アリス対フェルミの決闘

(とうとう始まるんだ。この憧れの人との戦いが!たのしみだなあ。、、、ん、てか剣聖様、剣持ってないよね)


と、アリスが思っていると、ふとフェルミが剣も持たずに構えていた両手を天に掲げ、呪文を詠唱し始めた。


「聖なる力よ、正義のため、平和のため、争いなく、剣なく、世界を導くためにわがもとに聖剣をもたらせ。セイクリッド=デア=マキシマム!!!!」



詠唱を終えるとともにふと曇り空に晴れ間が表れ、そこから差してきた光がフェルミの体を覆い始めた。


数秒して全身が光に包まれたのち、掲げていた手に集まっていた光が剣の形を形成し始めた。



さらに数秒後、その剣が形成され切ると、瞼を閉じてもなお目を突き刺すほどのまばゆい光が円形闘技場全体に広がった。



その光が収まるころ、アリスの目の前にはいわゆる大剣と呼ばれるサイズの聖剣を下段に構えたフェルミが立っていた。


「お待たせ、さあどこからでもかかっておいで。」



逡巡の後、フェルミよりはるかに前から前の姿勢をとっていたアリスは目にもとまらぬ速さで駆け出し、とっさに防ぎの姿勢に入ろうとするフェルミに牽制をかけ、剣がぶつかり合った直後に刃先を滑らせ、その切っ先をフェルミの顔面へと突きつけようとした。



しかし相手は聖剣を誰よりも使いこなし前線で戦ってきた剣聖である。


アリスの攻撃はそう簡単に届くわけもなく、フェルミが体験を軸から回転させたことにより、剣ははじかれてしまった。


「隙あり」


同時に体のバランスも崩し、大きく体をのけぞらせたアリスは生まれてしまった隙を突かれ、危うくフェルミの突きを食らってしまうところだったがしかし、とっさに背中から引き抜いた鞘でその突きを受け流した。


そして、なおも背中から倒れこみ続ける体を起こすべくアリスはバク宙をし、着地した後にさらに数歩下がり、次の攻撃を繰り出すために距離をとった。



「やるね、その動き。並みの剣士であれば今の動きを見切れず、瞬殺だっただろうね。動きを見抜けたとして受け流すのはそれよりはるかに強い奴じゃなきゃ成しえない。」


「剣聖様こそ強い、、」


「まだ余裕があるようだね?」


「ええ、もちろんですとも!」



アリスはそう叫ぶと再び元の構えに戻ると、今度は少し回転をかけて駆け出し、宙を飛んで着地をするたびに地をけって回転に磨きをかけながら突進し、もはや残像さえ見える剣をそのままの勢いでフェルミへと叩きつけた。


これに対してフェルミは再び剣を回転させて攻撃を弾こうとするがかなわず、逆に剣を弾かれ、剣を落としてしまった。



それを当然のように隙だとにらんだアリスはさらに攻撃を仕掛けようと動くが、これはフェルミのトラップであり、じつは姿勢を崩してなどいないし聖剣も片手でしっかりと握っており、加速して突撃をするアリスを迎え撃とうと、とっさに動いたフェルミにより、空中で無防備な姿でいたアリスは場外へと吹き飛ばされてしまった。



しかしここでアリスは慌てることなく思考していた。


(な、そう来るのか。さすがは剣聖様。そう来なくっちゃね。とはいえこのままだと場外に落ちて負けてしまう。というか結界にあたって体がばらばらになってしまうよ。悠長に考えている暇はないよね。)


「ウィンド‼」


そう叫ぶと、強制的に背中からふきとばされ、あとどれくらいで結界にぶつかるかもわからないという状況の中、アリスが発動した風の魔法によりアリスの体は物理法則に反するようにして飛んできた元の場所へと戻り始めた。


