第6話 地獄の一夜
ルインが行ってから10分くらいたったかな。テントの外は皆が番を交代交代でやってくれてる。でも流石に魔境という環境は怖いよね。さてもうそろそろご飯の時間かな。
そう思いテントの外に出たソフィアは目を見開いた。
「囲えー!!」
「姫様の方には絶対に行かせるな!!」
「くそっ!攻撃が効かねぇ!何なんだよ!こいつはよぉ!」
『きゃきゃきゃきゃきゃ!!』
複数の兵士が燃え、枯れ、凍死し、突刺され、投げ飛ばされている。兵士達が囲うその中心には全身黒い1つ目の怪物が居た。人間の形を模しているが模しているだけ。全身黒の1つ目の化け物。そいつが笑いながら次々に兵士を倒していく。ソフィアの中で寒気がした。そして怒りが湧いてきた。兵士達を殺して遊ぶその様に。
「固有能力解禁 生命盤樹。」
「うぉぉぉぉぉ!」
「押し切れ!このまま数で潰せ!」
「あの男が来るまで耐えるんだ!」
「姫を守れ!」
『きゃきゃきゃきゃきゃ!!』
「植物よ。」
「殺れ!」
「魔法を使われようと構うな!」
「近距離戦で魔法部隊の為の時間を稼げ!」
「我らの希望を守り切るんだ!」
『きゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃきゃ!!』
「私に生きる為の力を!!
魔呪性大花 カリアドリティア!」
私の仲間を!戦友を!居所を!これ以上壊すな!
固有能力を解禁したソフィアの周りには大きな紫色の毒々しい花が咲き始める。そして…
「花たちよ。私の敵を殺して。」
その言葉を合図に巨大花は黒い1つ目に襲い掛かる。
『きゃきゃ!きゃ!!』
黒い1つ目は炎の玉、氷の礫、岩の礫、木の槍、を連続で出し撃つ続ける。次第に土煙がたち始め花の動く音が聞こえなくなり撃つのをやめる。しかし黒い1つ目はここで初めて驚きの表情を見せた。それは目の前の自分を襲おうとしてくる花が大きくなり更に傷一つもついていないからだ。
「カリアドリティアは邪神のばら撒いた使徒の呪いによって腐敗したクロリスと言う回復薬のもととなる花なの。一見すると使えなくなった回復薬の花だけども、その特性は魔力を吸い取る事にある。」
カリアドリティアは魔力を吸い取る。その言葉の意味がわかったのか黒い1つ目は魔法を撃つ構えをやめた。それを見たソフィアは花に黒い1つ目を殺させようとする。しかし…
「え?」
一瞬。僅か1秒も無い内に距離を詰められていた。その間に飛び散った石や木片でソフィアの白い肌に無数の傷がつく。しかしソフィアにそんな事を考える余裕は無かった。
え?嘘。こんなに速いの!?なんか…なんか無いの!?こいつに勝つ方法は…!
そう思いながらソフィアは目を瞑った。攻撃が来るのを覚悟して。しかし自分の身体に痛みが来ない。不思議に思い目を開けるとそこには全身黒の服と銀髪を靡かせた男が立っていた。
「この展開好きなのか?お前。2回目だぞ?」
「ルイン…っ、」
ソフィアが今にも泣きそうな目と声でその者の名を呼んだ。
→ルインSide
もう戦闘は始まってる…。間に合わなかったか。あいつは…まだ生きてるな。
「…カリアドリティア!」
権能…出現する植物の種類選択と性質までも理解していたか。素の才能だな。…いやそれとも、…。今はいいそろそろ助けねーとあいつ死ぬな。
「この展開好きなのか?お前。2回目だぞ?」
「ルイン…っ、」
「何泣きそうになってんだよ。泣くなよ?泣かれると俺が対処に困る。ちょっと下がってろ。」
「ルイン…みんなが…兵士のみんなが!」
「わぁーたからその分も潰してきてやる。」
クソムシは…、俺を警戒して無闇に飛び込んでは来ないな。…よし、あのバカは下がったな。正直、権能が何処まで使え無くなってるかわかんねー以上、慎重に行くか。
「害虫。俺の仲間が世話になったな。お前には一度礼を言おうと思っていたんだ。受け取ってくれるな?」
「権能解放 魂骸我兵」
「来い。俺の兵士達よ。戦争だ。暴れろ…。抗え。狂え!乱舞しろ!!行くぞ!!!死の象徴よ!!!!」
俺は両手を広げ天を仰ぐ。それと同時に俺の後ろの空間が歪む。そしてその歪んだ空間から骸の兵士達が無数に現れる。俺の骸の兵士達はクソムシに襲いかかる。
『ぎゃぎゃぎゃきゃ!』
兵士達の大群により森の上空に放り出される。その上を俺は走ってクソムシの後ろに立ち回る。そして槍で人間で言う心臓の辺りに突き刺さす。
『ぎゃーーーーーーー!!!!!!』
断末魔と共に虫は魔法で周りを黒い炎で燃やし尽くす。骸の兵士達は燃やされる。
ま、俺の兵隊達は攻撃された所で死ぬ事は愚かダメージ受けねーんだけど。
虫はそれを見て燃やすのを諦めたのか槍を自ら引き抜こうとする。
いやぐっさり刺さってるんだからそう簡単に抜けねーよ。仕上げと行くか。
「我が兵士達よ。潰…!おい!クソムシ!」
このクソムシ!身体を小さい虫の集まりに変えれんのか!どこの吸血鬼だよ!前はこんなの使わなかったじゃねーかよ!くそが!
「骸の兵士達よ。あれをやるぞ。俺のもとに来い。」
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