第22話 お祭り広場
「異世界にこんな物があるなんて……」
凄いなんて物じゃない。
断崖絶壁の崖の上にまるでお城のような建物が建っている。
これが宿屋だと言うのだから驚きだ。
これに似た建物を俺は知っている。
前の世界のバブルの遺産。
『宿屋、新マカオ』という巨大なホテルにそっくりだ。
尤も俺が居た時は閉鎖されていたけど……
「リヒトくん、これお城じゃ無くて宿屋なんだよね! 流石にこんなの見た事がないよ!」
エルダさんも此処迄の建物は見た事がないらしく興奮している。
「本当に凄いね、入ってみようか?」
「うんっ!」
中もまた凄い……これどう見ても本物のお城以上だろう。
この作り......絶対に異世界人、それも日本人が絡んでいるよな。
「いらっしゃいませ、宿屋マカオにようこそ!」
名前まで一緒なんだな。
宿屋の店員さんから声を掛けられた。
「予約とかして無いけど大丈夫ですか?」
これ程の高級ホテルだ、予約が必要なのかもしれない。
「あははっ、大丈夫ですよ! 昔はすごーく混んで予約で一杯でしたが、最近は不景気なので、見ての通り暇です」
言われてみれば、確かに人がいないで閑古鳥が鳴いている。
「確かに空いていますね」
「お恥ずかしい話、魔族との戦いが激戦化している為不景気なのかこのありさまです。1泊1人銀貨3枚~はなかなか出せる人が居ないのかも知れません……あっすいませんでした。受付はあちらです」
エルダさんの目がキラキラしている。
凄いな……お祭り広場?
どう見ても縁日の露店にしか見えない物が出ている。
その傍にお土産屋さんがある。
ゲームセンターは流石に再現できないからこれがかわりなのか?
これ、絶対に凄い。
そのまま受付に向かった。
「いらっしゃいませ! 本日はお泊りで宜しいですか?」
「はい、とりあえず2人三泊でお願い致します。部屋は安い部屋で大丈夫です」
全体的に凄い設備だし、部屋は最低で良いかもしれない。
殆どホテルの中で遊び歩けるし……
「三泊ですか? それならただいまサービスでその金額で一番良い部屋に代えさせて頂きますが如何ですか?」
「それなら、お願い致します」
部屋が空いているからかのサービスかな。
「はい、それじゃチェックインの準備をさせていただきます」
「エルダさん……宜しくお願い致します」
もう、お祭り広場の方に行っているし……
結婚してから解ったけど、エルダさんって大人と子供が同居しているような気がする。
それが、まぁ魅力なんだけど。
◆◆◆
「輪投げ……調子はどう?」
「リヒトくん……これ全然入らない」
「大きいのは難しいんだよ! 小さいの狙わないとね」
「そうなんだ……」
「ちょっとやってみるかな? おじさん1回やらせて」
「あいよ、5個で小銅貨2枚だよ」
「はい、小銅貨2枚」
本当は大きい景品を取ってあげたらカッコ良いんだけど……それは無理。
輪が下までいく事なんてない。
狙いは……小さなぬいぐるみや景品だ。
「それ……あっ入った」
「あいよ、キャラメル」
「本当にキャラメルなの?」
「ああっ、昔の勇者様が伝えたお菓子だ……頬っぺたが落ちるぞ」
「そう……それなら」
何処まで近い味か解らないけど、ボンタン飴にヨーグルトキャラメルを狙い、手に入れていく。
そして……最後の1個はひよこの人形を狙った。
小さい人形だから簡単に輪に入った。
「凄いね!リヒトくん」
「まぁね」
どうやら前世で縁日を荒らしまわった実力は今でも健在のようだ。
「だけど、それなんなの?」
「ひよこの人形以外は、お菓子だよ! 剥いてあげるね。はい、あーん」
キャラメルの包み紙を剥いてエルダさんの口に放り込んだ。
「あーんっ、もぐっ……これ甘くて美味しい」
その後は、射的をしたり、ソースせんべいを食べたり、綿菓子を食べたり、お祭り広場を楽しんだ。
確かに日本人は温泉が好きだよな。
まさか、此処迄、昔の勇者って凄かったんだな。
誰か知らないけど、これを作ったという過去の『転移か転生勇者』に感謝した。
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