第2話 騎士
私が騎士と会ったのは2年前の夏。東北での戦争でだった。王族史上初の落ちこぼれと呼ばれた私は自由の国の第2王女なのにも関わらず政略結婚により輪国に飛ばされるか戦争で指揮を執るかを迫られていた。私だって女の子。両方嫌だったけど運命の相手と言うものを信じていた。だから愛の無い結婚より血塗られた戦争を取った。私は頭は良かった。私は頭を目一杯使った。そして戦争は終戦を迎えようとしていた中…
「報告します。後方800メートル先に敵影を確認!完全に帰路を断たれました!」
「続けて悲報!ログ第一副団長率いる分隊が前線にて敗れ前線が崩壊致しました。この拠点へ来るのも時間の問題です!王女様命令を!」
ここに来て相手に勢いが出始めた!まずいこのままではこの拠点の兵が…こうなったら…
「交渉旗を立ててください。私が交渉してきます。兵の皆さんは急いで準備を!」
「…貴女様がここで散る覚悟なのであれば我々も貴女様に着いて逝きます!短い間でしたが我々は確かに貴女様の事を慕っていました。その忠誠に偽りが無いことは貴女様も理解なされているはずです。」
「でも!私一人の命で兵が皆無事に生き残れるのであれば私は!」
「貴女様が我儘を通すと言うのであれば我々も我儘を通させていただきます。」
「レン第2副団長…。なら最後まで祖国の為に抗いましょう!無駄死になんてしてたまるもんですか!」
温室育ちの落ちこぼれ姫とは思えないその言葉と風格に騎士たちも姿勢を整える。
『我らが命は祖国の為に!』
騎士達とソフィアはそう叫ぶと共に拠点を捨て前線へ馬にまたがり走って行く。そして再びソフィアは叫ぶ。
「一点集中正面突破を目的としてこれより全軍突撃!」
正面突破をはかるソフィアたち。敵軍は全力で阻止しに来る。ソフィアたちは奮闘した。しかし混戦、乱戦の中周りの騎士たちが次々と倒されていく。
こんな所で死ぬ訳にはいかないんだ!ママとの約束こんな所で破る訳には…
しかしソフィアもついに馬から落ち地面に崩れ落ちる。目の前には槍を自分に突き刺そうとする敵兵。
「敵将発見!覚悟!」
あぁ、私死ぬんだ。ママ約束守れなかったごめんね。兵士の皆ごめんね。ごめんね。信じてくれたのに…。私最後くらい恋してみたかったなー…。
目を瞑り、そう心の中で後悔していたソフィア。しかし一向に痛みは来ない。ソフィアは不思議に思い目を恐る恐る開けて見る。するとそこには全身黒色の少年が立っていた。
「死を覚悟するにはまだ早いぞー。女。」
黒い少年はそう言うと手を差し伸べる。ソフィアはその手を取りその場で起き上がった。ソフィアは驚きでしばしの間思考が停止した。
「おーい、女?」
「はっ、はい!」
「この白い鎧がお前らで黒い鎧が敵軍か?」
「うん。そうだけど…」
「待ってろ。殺してきてやる。」
「え?」
その返事にソフィアは思わず声が出た。
「なんだその反応は。敵兵に情掛けてんの?」
「いやそうじゃなくて…この人数一人で?」
「ん?、あぁ。数を揃えただけの有象無象に負けると思われてんのか?心外だな。俺がこんなゴミムシ共に負けるわけねーだろ。」
そう言うと少年は手に持ってた槍を構え姿を消す。そして再度目の前に戻って来た。
「敵兵は全滅させた。後ろの奴も殺したほうが良いか?」
「いや、先ずは逃げたいからいいよ。それより敵兵を倒したって…」
恐る恐る少年の後ろを見るソフィア。そこには自軍の兵士が立ち尽くし敵兵の上半身が例外無く消し飛んでいると言う信じられない光景があった。
「す、凄い…。凄いね。君。名前は?」
「レオン。お前は?」
「ソフィア。…ソフィア・フォン・レグルシス。」
「良い名前だな。ソフィア。…所でソフィア。部下に撤退の命令を下さなくて良いのか?」
「あっ!忘れてた!全軍撤退!」
『はっ!』
そうして戦場を後にしたソフィア達。敵軍もその異様な光景に追うのを断念した様だった。そして歩いてレグルシス王国の国境沿いにある小さな町に辿り着いた。
「全軍この町の協会前の広場に泊まる許可が下りた。即席テントと風呂、そして食事の準備をしろ!」
そう指示を下し暫く兵を見守った後に出来たテントに入っていく。そして息をつくソフィア。しかしテントの前から声が聞こえる。
「ソフィア様!レオンなる者を連れて来ました!」
「通せ。」
そう言うとテントの幕が開き男の兵とレオンが入ってくる。そしてソフィアは目配りをして男の兵を下がらせる。そして兵が出て行くのを見終えると同時に頭を下げる。
「戦場では感謝する。この恩は決して忘れない。」
「気にすんな。もともと俺が野宿してたところを取られたから殺して回ってたんだ。」
「えー、そんなことで?」
「いや、そりゃー目の前で剣突き立てられてそこどけろーって言われたらキレるだろ。」
「まぁ、頭には来るけど…」
若干引くソフィアを前にレオンが話しかける。
「んで、どーして俺はここまで連れてこられて呼び出されたんだ?」
「あぁ、ごめんね。本題に入るね。連れてきた理由はお父様に貴方の事を話す為。多分口で言うだけじゃ信じられないと思うから。それと今呼び出した理由はお父様に会うその前の確認ね。」
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