その中でアリスは今度は剣ではなくこぶしに力を溜め始めた。



「ずいぶんトリッキーな動きをするもんだと思った今度はこぶしで突っ込んでくるのかい。本当に面白い子だね。ますます興味がわいてきたよ。さあ、再び反撃だ。」



アリスの常識はずれな動きに、男気を出したフェルミも聖剣から手を放しその場に直立不動になった。


そして背筋を伸ばし、利き手である右手を腰に当てると左手を手刀の形にして構えをとった。



その異様な光景に、観客席で試合を見ていた生徒たちは「流石の剣聖様だってあの攻撃はさばけないだろう」と考えた。


その時、すさまじい魔力を感じ取り、こっそり見に来ていた国王もまた息をのんだ。


しかしこちらはフェルミが何をするかをわかっており、そのうえで「また恐ろしいことを、、」と憐みの目を向けていたのだが。


その理由はすぐに思い知らされることになる。



フェルミとアリスがぶつかる寸前、フェルミが振りかざした手刀から放たれた風が鋭い刃になってアリスを襲うと、そのまま刃はアリスの左腕を肩口から切り落とし、アリスを地に倒れ伏せさせた。


少なくともフェルミは決着がついたと思っていたし、なんならこの場にいた全員がアリスの死を悟り、目を背けようとしたとき、驚きのことが起きた。



勝利を悟り、背を向けたまま語りだすフェルミの背後でゆっくりと立ち上がり始めたのだ。


しかし背後に気づかないフェルミはそのまま語り続ける。


「アリス君、今の動きはかなり良かったね。空中で見動くをとれない中とっさの起点だ体の向きを変えて風の初級魔法を項羽死して突撃してくるとは。きみは強いだけでなく頭もよいんだな。正直、これまでの人生で君のような人間には出会ったことがない。君がもっと強かったらぜひとも一生の富雄として生きていきたかったが死んでしまってはできないな。さあ、弔いの準備を、、、」



そこまで行ったところで振り返ったフェルミは思わず体が固まる。


なんせ、死んだと思っていた相手が震える足で踏ん張り、まだ俺は戦えるぞと言わんばかりに剣を構えてこちらを笑顔で見つめていたからだ。



「おいおい、君はそこまで強いんだい。もはや驚きを超えてあきれるよ腕を切り離してしまったのはすまなかったね。正直ここまで強いとは思っていなかったから冷静に反撃の方法を思いつけなくて残酷な方法で致命傷を与えてしまった。その傷、今ならまだ治せるけれど、それよりもまだ戦う気でいるのかい?僕はいいけれど<もっと時間がたてば君は腕を一生失ったまま生きることになるかもしれないんだぞ!」



「剣聖様、それでもかまいません。その証拠にほら、僕の体は腕を失ってもなお戦いたくてうずうずしてほら、こうやって剣を握って立ち上がってる。僕は、今最高に興奮しています。次はどんな攻撃を出すのか、どんな力で迫ってくるのか、楽しみで仕方ないんです。だから!」


「だめだ!!!!!」


「へ?」


突如として


会話に乱入してきたのはあろうことか、国王その人だった。


「なぜですか?僕の何が悪いんですか?」


「何もかもだ!貴様、自分の命を捨てるのだと言ってるのに変わりはないんだぞ!これ以上の試合続行なんぞみとめられん!」


「まあまあ、国王様、そんなにきつく言わなくてもよろしいではありませんか。これは彼の意志の表れです。そんなに言うのでしたらこの試合を残り一撃で終わらせるというのはいかがですか?お互いに。」


「ならまあいいが、、、いや、、、いいだろう。おい少年!国王の命令に従え!すでにこの試合は決着がついているとも思えるが、剣聖フェルミの名に免じて一度だけチャンスを与える!よいか!全力でぶつかれ!後のことは心配しなくとも良い!なんせ腕の良い治癒師がいるからな。腕の一本や二本、難なくつなげてやるさ!」


これにアリスは感極まり、涙を流した


「ありがとうございます!!!全力で戦わせていただきます!!!剣聖様、決着を付けましょう!」


「フフ、こちらこそありがとう。最後の本気を見せようか。じゃあ、やろう!」



その唐突なやり取り、結論に至るまで何も口出しできないでいた生徒たちも、その二人の言葉に堰を切るようにして大声で歓声を上げた。そして、目の前で構えを取り、気を高めていく二人に会場はまた静けさに包まれたのであった。



