第8話 初めての高揚感
うぉぉぉぉわぁぁぁぁぁぁ!!!!
周囲は面白いもの見たさに、人が集まっていた。先ほどギルドにいた人たちや、この村に住んでいる老人たちに、若者たち。そして
そんな歓声たちの向かう先は一つ。
「じゃあ武器、魔術、何でもありの、相手が
そういうと、そのガタイのいい男は背中に担いでいた斧のような武器を手に取る。
「……はいぃ…」
そんな問いに力なく答えるのが、高木だ。高木は内心、とてつもなく焦っていた。あれは別に
(はぁ…戦いてくねぇ…ぐっ!!急にっ…腹がぁ…)
別に腹など痛くない。これは一種の
ましてや対人戦など、今まで一度も経験したことがない高木にとっては、
「一応聞いておいていいですか?本当に全力で行きますよ?俺も痛いのもですし、まぁ…やるからには負けるのも嫌なので。」
「あぁ!もちろんだ!というか手加減でもしやがったら許さねぇぞ?」
なかなかに
「…先に謝っておきます。さっきは言いすぎてしまって、すいませんでした…全力で行かせてもらいます!!」
(気絶…なら、あれで行くか……)
高木も内心で、ただで負けるわけにはいかないと、仮にも自分は世界最強の存在なのだと、自分自身を
自身の全てを
(ふむふむ。名前はカイリバルね…はぁ?
もう一度、心が”敗北”という方向に揺らぎそうになったが、何とか平静を取り
「すー…ふー…よし、準備OKです」
ある程度の心の落ち着きを取り戻した高木は戦闘態勢に入る。
「はーん…その構えもしかして、魔術師か?」
「そう…だったらどうするんですか?戦闘をやめたりするんですか?」
「いーんや、そういうわけじゃないさ。ただ少しそれだけで戦うのは珍しいなと思っただけさ。」
そこで誰が決めたのかは知らないが、一人司会のような男が観衆の中から
「それでは、これよりC級冒険者
「…高木です」
「なるほど!それでは改めまして、これよりC級冒険者
(俺…まだ冒険者じゃないけど、まぁいいか!)
「司会はわたくしマイノーが努めたいと思います」
司会という存在と、あの
「それでは…始めぇぇぇぇぇ!!」
「うおぉぉぉおぉぉぉ!!!」
カイリバルはおそらく、武器から考えるに魔術は使わずすぐさま
だが真っ向勝負というやつだろうか、後ろに下がろうとせず、その場で魔術を行使してしまう。
「風切!!」
「おぉぉ!!これは凄い!何と勢いの強い風切だぁ!!」
高木は魔力制御により、風切を
だがカイリバルは寸前のところでその
「……あっぶねぇ…ふん、やるじゃねぇか。これほどまで精度も威力の高い風切を見たのは初めてだ。だが!そんな単調な
「高木選手の風切をしっかりと躱す!!魔術師は一度の魔術で仕留めきることが多い
おそらくカイルバルも
(うるせぇなぁ!!あのマイノーとかいう野郎…
対人戦、司会などという状況になれない高木はすぐに気が散ってしまうが、何とか気を保つ。何の
「グッッ…ならこれならどうだ!!」
「初級水魔術【
高木は、その身に水で生成した
「…初級とはいえ、2属性を同時に操るとは。まぁ、口だけじゃねぇってことだな。やるじゃねぇかぁぁ!!」
「おっほぉぉ…すげぇ…すげぇ!!こんな田舎町でこんな高
マイノーの声はとうに高木たちの耳に入っていなかった。マイノー自身も、とうに解説を務めれるほどの
カイリバルは一瞬驚いたような表情を見せたが、瞬時に高木へと向かってくる。そして高木に対して、その斧を振り上げ、斧を振り下ろす。
「
ガァァッッァァァンッッッ
だが高木もその行動に反応し、アイスシールドで受け止める。それを見た、カイリバルは、即座に次の攻撃を始めようとする。やはり魔術師相手には、速攻が良いのを熟知している。カイリバル自身も、これで確実に仕留めたかと思った。だが、次の攻撃も高木に止められてしまう。
「へへ…やるじゃねぇか。俺の攻撃を受け止めれる魔術師なんて、そうそういねぇのによぉ!!なんだか楽しくなってきたぜ。」
そう、テンションを上げるカイリバル。そして
だが実際は違う。高木は狙っていたのだ。相手が
「はっはぁぁぁぁ!!!どうしたんだぁ!!お前の力はこんなものなのかぁ!?これじゃ防戦一方だぜ!!さぁ、早く反撃して来いよ!!」
「おぉぉカイリバル選手の猛攻だぁ高木選手、盾で防ぐことしかできないのかぁ!!」
こうも挑発を続けるカイリバルであったが、反撃してこない高木や、
「……っ!!油断…天敵ぃ!!」
盾を捨て、カイリバルの最後の斧攻撃を避け、高木は氷の盾を持っていない方の手をカイリバルへと突きつけ
「!!まさか…おまえ!!3属性も同時併用できるのか!?」
「初級雷魔術【
拳を突きつけられたカイリバルは、泡を吹いてその場に倒れる。
「なんだいありゃ…
区別することなど不可能な歓声に交じり、一人の愉快な運命がそう言葉を溢す。
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