第7話 人心掌握

「君は本当に…飽きさせてくれないなぁ…」


 ――高木は周囲から視線を感じた――


「…?なんかすげぇ視線感じる。」


 高木はそう言い、あたりを見渡すが誰もいない。


「…?大丈夫ですか?」


「いや、多分…大丈夫だと思う」


 おかしいなと思いながらも、ギルドカードを作りに、ギルドへと向かうだろう。


(そういえば、こんなゆっくりこの村の事見て回るのも初めてだな)


 改めて高木は、マクノ村を見渡してみる。自然豊かで、オープンスペースが多く、開放感かいほうかんを感じる設計になっている。建物は基本的に木製で、少し薄汚うすぎたないが、味を感じるような造形ぞうけいである。

 その建築群けんちくぐんの中にひときわ大きく目立つ建物がある。


(結構でかいなぁー。あれがギルドってやつだな、多分)


 ゆらりと歩みを進めながら、ギルドと思われる建造物の元へと到着した。


「ここがギルドです!実は僕のお父さんがここで、ギルドマスターをしています!」


「え?そうなの?知らんかったわ。てか俺、この村のこととか、マーソもだけど、全く何も知らないな。なんか申し訳ねぇわ」


 純粋に、異世界という未知の世界。魔術という存在に没頭ぼっとうしすぎていて、あまり周りを気にしたことはなかった。

 

 高木自身の責任なので、仕方はないのだが、自責じせきねんというものを感じたのか、マーソに謝罪を述べる。


「全然大丈夫ですよ!僕も魔術師を志望しぼうしているので、間近で高木さんの魔術を見られて、すごく参考になりますし!!」


 そんな他愛もない話をしながら、ギルドの内部へと入っていく。


 ギルド内は、いわゆる荒くれ物の集いみたいなものだった。壁には依頼クエストの張り紙を張った看板や、奥の方を見ると、受付場のようなところに人が数人並んでいた。ギルド内中央あたりには、酒を片手に語り合う人たちなど、おおむね前世の記憶通りな内装ないそうだったであろう。


「こっちです!!」


 マーソは受付のほうへと案内してくるが、高木はある地点を見つめている。


「…クエストだぁ」


 高木は受付へと向かうのではなく、我を忘れ、取りつかれたかのように、依頼クエストが書かれた看板へと向かう。


「そ…そっちじゃないですよ!」


 マーソが止めようとするが、高木の足は止まることはない。ほどなくして、看板の前まで着く。亡霊ぼうれいの様な態勢たいせいに、少年の様に純粋じゅんすいひとみでその看板を確認する。


「草刈り…薬草採取…木の伐採…お花の採取…ウサギの討伐……近所のおばあさんのお手伝い………」


 高木は数刻すうびょうの間沈黙を続け、やがて――


「……ちがぁぁうだろぉぉぉっぉ!!!!!!」


 高木は依頼の内容を確認し、そう叫ぶ。


「もっと…こう…なんかさぁ!!モンスター討伐だぁとか!!ドラゴンがどうのこうのだとかさぁ!!いろいろあるだろ!!なんでこんな、誰でもできるようなのしかないんだよ!!」


 高木には知能と共に倫理観りんりかん欠如けつじょしているのだろうか。本当に失礼な発言である。


 高木のこの発言により、ギルド内の空気がガラッと重くなる。そして中央の酒場のような場所で座っていた、ガラの悪そうなゴリマッチョの、いかにも冒険者という風貌ふうぼうのおっさんから。


「おいおいアンタよぉ、なんでそんな危険な任務を、こんな辺境へんきょうの場所のギルドでやらなきゃいけねぇんだよ。生憎あいにくな、今のマクノ村は平和なもんでな、危険なモンスターだとか、ましてやドラゴンなんかいるわけねぇだろうが!!」


 おっさんの発言に高木は、失望していたような表情から少し口角を歪め――


「じゃあ、あんたのその筋肉は見た目だけってわけかな?wそんな見た目してて、森とかで薬草をとったり、近所のおばさんの手伝いだったりしてるわけ?w」


 つらつらと挑発的ちょうはつてきな発言を、目の前の熟練の冒険者のようなおっさんに突き付けていく。


(あれ?なんで俺こんな怒ってんだ?)


「……ぐっ…っならよぉ!!おれと戦ってみるか?お前がそこまで戦いてぇってんなら、この俺が相手になってやるよ!!」


「え?…いやそこまd」

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