第15話 大きな魔術(罪)と代償

 「この規模の魔術だ。それ相応の代償がいる。お前も気が付いているだろう。アルガルダ。」

「あぁ、代償は…」

「「能力持ちの血縁者の魂」」

「…どこまで行っても腐ってるんだな。この気狂いは。残されてるソフィア様が可哀想だ。死神、ソフィア様はその事を知っているのか?」

「あぁ、だから…」

「私も来ました。」

「!?」

 ルインの後から現れるソフィア。そこに驚きを隠せないクレネ。戦場に立つ者ならわかる。いくら能力者だろうと何であろうと戦場では戦えない者から死んでいく。ここで最も未熟なのはソフィアであり、最初の犠牲者になりかねないと言うことに。そしてそれを察したルイン。


「安心しろ。俺がいる限り起こり得る最悪は起こらない。」

「…流石死神だな。その余裕と自信は底知れぬ実力からか?」

「自信というものは最低限持っているに越したことはない。慢心に繋がらなければそれは時として圧倒的な矛となり盾のなる。」

「説得力のある言葉だ…が、俺はそうもいかないんだ。」

「ねぇ…質問いいかしら?」

「質問するのは個人の自由だがその慣れない喋り方をそろそろやめろ。窮屈でたまらん。」

「何で私がこの喋り方嫌いなこと知ってるの!?」

「見たらわかる。」

「えー…」

「はぁ…質問はいいのか?」

「あぁ!そうだった!何でこんなに無防備に話してるのに誰も攻撃してこないの?」

「アルガルダ。説明してやれ。」

「へいへい…今、俺のぉ能力で王様たちはぁなぁ。生命力を吸われてるんんだよなぁ。だぁからぁ下手に動いてぇ?減らせないわけぇでぇ?」

「…まぁ取り敢えずこの隙に大規模祭壇魔法…お前の親族を縛り付けてる呪いの魔法を解くか。…アルガルダ、お前はソフィアと一緒に壊してこい。俺は少し仕事ができた。」

「そらぁ…「僕の相手を買って出るなんてほんとに酷な方だ。」…やっぱりかぁ…てめぇかぁ。」

 アルガルダからは憤怒と悲哀、そして懐かしさの念をクレネは感じ取っていた。それは契約者だからなのか雰囲気なのかはわからないが確かに感じたものだった。そしてアルガルダがその感情を向けた声の主は全身を黒のローブで包んだ赤眼黒髪の青年。半壊している城のシャンデリアに座ってその場の者全てを見下している。


「久し方ぶりだな。ネオン。」

「ひさしぶりだね。残虐な騎士擬き。まだ付けてたんだね。その騎士団のエンブレム。それを見るだけで僕の怒りは何度でも蘇る…よ!!」

 シャンデリアから飛んで降りたネオンは剣でルインを襲う。しかしそれをどこから出したのかわからない剣で防ぐルイン。


「アルガルダ。行け。」

「おおぅよ。」

 この短い会話の内に意図を理解したアルガルダはクレネとソフィアの手を引いてその場を走り去る。


「ねぇ…ルインは大丈夫かな?」

「俺はあの騎士なら問題ないと思いますよ。あの騎士の強さは身を持って理解したつもりです。あの化け物(騎士)に勝てる可能性のある者はそういないでしょう。」

「…いやぁ…俺はぁそれよりも心配なもんがぁ、あるけどなぁ。姫さんよぉ、あんたはぁ魔術陣の破壊にぃ行ってきなぁ。壊し方はぁ…聞いてるだろぉ?」

「うん、わかった。2人はどうするの?」

「俺とこいつは城の中の兵隊を潰して回る。」

「…うん、気をつけてね。」

 ソフィアが走って駆けていくのを後ろ目にクレネとアルガルダは話す。


「姫さんやぁあの騎士のことがぁ気になるかぁ?」

「姫様は強くなられた。あの後ろ姿を見て心配してやるのは野暮だろう…それよりも…あの死神のことだ。」

「あいつがぁ負けるとぉ?思ってんのかぁ?」

「そうじゃない…あれは…あいつらは何者なんだ。あの強さと異質さが世界に知られていないのは明らかにおかしいことだ。やつらは…」

「あいっつらはぁもともとぉ神を殺すぅー為の騎士団にいたんだぁよぉ。訳あってぇ騎士団はぁ潰れたがぁよぉ…良いぃ騎士団だったんだよなぁ…。」

「と言うことはお前も…」

「いたさぁ…お前も知ってるだろぉ?俺のぉ国崩しの話をよぉ?」

「だがそれは…」

「そぉしてなぁ…多分だぁがぁ団長たちはぁ…記憶が欠けていやがる。そりゃぁああいつも殺したくなるわぁな。」

「…その騎士団で何があった…何故死神は記憶を無くした。」

「多分だがあいつらがぁ記憶をなくしたんはぁなぁ…」


 王城とは国王、並びにその国の力を具現化したものに等しい。そこは高貴で崇高で無ければならない。火種は言の葉にのみ乗せることを許される。が、冷徹で冷酷な死神たちの戦場に成れば一度その火種は収まりが効かぬ死地となる。象徴されるは高貴さや崇高さではなく世界一面を覆い尽くすほどの…


「破壊だ!!」

 剣の雨。そう形容せずに何と形容できようかと言う程の剣の雨がルインを襲う。そしてそれを軽々と剣で流すルイン。


「落ち着けネオン。他の人間を巻き込むことになるぞ。」

「まだ騎士団長気取りか!僕たちを捨てたくせに!」

「捨ててなどいない。俺がお前たちを捨てるなどあるはずが無い。」

「…やっぱり記憶…いやわ人格か?」

「何を言っている?」

「気にしないで。それよりいいの?王様たち逃さなくて。」

「お前の計画には必要な駒なんだろう?お前は殺さない。」

「…ずるい人だね。ほんと、に!」

 再び剣を交えんと襲ってくるネオン。


「「二段目 権能解放 」」


 互いに開放される権能。初撃を仕掛けたのは…


ネオンだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦姫の凱旋 PCぶっ壊れ太郎 @888885

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