大阪在住のちょっぴり不良の私と、東京から来たお坊ちゃま!
崔 梨遙(再)
第1話 はじめまして!
「何、ジロジロ見とんねん!」
それが最初の言葉だった。私は、コンビニの前でしゃがんで缶コーヒーを飲んでいた。そんな私をジロジロ見てくるブレザー姿の男に腹が立ったのだ。
「あ、ごめん、気を悪くしたかな? 不愉快にさせるつもりはなかったんだ」
「なんやねん、その標準語。関西に来たら関西弁で喋らんかい!」
「ごめん、今日、引っ越して来たばかりなんで、その……いろいろ準備不足なんだ」
「なんでジロジロ見てたんや? Tシャツにジャージのこの姿が珍しいんか? 女がコンビニの前にしゃがみこんだらアカンのか?」
「うん、新鮮さを感じるよ。TVみたいだ」
「お前、私のこと馬鹿にしてるやろ?」
「してないよ! それに珍しいからジロジロ見てたわけじゃないよ」
「ほな、なんでジロジロ見てたんや?」
「君がすごくキレイだから見とれていたんだよ」
「お前、お坊ちゃんっぽい割には女を口説くのは慣れてるんやな」
「慣れてないよ、こんな風に話しかけるのは今日が初めてだよ」
「要するに、私がキレイやからジロジロ見てたってことなんか?」
「うん! そうだよ」
「よし、わかった。わかったから、早よ帰れガキ」
「そんなこと言わないでよ、少しは話相手になってよ。隣に座ってもいいかな?」
「座るな、どうしても座りたいなら座席料をもらうぞ」
「幾ら?」
男が財布を出した。札でパンパンに膨れあがっている。
「お前、なんぼ持ってるねん?」
「100万くらいかな。払うよ、幾ら?」
「……金なんていらんよ」
「まあ、そう言わず1枚くらい受け取ってよ」
「……」
受け取ったら、男は私の横に座り込んだ。
「私の顔が気に入ったのか?」
「うん! でも、顔だけじゃないよ」
「顔以外やったら、どこが気に入ったんや?」
「胸! Tシャツでは隠しきれないよ、その胸は」
私は男にビンタした。
「痛~い!」
「どこ見とんねん」
「え? 全身を隅々まで見てるよ」
私はまた男にビンタした。
「お前は変態か!」
「健全だよ! 健全だからジロジロ見ちゃうんだよ」
「普通は見たくても見ないやろ! 我慢せい! 遠慮しろ!」
「僕は、そんな我慢はしない。見たいものは見る!」
またビンタ。
「だから、痛いって~」
「何を大声で言い切ってるねん、お前は」
「僕は、こう見えてもエロ本やAVは見まくっている! 本物の女性も見る!」
「18禁やろ!」
ビンタ。
「4月で18歳になってるよ」
「なんや、私と同い年か」
「お姉さん、名前を教えてよ。僕は彦麻呂」
「芸名か!」
ビンタ。
「本名だよ! 金閣寺彦麻呂っていう名前なんだよ」
「すげえ名前やな」
「お姉さんは?」
「千春。千に春と書いて、千春」
「千春さんに僕の特技を教えようか?」
「いきなり“千春さん”って呼ぶのも馴れ馴れしいような気もするけど……で、なんやねん、特技って」
「沢山エロ本やAVを見て研究したんだ、千春さんのスリーサイズを当てるよ」
「しょぼい特技やなぁ……」
「千春さんは、身長163センチ、90、58,88、Eカップだろう!」
「当てるな!」
とりあえずビンタ。
「当たったのにビンタなの?」
「当てられたら更にキモイわ」
「あ、お姉さんどこの高校?」
「北高、あんた、そのブレザーは成金学園やろ? もう会うことも無いやろな」
「千春さん、そう言わずに僕と付き合ってよ」
「なんでやねん、あんたみたいなお坊ちゃまと不良の私、釣り合わへんやろ」
「あ、千春さんって不良だったんだ」
「今頃気付いたんか、髪も茶髪を通り過ぎて金髪、っていうか黄色いやろ?」
「千春さんが不良なら、僕も不良になるよ!」
「あんたは不良になられへんわ」
私は立ち上がろうとした。彦麻呂が私を呼び止めた。
「待って! 一緒に食事しようよ!」
「せえへんわ」
「僕のお気に入りの店があるんだ、夕食だけでいいから付き合ってよ」
「……わかった、そこまで言うなら、あんたのお気に入りの店とやらに行ったるわ」
「じゃあ、あそこの車に移動しよう。ウチの車なんだ」
「運転手がいるんかい! あんたマジの金持ちやなぁ」
「さあ、乗って、乗って」
途中、服屋に連れて行かれ、私はテレビや映画でしか見ないような真っ赤なドレス姿にさせられた。
「なんやねん! この服-!」
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