第12話 愉快な運命
「待てぇぇぇぇぇぇぇ!!」
突如後ろから話しかけられ、高木とマーソは後ろを振り返る。声から何となく想像できたが、まさしく少女…いや、もしかしたらそれ以上に幼いかもしれない少女がいた。
お姫様の様なドレスを身に
「…マーソの友達…なわけもないかぁ…あんまり友達出来る性格じゃないもんな…じゃあ誰だ?」
「いやいや、友達の説もあるでしょう!!」
「実際?」
「…………あぁ…えっと、君は僕たちに何の用なのかな?」
当然だが無視されてしまった。まぁ、そんなことは構わないといわんばかりに、高木も少女の方に体を向ける。
「
そう大胆に告げると、仲間になりたそうに高木を見つめる。全くと言っていいほど
「実は…そこにいるあんたとカイリバルっていう冒険者との闘いを見てたのさ。魔術師なのに
高木は初めてこんなに真正面から褒められて、悪い気はしなかった。マーソも首を軽く縦に振っている。要するに、高木に憧れたから仲間に入れてくれということだろう。と、高木は
「そういうことなら、全然かまわんぜぇ?なぁ、マーソもそう思うだろ?」
喋りはしなかったが、マーソも腕を組み、首を縦に振った。
「ってことだ。じゃあ、よろしく頼むぜ!!」
高木は少女の方向に手を差し出し、握手をしようとする。その手を少女は力強く握る。
「あっ…アタシの
流石にやすやすと仲間に入れてくれるのはおかしいと思ったのか、困惑の表情を浮かべる。
「まぁ、高木さんはそういうの気にしてないですし。おとなしく仲間になっときましょう」
「そういうことなら…よろしく頼む!あたしは、『シュッタ・イロハ』だ!!気楽にイロハとでも呼んでくれ!!」
「俺は高木豪散やで~ほんでこっちはマーソだ!よろしく!!」
新たな友情がこの場で芽生えた。
「うぉぉぉ!!すみスライムの
そう叫ぶ男はギルドへと向かって走っている。
「…まさか…先を越されたか?」
「とくしゅ、知性、個体ですって?あ、あり得ない。まさか、僕が生きているうちに体験してしまうなんて。」
いつも余裕で、高木の奇行にも少し顔を引きつらせながらも、対応してくれているマーソの顔に余裕がなくなっていた。そんないつもと違うマーソの一面を見た高木は
異世界に来て、これほどまで緊迫した状況はない。
狼に襲われた時も、カイリバルと戦った時も、これほどまでに体を
「そ、そんなにやばいことなのか?」
マーソの様子を見た高木は、イロハに
「…いやぁ、あたしも結構驚いてるんだけどね。すみスライムの特殊知性個体か…おそらくだが、『波』が来るさ。あと、すまなかったな。アンタたちの
何が何だか分からない高木だったが、その意味をすぐさま理解した。
ドタバタドタドタドタバタドタバタ!!
「来ちまったなぁ!!『波』が!!」
その音の発生源を振り向く。その先には、無数の影が見える。それは、何かすらわからない無数の影。すみスライムの影か区別がつかない。
だが、その影が近づくにつれ、その正体が鮮明になる。
「うおぉぉぉぉ!!
「あぁぁん!?ランク昇格するのは俺だ!!たかが数匹狩った程度で、
その影は人だった。イロハが形容したようにその人の群れは、まさしく「波」と表現するにふさわしいものだった。
「くっそ…まさか、散歩をしたことが裏目に出てしまったなんて。だれが、すみスライム大量発生と特殊知性個体の出現なんて想像できるんですか!!」
マーソは、今までの姿からは想像できないほど、
「そ、その、と、特殊知性個体ってなんなの?それにあの人の群れとかさ」
「…特殊知性個体というのは、モンスターの中に
高木は頭に湯気が出ていた。何を言っているのかあまり理解できていなかった。
「ご、ごめん、もうちょっと簡潔に説明してほしいな。」
マーソは心底苛立っている様子だ。はたから見れば、高木が怒らせているといっても過言ではないような様子だ。深呼吸をして、冷静になっていく。
「…わかりました。要するに!レアイベントの
「なるほど…」
「まぁ、仕方ないさ。あたしだって、こんな事
(意外とマーソって金のこと気にするんだな。結構遊んだりしてるのかな?)
何とか状況把握ができた高木は、冒険者たちを目で追う。もし、自分がすみスライムを討伐できたなら、その
「とりあえずさ、ギルドに戻ろうぜ」
「…ここで落ち込んでても仕方ないですね。落ち着きました。行きましょう。」
明らかに落ち込んでいる様子だ。やはり勉強などに金をつぎ込んでいるからいくらお金があっても足りないのだろうか。そう考えると、今回の失態はかなり痛かっただろう。
ギルドに向かってはいるが、いつも以上にマーソの歩みが遅い。そこまで気にしているのかと心配にすらなる。それを見かねたイロハが、マーソの背中を力強く叩く。
「シャキッとしんさいな!!こんなところでなよなよしてどうすんだ!!さっさとギルドに向かうよ!!」
少し見た目からは想像しにくいが、姉貴肌なのだろうか。マーソに
「ご、ごめんなさい。そうですね、まだ諦めちゃダメですよね。向かいましょうか。」
もうすでに三人の間に
「それじゃ、ギルドに行ってみるか!」
「はい!!」
「あいよ!!」
三人はそのまま、晴れやかな表情でギルドへと向かう。
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