第6話 え?

「そう、魔法大会。ランプロス学園で年に一度外部の人を呼んで開催される魔法の祭典。1年生は基本的には出れないことになってるのだけど優秀な生徒……二つ名が既についているような生徒は先生から推薦してもらえれば特例で出れることになってるのよ」


「そうなんだ、初めて知ったよ。……ってセレス?それじゃあ逆効果じゃない?」


 二つ名がついてる生徒しか出れない。すなわち嫌でも二つ名が広まるってことになっちゃうじゃん!しかも学園外の人が来たら尚更広まっちゃうじゃん!?


「最後まで話を聞いて。その魔法大会には2つの種目があるの。一つ目はトーナメント、授業でやったように魔法で決闘を行うもの」


 これを聞いてなおさらダメじゃんと思ってしまったが、ここで暴れるとセレスママからお仕置きを喰らってしまうためとりあえず黙って話を聞くことにする。私良い子、セレスママの話ちゃんと聞く。


「そしてもう一つがコンテスト。これは魔法で一芸を披露してその美しさや面白さを競うの。私がレイに魔法大会へ出場する様に言ったのはこっちのコンテストの方。こっちで良いパフォーマンスが出来れば葬儀屋って言う印象を払拭できるんじゃないかなって思うの」


「なるほど……なるほどなるほど!!いいね、すごく良いと思う!!」


 私は立ち上がり、抑えることのできない高揚感をその場でぴょんぴょんと飛び跳ねることで昇華させる。


 そうだよ!私の魔法で皆を魅了すればいいんだよ!!皆が驚くような、そして綺麗だって見惚れるような魔法を披露すればいいんだ。そうすればきっと──────


「レイ、ちょっと落ち着いて」


「はっ!ごめん、つい嬉しすぎて……ありがとうセレス!セレスに相談してよかったよ!!」


「ふふ、いいのよ。後で先生に魔法大会に出たいって伝えに行こうか」


「うん!!」






「ということでシャル先生!私達魔法大会のコンテスト部門に出たいです!!」


 善は急げということで私とセレスは放課後シャル先生のもとを訪ねた。基本的にどの先生に言っても大丈夫らしいが、言うなら仲が良い先生の方が良いよねということでシャル先生へお願いすることになったのだ。


「ということで、と言われても困るのだけどね。まぁでも二人とも一応参加自体は出来るから良いわよ。後で申請しておくわ」


「お手数おかけしますシャル先生」


「ありがとうございますシャル先生!やったねセレス!」


「ええ、そうね」


 嬉しさからセレスの手をぎゅっと握るとセレスは女神のような慈愛に満ちた笑みを浮かべる。


「でもレイさん、出場するのはコンテストで良いの?あなたの魔法的にはコンテストじゃなくてトーナメントの方が良いと思うのだけれど」


「嫌です!ぜっっっったいに嫌です!!」


「そ、そこまで否定するほど嫌なのね……」


 私は身を乗り出してトーナメントに出ることを全力で拒否する。まさかここまで過剰に反応されるとは思っていなかったのかシャル先生は困惑の表情を浮かべている。が、そんなことなど気にせず私はぐいぐい距離を詰め自分のトーナメントに出たくないという思いを表現する。


「こーら、シャル先生が困ってるでしょ」


「あたっ」


 ぐいぐい行き過ぎたせいかセレスからお叱りのチョップを喰らってしまう。これにはシャル先生も苦笑い。


「どうしてレイがトーナメントに出たくないかを簡単に説明しますと──────」


「二つ名のイメージを払拭したいか。……まぁ確かにレイさんの二つ名は少し物騒ですものね」


「少しどころじゃないですよ!葬儀屋なんて呼ばれて誰が喜ぶんですか!!」


「んぐっ!?」


 セレスがびくりと体を揺らしたような気がするが……まぁ多分気のせいだろう。


「確かに二つ名が付くことは嬉しい事ですけど葬儀屋はちょっとって感じですね……」


「そうなんですよ!ちなみに先生の二つ名は何なんですか?」


「わ、私ですか?」


「あ、私もシャル先生の二つ名気になります」


「ほらセレスもこう言ってますよ!観念して教えてください!」


「べ、別に私の二つ名は関係ないですよね!?」


 私とセレスにせがまれ困惑の声をあげるシャル先生に、私とセレスで無言の圧を掛ける。シャル先生は優しいし頼まれごととか絶対に断れないタイプ!だからこうして押せば絶対に話してくれるはず!!


「……えっと……だ、誰にも広めないって約束してくれますか?」


「もちろんです!」「誰にも話しません」


 ほら、シャル先生は絶対に押しに弱いと思ったんだよ!やっぱり私の勘は冴えてるね!


「私の二つ名は──────」


 シャル先生は周りに聞こえないよう私達に耳打ちする。そして彼女の言葉を聞いた瞬間私の体がピタリと止まる。……はっ!ま、まずい何かフォローを入れないと!!


 訪れた沈黙に私は私は慌てて口を動かす。


「えっと……せ、先生!大丈夫です!私なら気持ちわかってあげられますから」


「生徒に同情される先生って……だから言いたくなかったんですよ。あぁ……家に帰りたい……。」


「シャル先生がしなしなになっちゃった!?せ、セレスもなにか言ってあげて!」

 

 シャル先生は生気を吸われているのかと疑うほどしなしなになっていく。このままじゃ先生が先生じゃなくなっちゃう!だ、誰かお医者様呼んできてー!!


「……かっこいい……!!」


「「……え?」」


 なんということでしょう、絶体絶命の状況でしたがセレスが中二病だとシャル先生にばれたおかげでこの場はなんとかなったのでした。

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