第3話 多種多様性

 要は精霊の力を借りて得たものが魔法であるとアリスは言う。


「自然界を守る精霊の力から得た魔法には火、水、風といった多様な種類が存在していますが、所詮は自然現象を自ら顕現させているだけに過ぎないのです。これがスキルに適わない魔法の性質です」


 それからは、あまりこの世界の人間についての話はなく、人以外の多くの種族がいるという話になった。


 てっきりアリスは人間なのだとばかり思っていたのだが、実はそうではないということに驚いた。


「人間の姿かたちをしているのでそう思われても仕方ありませんが、これはやり方を覚えればこの姿になることは簡単です。私の種族はフェンリルです」


 フェンリルというと、神獣とかいうのを聞いたことがある。


「ちなみに、このダンジョンに人族はいません。むしろダンジョンを攻略してくる側が人間であり、私たちは根城を襲われる側なのです」


 そうか、そうだよな。ダンジョンと言えば冒険者とかそういう部類の人たちが攻略を目指して入ってくるものだよな。


 ……あれ?ということは、もしかしたら俺も人間に殺される対象になっているってことか!?


 そう思ったのだが、どうやらこのダンジョンはそう簡単なものではないようだ。


「100階層まであるこのダンジョンですが、一階層のボスを倒し二階層にたどり着いた侵略者は過去一人もおりません」


「キュッキュキュキュゥ……?(このダンジョンが難しく作られているってことか?)」


「それもありますが、ここは階層一つのフロア面積が異常に広いため、階層ボスまでたどり着くことすらできないのです」


 そんなことでは心が折れて攻略する気が失せてしまうだろうな。


「先ほどマスターが魔法について興味を示していたので言っておこうと思うのですが、このダンジョンには精霊本体も階層ボスとして居ますよ」


「キュッ!?キュキュッキュゥー!!(マジで!?え、会いたいんだけど!!)」


 精霊っていったいどんな見た目しているんだろうか……


 妖精だと、なんかこう小さいのかなとか想像できるんだけど、精霊というとその外見の想像もあまりできない。


 でもきっと天使みたく可愛いんだろうな。あ、でも精霊って会話できるのかな?


「キュッ、キュキュッキュキュキュゥ……?(そういえば、アリスっていつからそうやって喋ることができたんだ?)」


 元々はこの姿ではなくフェンリル本来の四足歩行の姿のはず。


 それならば、いったいいつからこうして人語を介するようになったのか。


「生まれた直後からできましたよ」


 生まれた直後!?すごいな……


「キュッ……?(んん……?)」


「あっ…………」


 確信犯だなこの美人メイドめ。


 完全にやらかしてしまった者の「あっ」なんだよそれは。


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