第25話 竜装甲ver.炎王竜
ラクナはボク達にその糸製大槍を構えている。
そして第2ラウンドと言ってきた。
「それは近距離戦ってこと?」
「そうよ〜! あ、でもあなた達は遠距離で攻撃してきてもいいし、全員でかかって来ても問題なしっ! これくらいのハンデでちょうどいいかしら?」
ボクの質問に対して、彼女は大槍をブンブン回しながら受け答えする。
そんな余裕そうにしているラクナを目の前に飛田さんはボクにコソコソと耳打ちをしてきた。
「リュウくん、君も見たところ近距離タイプ。それに相当の実力を持っている。僕と2人であいつを攻撃、後方から隙をみて鳴上くんに撃ち込んでもらうのはどうだろう? これでも勝てるかどうか全くの未知だけど」
「うん。やつの弱点は炎。飛田さんはさっき炎を使ってたみたいだし、その攻撃が当たれば大ダメージを与えられるかもしれない」
ボクも飛田さんがしたように耳元で言葉を返す。
「そ、それは本当か!?」
彼はさっきまで耳元で話してきた意味がなくなるほどの大声で反応を示した。
急な大音量、びっくりするよ。
「うん! ボクも一応炎は使えるけど、もう1人いるなんて心強いよ」
ふとこんなゆっくり話していて大丈夫かと思って彼女へ視線を向けると、なぜか微笑ましくこちらを見つめていた。
「いいのよぉ〜。ゆっくりと倒す方法を考えて、目一杯ワタクシを楽しませてくださいな!」
相変わらずラクナは余裕そうにし、今はルンルンと軽快に体を揺らしている。
ゆっくりと言っても作戦はとりあえず決まった。
あとは大我くんとサラに伝えるだけ。
一応ラクナのことを警戒しながらボクと飛田さんは2人の元へ駆け寄り、作戦内容を伝えた。
「よ、よし。後方支援は俺に任せとけ! 死ぬ気でやってやるから!」
強気なセリフの割に大我くんの声は少し小さく震えている。
そりゃ命懸けなのだから怖いに決まってるか。
「大丈夫です。大我さんは私が守りますから!」
サラは後方支援をしてくれる大我くんを守るという役割になった。
いくら飛田さんの援護があったといえど、あの槍の雨を無傷で凌いだのだ。
守るには充分の実績だとボクも思う。
ここはハンターとしての戦闘経験が一番長い飛田さんが指揮をとった。
「よし、みんな準備はいいか?」
彼の声かけに対してボクを含めた皆が静かに頷き、覚悟を伝える。
「あらぁ〜ようやく準備できたようね? さぁいつでもかかってらっしゃい!」
こちらの準備を敏感に感じ取ったのか、ラクナはそう言って大槍を構えた。
行くぞ、という飛田さんの掛け声でそれぞれ持ち場に移動した。
大我くんはその場で銃を構え、いつでも放てる機会を窺う。
それをいつでも守護できるようにとサラが大剣で守る準備。
ボクは飛田さんとまっすぐラクナの元へ突っ込んだ。
「まぁそれが一番無難な作戦かもね〜!」
「余裕ぶってるのも今のうちだぞっ!」
飛田さんは勢いよく炎の刃で斬りかかるが、糸の大槍で容易にいなされる。
「なっ!?」
糸なのに炎で焼き斬れないなんて相当な強度。
それでも諦めず何度も太刀を振るうが全て余裕で弾かれてしまった。
2人が武器のやり取りに夢中の隙にボクはラクナの死角へ潜り込み、すかさずフルパワーの拳を解き放つ。
彼女の横腹に直撃する、と誰もがそう思った瞬間ラクナは異常なまでに体をのけ反らせ、その打撃を回避した。
それだけでなく狙ったはずの横腹に、どこからか集められた蜘蛛の糸が互いに結ばれ合い、それが拳へと形を変え、ボクはカウンターを喰らう。
「う……っ!」
まともに受けたボクは大きく後方へ飛ばされたが、なんとか自分の足で踏み留まった。
あいつは蜘蛛の糸を体中に張り巡らすことができ、更には形まで自在にできるみたい。
非常に厄介だ。
ボクの攻撃が避けられたところをみて飛田さんも一瞬の隙ができてしまい、ボクがカウンターを喰らったタイミングで、ほぼ同時にラクナの蹴りを腹に入れられていた。
その攻撃によって飛ばされた飛田さんは、跪いて立つことも苦しそう。
「ほら、もう終わり?」
ラクナはボクに攻撃してこい、と言わんばかりの煽りをかましてくる。
「ふ〜温存している暇はないね。【 竜装甲ver.
ボクを纏う竜鱗は赤く変化し、連なった各鱗間からは高温の熱気が沸々と沸き上がってくる。
この技の間竜らしい角も生えてきて、体のあらゆるところから炎が出せることが特徴。
しかしこの竜装甲は少し未完成な技で、竜鱗自体、顔には現れず首から下のみ。
それもところどころ欠損して人の皮膚のままの部位もある。
これではいわゆる人と竜のハーフといったところだ。
今のボクの体表温度は1500℃程度。
でもよかった、ボクの体温にガントレットはなんの問題もなく維持できている。
これ以上体温を上げることもできるけど、周りに被害が出てしまうかもしれないし、ひとまずはこれでいこう。
「あ〜ん、やっぱりあの女好きハンターの子供……っ! 父親と同じ力でワタクシに挑むってわけね……はぁ〜興奮する……」
ボクの姿をみてラクナは顔を火照らせ、息を荒げている。
父さんと同じ力だと分かった途端この反応、理解ができない。
いや、理解しなくてもいい。
ここで倒すだけだから。
「君はボクが倒すっ!」
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