落。

しかし夜だが家から光が漏れていない。一般的に夜は暗いので家の中を明るくする必要があるが、この集落は真っ暗なのだ。


「妙だな、マグロー」


「そうだねぇ、どうして こんな山奥の集落で、しかも夜なのに家の中を明るくしてないのか。

とりあえず、目的地に着いた訳だから一旦休も」


彼は袋から おにぎり とサンドイッチを取り出す。


ナトはパンを食べながら何かに気づいた。


「虫の羽音がする…しかも大きい!」


ナトは少し走って、耳を澄ませてみる。


ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブと小刻みに音がした。



「(近くにいるのか⁉︎)」



◇◇◇




朝が来た。集落から人の声が聞こえてくる。


「起きてナト、起きて」


「………ん」


「朝になったし、集落の調査でもしてみようかぁ」





ぴよぴよ と鳥の声を聞きながら、なんとなく集落を散策して人を探していると、坂を歩いている老人を見つけた。


「「いたな」」



「よいしょ、おっこらしょ、よいしょ、おっこらs」

↑老人


「マグローは隠れていな」

「おけ」



↓ナト

「すみませ〜ん、外から来た者なんですけど、少々お時間をいただけますか?」


彼は老人に話しかける。


「帰れ」

「え」


余所者よそものは帰れ。この集落へ二度と来るな」


「なんでですか?」


「言う気にもならん。儂は忙しいんだよ。これから畑を耕しに…」


「僕に手伝わせてください」

「ハァ?」


老人は坂を無言で歩き続け、ついに止まった。


「いつまで ついてくる。儂を拉致か何かでも する気かい?」


「Q.じゃあ昨夜、なぜ家の中を明るくしなかったのでしょうか?何が起きているのか教えてくれまs」

↑ナト



↓老人

「A.黙れ。黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ」


「…⁉︎」


「儂は今後の生活で忙しいんじゃい。金ばかり稼いでいる若者のお前に、この気持ちが わかるかい」


「わかりません。わからないから、知りたいんです」

「話が通じなさそうだな」



老人はナトが返事しても答えずに、どこかへ行ってしまった。

マグローが出てくる。


「なんか怪しいね。隠し事でもしているのかな?」


「わからない。でもそれじゃダメだ」




◇◇◇



この後も集落を散策したが、人は見つからなかった。

あの老人だけしか、もう いないのかもしれない。


「(だとすれば、確かに夜になっても家に明かりが つかなかったのは納得できる)

なぁマグロー、あの老人にもう一回会ってみよう」


「会うの?どこにいるか わかるの?」

「いや別に」


「えぇ、じゃあダメじゃん」


「でも案があんの」

「へぇ(スルー)」



◇◇◇





夜になった。


老人が1人、山道を歩いて自宅へ向かっている。


「(今日も神に祈って、明かりを消さなければ…おや、納豆かえ)」


彼女は道に納豆が落ちている事に気づいた。

そして少し先にも納豆が落ちている。


「(貴重な食い物だ、拾っていこう)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る