第14話 試練の前兆
「ふっ…ほっ…俺よ、風となれー!!」
高木は走っている。
まず気分によって5〜10kmのジョギング。それが終われば、家で重複トレーニング100回。気分によって変化はあるが、全身にいきわたるようトレーニングしている。
~1時間後~
「ふぅー、今日めっちゃ調子いいな。体中から活力がみなぎってくるわ。」
高木はどうやら、すごく体の調子がいいらしい。いつもは大抵、1時間半程度はかかるのだが、1時間で終わらせることができた。
「どうせならマーソも呼びたかったんだけどなぁ…」
高木は、一度マーソ家に寝泊まりしてから1週間程度
「あら?アンタ
後ろからイロハに声をかけられた。1週間前の祭り以来である。
「おぉー!イロハじゃん!なんでこんなとこいんの?」
「いやなんだ、久しぶりにあんた達に会いに行こうと思ってたんだが…マーソはどこにいるんだい?」
どうやら高木たちに会いに来ようとしていたようだが、マーソがいないことに戸惑っている。かくいう高木も、マーソがいないことに普通に困っている。
「それが…俺にもわかんないんだけどさ、なんか用事かなんかがあるんじゃないかな?」
家にさえいなかったことから、高木には
「それならお邪魔するのは申し訳ないかね…ところでアンタはここで何してたんだい?」
「俺は毎朝の日課をこなしてたんだ。まぁ、トレーニングってやつだな。もうちょっとしたら移動する気だったんだけど…一緒に来るか?」
ここで会ったのも何かの縁だろう。自身の日課にイロハを誘ってみる。
「おぉ!!それは本当かい!?それじゃ、ありがたくついていかせてもらおうかね」
マーソは気がかりだが、イロハが日課に付いてきてくれるようだ。なぜだか凄く頼りになる。具体的に言うと自分がへました時になんやかんや何とかしてくれそうな気がする。
「よーし…そんじゃ行きますかぁ!!」
高木はそう発言すると、森の方まで全速力で向かっていった。いつもは森で起き、朝トレをしていたので、森へ向かうというのは違和感があった。だがいつものあの訓練場へと向かう。
「ほー…あの場所に走って向かうってのはなんか
「ほえーここがアンタのトレーニング場ってやつかい。森の中にこんな場所があったなんてねぇ」
高木たちの開拓により、この森の中に軽い休憩スポットのようなものができていた。ここで、いつも魔術の訓練や研究を行っているのだ。
「…?誰かいるな…もしかして!異世界のすげぇモンスターとかかな?」
高木は訓練場に誰かがいることに気づいた。期待も混じってしまったが、警戒しつつ影から確認する。
「っっ…!風切!!」
ビューーシュウゥゥ……
「はぁ…はぁ…っぐ...だめだ…こんなんじゃ魔術師なんて名乗れない。」
「えぇ??マーソやん、何でおるん?」
「こんなところにいたなんてね。何してたんだい?」
魔術訓練場で、こそこそ何かしていたのはマーソだった。高木達は、マーソの姿を確認し、姿を現す。
「うぇ!?いたんですか?…えっと、見られちゃいましたか。」
マーソは、どこか奥ゆかしい表情で話し始める。
「あの…僕、魔術師志望だって話したことあるじゃないですか?なんですけど…まぁ見ての通り、魔術の才能がほとんどと言って良いほど無く…」
どんどん表情が重苦しく変化していく。要するに、自分の才能のなさに打ちひしがれてるということだろう。高木は、困っている友人を何とか助けようと、思考を
「…そうだなぁ……あっ!解決策、思いついたかもしれん…その前に、ひとつ聞いてもいいか?マーソって俺に裸って見せれる?」
木々たちが騒々しくなる。
「……………え?っっ…あ、あ、あの…えっと…す、すみません…僕、実は…男なんです。えっと女性じゃなくてすいません…」
「アンタ…そういう趣味だったのかい…まぁ、否定はしないけどもねぇ…確かにマーソ君は女からしても
二人とも小さく体を震わせている。目には輝きが無く、誰が見ても
「あぁっとぉ…そういうことじゃなくて、マーソの問題を解決させるために、解析鑑定でマーソのステータスを見ようって話なんだ。
「…?ステータス?解析鑑定?聞いたこと無いですけど…まさか、また
「…いんや、あたしは聞いたことがあるぞ。解析鑑定…それは、勇者が持っているとされる特殊なスキルだ。だが、勇者ってのは世界の危機に現れるとかって話だが…本当だってのかい?