((さあ、最後は渾身の直線突進だ。))



お互いの考えは、偶然にも一致していた。


これにより、二人の男による一騎打ちの戦いが幕を上げた。



_________________________




王立学園内訓練場 第一円形闘技場の真ん中。


エストビアが建国されてから間もなく、20年余りで建設された王立学園の中で最大サイズを誇るこの闘技場は建国から500年、無数の生徒が剣を交え、魔術を極め、現代に英雄として言い伝えられてきた人物は多くがこの学園から旅立っていった。


今、その闘技場の中心にて新たな英雄が生まれようとしていた。


方や、剣術を自在に操り前線で戦い、あらゆる修羅を乗り越えてきた剣聖。


方や、そんな剣聖に対し、片腕を失いながらも剣聖と渡り合う齢七歳の少年。



そんな二人がこの戦いの決着をつけようと、再び剣を構えていた





アリスは、左腕を失ったために構え方は限られていたため、最初の、やはり異様な体勢で構えを取り、


視線の先にいるフェルミを見据える



対するフェルミはアリスに負けじと奇妙な姿勢で、


身長180はある体調よりも長い両手剣、もとい体験であるとも見まがう剣をあろうことか東の国につ伝わる居合いの構えでそれを構えている


誰から見たって重厚感を感じさせるそれを軽々と構えるその姿は限りなく異様であるが、こうして二人だけの世界となったここにそんな常識は通じないのである。



二人が視線をぶつけ合うその時間は一秒が一時間と思えるほど重く長いものであった。



その時が今動き出した。



動き出したのは同時だった。



アリスはこれまでとは比べ物にならないほどの速さで駆け出しながら剣を振りぬき、一撃でフェルミを切り伏せんとする、アリス自身の体重全てを乗せた斬撃を放つ。



フェルミはまるでそれが短剣であるかと勘違いするほどに素早く大剣を抜き放ち、向かってくるアリスを切り伏せようとする斬撃を放つ。



おたがいの剣がぶつかり合う。


「うわあああああああ!」


「これが剣聖様の本気の攻撃だってのかよ!」


「こんなの、二人とも人間の域をとうに抜け出してるじゃありませんか!」


「フェルミ、さすがにやりすぎじゃ!」


「こおおおおおおおおおおおおおおレが剣聖の力かああああああああ!」



その瞬間の力はもはや誰にも受け止めきることが出来ないほどに強烈であり、興奮しながらも生徒たちを守ろうとオルト・パラが結界を増やすが、幾重にも重ねているというのにそれらはすぐに破壊されてしまった。



その一撃は核兵器の爆発といっても過言でないほどであり、衝撃波はすでにこの世界を一周したであろう。


今われらの上空にてその衝撃波がぶつかり、フェルミとアリスがぶつかり合った直後のものとはまた比べものにならないほどの力が生まれ、とてつもない爆風がその場の全員を襲った。



「ぬおおおおおおおお!俺の結界が簡単に破られるとは!!!!俺もまだまだ修行が必要ってことかよ!!!!!うがががががああああああああ!耐えろおおおお!」



そうして最後の一撃の余波を耐えしのぎ続けた後、


この場にいた全員が驚きの光景を見ることになる。



二つの剣戟がぶつかり合い、核戦争でも起きたのかと思わせた一騎打ちは、地面を大きくえぐり飛ばし、円形闘技場はほとんど崩壊し、その中心に立っていたのはなんとアリスであったのだ。



「な、、、まさかこんなことが、、、」


そんな中最初に声を上げたのは審判役も買っていた国王だった。


「こ、こんなことになるとはな。し、、勝者!アルヴェ―ヌ・フォン・アリス!」



そう、この戦いを制したのはなんと剣聖フェルミではなく、まだ入学して程ないアリスだったのだ。


しかしこの事実は危うく国を滅ぼしかねないとして、隠されたのであった。



この後二人は治癒を受けて回復し、腕も元通りになり、アリスは晴れてフェルミの右腕になり、疎にお日の晩からフェルミの豪邸で生活を始めるのであった。



詳しい話はまた今度。




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