第24話 バイキング


「テーブルは此方になります。食器やコップに箸やフォークは彼方にありましてセルフサービスになります。お時間の制限はありませんのでゆっくりとお楽しみください」


「ありがとう」


「どう致しまして」


凄い……前の世界でもこれ程の食べ放題はホテルクラスだ。


「リヒトくん……これ全部食べ放題なんだよね」


「本当に凄いな……それじゃ取りに行こうか?」


「うん」


そう言うやいなやエルダさんは早歩きで食事を取りに行った。


どうやら、ローストビーフみたいな物をシェフが切り分けていて、そこに並ぶようだ。


俺は……これは『カニ』なのか?


見た感じ、タラバカニを更に大きくしたようなカニの足が詰んであった。


カニ酢まであるし……これを頂こうかな……


嘘だろう……海鮮丼まであるのか。


酢飯を自分で丼に入れて好きな魚の刺身を盛り付けるようだ。


マグロ、サーモン、生シラスにイカ、いくらにしめ鯖まである。


しかも醤油にワサビまであるんだから凄いとしか言えないな。


これを食べないという手はない。


酢飯をよそってからマグロとイカの刺身をのせて……凄いな、これはとろろか?


かけちゃえ。


醤油とワサビも小皿にいれて、あとはカニだ。


納豆に味噌汁に茶碗蒸しまである、これで和食セットだ。


「リヒトくん、随分変わった物たべるんだね」


和食っていっても解らないだろうな……


「これ、異世界の料理なんだ。珍しいからついとっちゃった」


「そう……私はこんな感じ」


「凄いね……」


ステーキにローストビーフ、肉団子……他にサラダにスープ。


それが山盛りに皿に盛られていた。


「リヒトくん、ここ幾ら食べても良いんだって」


「うん、バイキングだからね」


「それじゃ、リヒトくん折角だから思いっきり食べよう!」


「そうだね、食べようか?」


エルダさんって結構食いしん坊なんだよな。


だけど、お菓子や食事をしている時のエルダさんって子供っぽくて年上なのに可愛いと思う。


凄い勢いでエルダさんは肉にかぶりついていく。


「エルダさん、頬っぺたにソースがついているよ? ほら……」


俺は持っていたハンカチでエルダさんの頬っぺたをぬぐった。


「うん? リヒトくん、ありがとう!」


気持ち良い食べっぷりだ。


沢山食べる女の子を可愛いって言う人が居るけど、エルダさんを見て俺もそう思うようになった。


それじゃ、俺も食べようか……美味い。


醤油もどきじゃなく、これ本物の醤油だ。


魚は本当は違うのかも知れないけど、味は間違いなく前世の日本の物に近い気がする。


まさか、海鮮丼が異世界で再現されているなんて思わなかったな。


納豆も味噌汁も茶碗蒸しも思い出の味その物。


転生者や転移者が過去にも居て再現されていると聞いたけど……ここまでとは思わなかった。


俺が感動して和食メニューを食べていると……


「リヒトくん、私お代わり行ってくるね」


エルダさんは全部食べ終わっていた。


「行ってらっしゃい」


カニの殻を外しながら、答えた。


カニ酢につけて食べると、ほぼタラバガニの味だ。


カニって食べているとつい会話が無くなるんだよな……


尤も一心不乱に食べているエルダさんとじゃ多分会話にならない。


エルダさんはまたもや大量に肉料理を取ってきた。


「今、タイムセールでこのお肉のステーキがあるんだよっ! 美味そうじゃない?」


確かに美味そうだ。


シェフが立っている場所を見ると……時間限定で特殊な肉を焼いているみたいだ。


「美味しそうだから、俺もとってくるね」


「モグモグ……行ってらっふぁい」


そのまま、急いでステーキを貰いに行った。


結局、俺とエルダさんは2時間以上バイキングを堪能した。





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