第24話 実力差
あれだけ人間じみた見た目、流暢な言語。
それを使いこなすモンスターなどそう多くはない。
というかボクはコイツしか知らない。
《女王蜘蛛ラクナ》
父さんは見た目が美人で好きだからなんて言って何度も60層に通っていた。
ボクもそれに一度だけ付き合わされたっけ。
それ以来だけどたしかに美人、スタイルだって良い。
素敵な女性だ。
ただ内に秘めたモンスターとしてのおぞましさは他の比にならない感じがする。
「ねぇ〜誰か質問に答えなさいよぉ〜!」
"ぬるぬる動く蜘蛛女が喋ってるのかわよ"
"うん、これイけるわ"
"こんだけハンターやられてるのに不謹慎"
"まぁでも背中に蜘蛛の足っぽいの生えてる以外はどう見ても綺麗なお姉さんだもんな"
"うん、黒いドレスも素敵"
ボク以外のみんなは目の前の得体の知れないモンスターを見て言葉を失っている、そんな様子だ。
「女王蜘蛛ラクナ、残念だけどボクはそれの使い方を知らない。でも君がこのまま地上に出たら困る人もたくさんいる。どうやってこの階に来たのかは知らないけど、大人しく自分のいる階層へ戻って欲しいんだ」
だから少しだけヤツを知っているボクが質問に答えた。
するとラクナは瞳をしきりに瞬かせ、
「へぇ〜アナタ、ワタクシを知っているの? そんな人間はただ一人。あのしつこい女好きハンターだけだったはず。名前はなんだったかしら……」
頬に手を当て、考える素振りをしている。
そしてなにか思い出したのか、目を大きく見開き、
「そうだ、たしか子を連れていたこともあったような……!? アナタもしかしてあの女好きの息子かい? そう言われたら少し面影があるわね!」
この短時間で見事正解までたどり着いた。
知能高すぎてむしろ怖いまである。
「そうだよ。だからボクは君を知っている!」
"まさかのシルバーの知り合いというオチwww"
"これって戦わずして済む流れ?"
"いや、むしろシルバーもあっち側って可能性もあるぞ"
"大丈夫だ! レナたんがいる限りシルバーは地上に手出ししないはず!"
"根拠レナかよ笑"
"シルバーVS女王蜘蛛ラクナ、ちょっと見たかったかも"
"いや、あの蜘蛛女が戦い始めたらマジで地上終わる可能性まであるってw"
ボクの言葉にラクナはニヤリと不気味に微笑み、
「こりゃ厄介ね〜。ということはワタクシの弱点も知ってるってことかしら?」
そう、ヤツには2つ弱点がある。
1つは俗にいう炎属性というものだ。
蜘蛛は火に弱いなんて当たり前だと思うけど、その当たり前がこのラクナにも通用する。
もう1つは……正直当てにできないから一旦頭からかき消そう。
「うん、もちろんだよっ!」
彼女はボクの返事を聞くなり、みるみる顔つきを変えていく。
そして瞬時にその場から消えたと思えば突如目の前に現れ、背丈が高い分少し屈んでボクの顔を覗き込んできた。
「ふふっ……じゃあ厄介な君から殺そうかしらっ」
そんな彼女は嬉しそうに微笑みかけてくる。
「やめろっ! だ、旦那に手ぇ出してみろ! この俺が許さねぇぞ!」
ラクナの存在感に慣れてきたのか大我くんが一歩踏み出し、強気な言葉を浴びせる。
それに合わせて飛田さん、サラも同じく前に足を踏み出す。
「そ、そうです! 相手はリュウさんだけじゃありませんっ!」
「そうだ! ロベール様の名にかけて僕がお前をここで食い止めるっ!」
それらの言葉を聞いたラクナは自身の体を抱きしめ、ブルブルと全身を震わせながら
「いいわ。いいっ! 弱いもの同士が助け合う……これは人もモンスターも同じ。でもそれは一体何がそうさせるのかしら? 本能? 愛情? 友情? 奇しくも強者として生まれてしまったワタクシには全く縁のない感情なの。だからこそ知りたい。知って……知った上で壊したい。全てを壊したいの……。全てが崩れ去る瞬間、あなた達がどんな顔をするのか、今考えるだけでもゾクゾクするわ〜っ」
とろんとした目をしてそう言葉を吐く。
その後ラクナは空中へ浮遊し両手を上に掲げた。
「じゃあさっそく見せて?【 万糸・海豪の槍 】」
そう唱えると、ボク達の頭上……いや、ダンジョン全体の空に糸でできた槍が無数に浮かんでいる。
なるほど、あの槍が今この7階層の地面全体に突き刺さっているんだね。
あんなものが降ってきたらマズイっ!
ラクナが両手を振り下ろしたと同時にそれは空から降り注ぐ。
これはさすがに手段を選んでいられない。
「硬化っ!」
ボクは全身に竜鱗を纏う。
あの槍の威力は分からないけど、この力で守り切れるはず。
例え傷ついたとしても致命傷は避けられるだろう。
それよりもほかの仲間だ。
そう思って目をやると、サラは大剣の能力か何かで光の膜を発動していて、大我くんもその範囲内で同じように包んでもらっていた。
「豪炎乱舞!」
その前に飛田さんが立ち、炎を纏わせた長刀で降り注ぐ糸の槍を叩き斬っている。
あまりに多い数だけど、彼が振った剣の軌道にはしばらく炎が残り、降り注ぐ攻撃から身を守る役割を果たしていた。
それにより槍に対して少ない手数を充分に補っている。
かくいうボクはガントレットによりある程度防ぐが、もちろんそれでは事足りず幾分かの槍を体に受けた。
しかし硬化のおかげで大したダメージにはなっていない。
そしてこれはどっちでも良いが、さっきまで飛んでいたAI撮影ドローンも今の技で全て跡形もなく壊れさっていた。
どうにか糸の槍は降り終え、ラクナは地上へゆっくりと降り立ち、
「まさか全員無事なんて運がいいわねぇ〜! さて第2ラウンドはどうかしら?」
そう言って体内で生成した蜘蛛の糸をどこからか練り出し、目の前で等身大の糸製大槍を創り出した。
近距離戦ということだろう。
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いつも★やフォローありがとうございます✨️
作者の近況ノートに主人公『リュウ』とヒロイン『レナ』のイメージ画像を載せたのでぜひご参考までに‼️
https://kakuyomu.jp/users/kouga0208
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