第2話 おはようございます!
「彦麻呂-! なんやねん、このドレスは? 庶民に対する嫌味か? って、なんでお前もスーツに着替えてるねん!」
「この店、一応、ネクタイとドレスって決まってるから」
「何? このピアスとネックレスは?」
「あ、ドレスも含めてみんな千春さんにあげるよ」
「ピアスとネックレスはありがたいけど、ドレスはもう一生着ないと思うで」
「また、食事に行くときに着たらいいじゃん」
「あんたと食事するのは最初で最後やで」
「まあ、座って食事してみてよ、美味しいから」
「なんやこれは、めっちゃ美味しい~♪」
「美味しいでしょう? 良かった。喜んでもらえて」
「彦麻呂、あんたはなかなかやり手やな、この店は気に入ったわ」
「来たくなったら、いつでも言ってよ」
「いや、それはアカン。今日だけや」
「彦麻呂、帰りはどこかでジャージに着替えさせてくれ! こんなドレスを着てたら家に帰られへんわ!」
彦麻呂は私をアパートまで送ってくれた。
「ほな、元気でなー!」
「いや、僕達は運命の糸で繋がっているから、また会えると思うよ」
「はいはい、わかった、わかった」
車は去った。私は寂しいアパートに帰った。
翌朝、朝のホームルームで転校生が紹介された。勿論、この男だ。転校生と聞いてスグにわかった。
「今日から同じクラスになる金閣寺彦麻呂君だ!」
「金閣寺彦麻呂です! 東京から来ました! よろしくお願いします!」
「なんや東京から来たんかいな」
「標準語、なんか気取ってるみたいに感じるよなぁ」
「金閣寺君は、佐倉千春さんの横に座ってくれ」
「はい!」
「いやぁ、同じ学校の同じクラスになるなんて、奇遇だね。よろしく、千春さん」
「来たか……頭が痛いわぁ。それにしても、転校の手続きが早いな」
「そこは作者のさじ加減でどうにでもなるよ」
「ああ! ますます頭が痛いわぁ」
休み時間、友人の千夏と千秋が私の席までやって来た。勿論、彦麻呂に興味があるのだ。2人は彦麻呂を質問攻めにした。
「えー! 千春と知り合いなん?」
「千春、いつの間に-! 彼氏を作る時は3人一緒って言ってたのに-!」
「彼氏とちゃうわ。昨夜コンビニの前で会っただけや」
「でも、一緒に食事したんやろ?」
「あ、良かったら今日の夕食を3人一緒にどうですか?」
「マジ? 行く! 行く!」
「じゃあ、千春さん、千夏さん、千秋さん、今夜は3人を店に連れて行きますよ」
「やったー! 千春、私達も一緒やで」
「ああ、こいつとは二度と会うことは無いと思っていたのに」
昼休み。
「昼休みだよ、千春さん」
「そうやな、昼休みやな」
「昼ご飯はどうするの?」
「学食で食べるか、パンを買うか」
「じゃあ、学食へ連れて行ってよ」
「1人で行け!」
「学食がどこかわからないよ」
「探せ!」
「ヒドイよ、千春さん」
「そうやで、千春、ちょっと冷たいで。彦麻呂君、4人で学食に行こうや」
「はい、行きましょう!」
「今日はB定食ね」
「僕が全員分払うよ」
彦麻呂は1万円札を取り出した。
「両替が面倒臭いから、私が払う」
結局、私が全員分を払った。“お釣りはいらない”と言いつつ彦麻呂が1万円札を出して来た。迷ったが、私は受け取った。100万円を持ち歩いている奴だ。その内の1枚くらいもらってもいいだろう。
授業が終わると、彦麻呂の車に女子3人が乗り込んだ。そしてまた、高級服屋へ。私達3人はドレスを買ってもらった。
「私、昨日買ってもらったのがあるやんか」
「2着あってもいいじゃないか」
結局、私は青いドレスに決められた。千夏が黄色、千秋が赤のドレスだった。
「赤、青、黄色って信号機か?」
「いやぁ、皆さんよく似合ってますよ」
「なんか、胸元が強調されてる気がするんやけど」
「はい、胸元が強調されています」
「なんで?」
「僕が胸元が見えた方が嬉しいからです」
「お前の好みか? お前、スケベか!」
とりあえずビンタ。
「いやぁ、千夏さんのDカップも千秋さんのCカップも素敵だと思いますよ」
「なんでDってわかるの?」
「私もCって、それ当たってるんやけど」
「ははは、僕の目は誤魔化せませんよ」
「当てるな!」
もう1回ビンタしておく。
「さあ、お店に行きましょう!」
「美味しい!」
「千春、昨日、1人でこんな美味しい物を食べてたの?」
「皆さん、ネックレスもピアスもドレスも差し上げますから」
「マジ! ラッキー」
「彦麻呂君、千春のことが好きやろうけど、私達とも仲良くしてな」
「勿論です! 僕は千春さんのご友人の千夏さんと千秋さんと仲良くなりたいんですよ。これから、僕と千春さんが結ばれるように応援してください」
「する! する!」
「おーい、千夏、千秋、そいつの術中にはまったらアカンやんか」
「ねえ、彦麻呂君、私達にもセレブな男性を紹介してよ」
「僕の兄と弟を紹介するつもりです。兄は公麻呂で21歳、弟は歌麻呂で16歳」
「千秋は年下が好きやし、私は年上が好きやからちょうどええやんか」
「千夏さんも千秋さんも美人だから、兄も弟も喜ぶと思います」
「やったー! 千春のおかげやー! ありがとう、千春-!」
「千春、私、あなたのお姉ちゃんになるかも」
「なるな!」
「千春、私を妹やと思ってもええで」
「思うか! みんな彦麻呂のペースになってるやんか、アカンで」
「そして、千春さんのEカップは僕のものになります!」
「なるか!」
とりあえずビンタ。微笑む彦麻呂。
「あんた、なんでビンタされて笑ってるねん!」
「ビンタされるとき、千春さんの香水の香りがして心地いいんです」
「やっぱり変態やんか!」
今度は往復ビンタを喰らわせた。
「これでどうや!」
「おう、往復ビンタは新鮮ですね」
「あんたは、ほんまに……」
「何をしても無駄ですよ。僕はもう小春さんに惚れていますので、何をされても嬉しいんです。幾らでもビンタしてください。ほら、どうぞ」
パンパンパンパン!
とりあえずビンタの連打。やり過ぎた。彦麻呂の頬が腫れてしまった。ちょっとだけ申し訳無いと思ったが、何も言わずに私はそっぽを向いた。
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