第4話 固有能力

「ごめんね。レオン盗み聞きしちゃって。…ん?あれ?ルインの方が良いのかな?」

「そこはどうでもいい。それより何しに来た。」

「いや、流石に兵士達が倒れててこっちで物音したら何かあったと思うでしょ!?」

「要は好奇心と多少の蛮勇を胸にここまでやってきた…と?」

 その問いかけに対しソフィアは顔を赤くし答える。


「蛮勇じゃない!でも…その…好奇心は…否定できないかな。」

「いや自力で何とかできないやつが状況も理解せず敵軍に単身乗り込みはそうそう蛮勇と呼べるものが無いと出来ないだろ。」

「もう状況理解してるから。」

「俺とあの黒いのの話を聞いてたからだろ?」

「うっ、…」

 流石にそれ言われると返せないよ…。でも今はそれ以上に聞かなきゃいけないことがある。


「ねー、レオン。ううん、ルイン。どうして名前を隠してたの?それに…、」

 さっきの話が本当なら私はどうして…、


「はぁー…、まず訂正するが俺の名前はルインでも無い。」

「え?でもさっき…、」

「あれはルインは愛称だ。本当の名前は無闇矢鱈に言いふらしちゃいけないっていう決まりがあってな。だから…まぁ、そうだな…、ルインと呼んでくれ。」

「それでも偽名に偽名重ねる必要はないでしょ?」

「ルインは思い入れのある名なんだよ。だからこの名前だけは特別なんだ。」

「わかった。もうそれでいいよ。…それでルイン。もう一つ聞きたいことがあるの。」

「なんでお前がこの魔導具の影響を受けても立っていられるか、って事か?」

「うん。さっきの話だとその古代の機械クラリスの影響を受けない上位存在ですら無いでしょ?私。もしかしてルインみたいな特異た、「それはお前の権能だ。」…え?」

「お前の権能、それは植物を扱う権能だ。故にあの呪具は効かなかった。」

「植物から得た呪いと力だから…、」

「そうだ、そしてお前今まで権能使えなかったろ?」

「ねー、さっきから気になってたんだけど、その権能って固有能力の事?」

「固有能力?なんだそれは?」

「えーと、ね、ルインの所では権能って呼ばれてたかも知れないんだけど、こっちでは固有能力って言っててね。極稀に魔法とは別に人にあらわれるその人だけの能力。それが固有能力。」

「まぁ、認識としてはだいたいあってはいるな。」

「そう、それでどうして私が固有能力使えないってわかったの?」

「お前の権能は植物に関する事ならほぼなんでもできる。しかし発動するにはぜったいじょうけんがある。それは生命の尊さを知り、死への覚悟を決めたときだ。」

 確かにそれなら固有能力を使えなかったことに納得がいくし、あの壺の呪いが効かないのも説明がつく。でも…、


「なんで私の固有能力の事ルインが知ってるの?」

 そこが一番の謎。私ですら知らなかった固有能力について私以上に詳しいし、普通はわからないことまで知ってる。普通は有り得ないし、相手の固有能力を知る方法があったとしたら国家間の均衡にも関わる。そこはちゃんと聞かないと。


「お前と同じ権能の持ち主が昔居てな。仲が良かったから色々権能については聞いてるんだ。…まぁ、もう居ないけど。」

「えっと…ごめんね。その…辛いこと聞いて。」

「いいよ。別にそれよりお前これからどーすんの?」

「ん?どうするって?」

「国に戻るってたけど、もう朝だぞ?」

「ん?え?あっ!」

 気が付くと辺りは明るくなっており既に太陽が出て来ていた。


「私、兵士のみんな起こしてくる!多分もう起きるよね?」

「呪いは解除したからな。」

「うん。ありがとね!ところでみんなの前ではなんて呼べば良い?」

「お前、仲間を信用してるか?」

「うん。当たり前でしょ!」

「そうか。ならルインの方で良い。」

「え?良いの?」

「少なくとも俺はお前を信用に足る人物だと認識した。そんなお前の信用した奴を俺が信用しないのは筋が違うと思ってな。」

「うん、わかった。そう言う事なら遠慮なく。うーん、と、広場に三十分後集合ね!また後で!」

「おう。」

 そう言うとソフィアはテントの方へと走っていく。それを見たルインはソフィアに気付かれない様に壺に近寄りそして壺を足で蹴り壊した。


 そしてゆっくりと広場へ向かう。


「これより祖国へと帰還する!敵兵による襲撃があるかもしれないが気を引き締めて行動するように!それと皆も知っての通り今日より国に着くまでの間はレオン改めルインも行動を共にする事になりました。」

「ソフィアんとこの兵隊ども昨日は世話になったな。ルインだ。まぁ、俺から見たらあんたらは怪しい集団だからな。偽名使わせて貰ってた。さて、ここから何日かかるか知らんが着くまでの間は守ってやるから気を張り過ぎんなよ?倒れるぞ?」

 それに対して兵士達は逞しく心強い声をあげる。


「守られてばっかな程俺等は弱くねーぞ!」

「あんたの度肝抜いてやんよ!」

「戦場の借りは戦場で返すのが俺たちだ!」

「あんた程強くはねーがこっちも意地があんだよ!通常の護衛は任せろ!」

 それを聞くとルインとソフィアは顔を見合わせて笑みを浮かべる。


「頼もしいな。あんたん所の兵隊達は。あんたより蛮勇強いんじゃないか?」

「私のは蛮勇じゃないよ。それと、もし私のが蛮勇なら間違い無く彼等からの受け売りね。」

「ははっ、違いねーな。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る