二人の目が輝きを取り戻し、少しホッとする高木。
「勇者って言われてもピンとこないけど…まぁ、そう言われればそうなのかもしれないな」
勇者の定義が
それと、今回の件で余計なことを言っては天誅を食らう事が分かった。これからはもう少し
「まぁ…ってことだから、マーソに解析鑑定をしてみてもいいか?」
「そういうことならもちろんです!!それじゃお願いします!!」
高木は
(マーソのステータス…ふむふむMP100?まじか…ちょっと少ないな。えーほかには…はぁ?INTが100?まじか、ステータスって訓練次第で上がるものなのに、マーソには悪いけど本当に才能ないっぽいな)
高木はマーソのステータスの気になる部分を閲覧していたが、一つ気になる点を見つけた。
(は!?使用可能魔術属性 炎、雷、水、風、が上級まで使用可能で...土、雷が中級...闇と光が初級!?8属性も使えんの!!?)
そう、マーソはステータスこそ
「あぇっと…マーソさん?」
「あ、はい!!何ですか?」
「君、使用できる魔術の属性は何種類だい?」
「えっと…僕が使用可能なのは8属性で、核属性以外はすべて使うことができます。」
「おお!八属性も使えるなんて凄いじゃないか。」
イロハの反応的にも、高木はこう思う。やはり、嘘ではなかった。魔術というのはそれほど、
「す…すごいねぇ、ちなみに、なんで8属性も使えるの?」
魔術を9属性も使える事を唯一の
「えっと、まず、炎、雷、水、風属性は上級までなら、相当高いですが、ギルドで売っているんです。僕は、父から、その
「あっギルドで買えるんだ…そうかそっか…だから、すみスライムの時あんなに、お金欲しがってたんだな。」
高木はこの世界の人間なら、金を持っている限り誰でも魔術を使えるという事実を知って、少しいじけてしまう。
(じゃあ俺、ナンバーワンじゃなくてオンリーワンじゃん。でも…原因はステータス不足ってことか…なら俺のあの魔術で解決できるかもしれんな)
「…うん少し試したいことがあるんだけどいいかな?もしかしたら、マーソ君の悩みが解決できるかもしれませんわ。」
「っ!!本当ですか!?ぜひお願いします!!」
「よしそれじゃいくぞ、
尚、この能力交換は解析鑑定が使えるものしか使うことができない。
「よし!!解析鑑定」
(ふむふむ。っしゃい!成功だ!!INTが100万になってるぞ!!)
「よし、大丈夫だ、そのまま何でもいいから魔術を使ってみてくれ!」
「わかりました!!それじゃ行きます…ふぁぁぁ…はぁ!!
「さて、お手並み拝見といったところかね」
マーソはいつも通り、魔術を放ったつもりだろう。だが、その
高木は、自分の実績をかみしめ、にやにやによによとしながら隣を見るが、顔色が悪い。
「どうだった?初めてだろう?こんなにすごいのは。ま、一時的なものでしかないんだけど。」
にやけ顔を何とか正し、渾身のドヤ顔+カッコつけたような変なポーズでマーソに話す。だが返事はない。
「……こりゃ気絶しちゃってるさね。アンタ、流石にもうちょっと加減しんさいな…はぁ、マーソ君も災難だねぇ…」
マーソの頭を抱え、イロハ自身の膝に置く。膝の上に収められた頭を撫でながら、高木に対して
「
「やっぱり勇者ってところかい。転移魔術まで使えるなんてねぇ…あれ…そういえば
そう唱えるが、ステータス画面に『MPが足りません』と表示される。そういえばマーソのMPと自分のMPを交換したことで、MPが足りなくなってしまっていた。
「あっそうやん。マーソと
マーソを背中におぶり、歩みを進めようとする。するとイロハが肩をポンポンと叩いてくる。
「このくらいの仕事はアタシに任せてくれないかい?ここまで来て何の手伝いもしないってのは流石に心が痛んじまうよ」
そういうことならば任せようと高木は思う。実際スタミナ自体はあるが、身体能力が劇的に向上してるわけではない。一人を背負って楽々歩けるほどではない。
「ってことならよろしく!」
マーソをイロハに手渡し、高木はマクノ村へと向かう。軽くイロハの方を見てみたが、案外余裕で歩けるようだ。あんな
「はぁ…自信無くすなぁ…」
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