第17話 もしかして、魔王より強い


「エルダさん、ちょっと討伐に行って来るね」


「討伐?」


「うん、この辺りに地竜が出たって聞いたから、お金稼ぎになりそうだから行って来ようと思うんだ」


街まで来て宿屋を借りた。


お金には余裕はまだあるけど、稼げるときに稼がないと後で困る事になる。


そんな時に地竜の情報を聞いた。


地竜は強敵だが、俺でもなんとか狩れる相手だし、この辺りには高ランクの冒険者が居ないからと塩漬け状態になっていたようで、賞金もかなり上がっている。


こんなチャンス滅多に無い。


「リヒトくん、私も一緒に行っちゃ駄目かな?」


伏目がちで下から見て来るエルダさんは凄く可愛い。


「地竜が現れたら、離れる事。 あとは俺の指示に従ってくれるなら良いよ」


「うん、ちゃんと気をつけるよ」


本当は危ないから連れていきたくないんだけど……


エルダさんに頼まれるとどうしても断れなくなっちゃうんだよな。


こうして俺達は地竜の討伐に向かった。


◆◆◆


「こう言う場所に地竜っているの?」


「岩場とか、砂漠みたいな場所にいる事が多いんだ」


「そうなんだ、竜って凄く大きいって聞いた記憶があるんだけど、そんな大きな竜がこんな場所にいるの? もし居たとしてリヒトくん倒せるの?」


「まぁ、何とかね、これでもA級冒険者だからね」


「リヒトくん……凄いね、竜が倒せるなんて」


「まぁ、何とかね」


竜が倒せるって言っても、地竜とワイバーンだけ。


他の竜と戦ったら勝てるかどうか解らない。


それでも地竜を倒せば、1年位は遊んで暮らせるお金になる。


冒険者としては充分優秀な方だ……と思う。


「リヒトくんって本当に凄いね」


エルダさんに褒められると、つい顔がニマニマしちゃう。


暫く、探していると……地竜が居た。


ヤバいな。


1頭だと思っていたのに3頭もいる。


これじゃ、出直した方が良いかも知れない。


いや、それじゃチャンスを見逃してしまう。


バラバラになった瞬間を狙って……


「リヒトくん、どうして隠れるの?」


「エルダさん、地竜が居る……静かに」


大型の地竜2頭に、小型の地竜1頭。


俺にとっては1頭ですら強敵だ。


様子を見るしかない。


「え~と、あれは土トカゲですよ。竜じゃないですよ?」


竜じゃない?


「竜じゃない?」


「はい、だって竜って言えば、冥界を統べる山の様に大きな黒竜や、月より大きいと言われる宇宙に住む者とかじゃないですか……トカゲと比べちゃ駄目ですよ」


山より大きい……それも凄いけど……月より大きい?


月ってあの空に浮かぶ月?


そんな存在が居たら……勇者も魔王も誰も勝てないんじゃないかな。


「それ本当?」


「はい……尤も私も見たことは大昔に1回しか無いんですけど」


あれ……?


火トカゲなら狩った事があるって……もしかして、俺が知っている火竜を狩った事があるって事なのか?


「もしかしてエルダさん、もしかしてあれ狩れたりします?」


「久々だから、ちょっと自信がないけどやってみようかな? 『偉大なら大地の精霊ガイアよエルザの願いを聞いて欲しい 目の前のトカゲ三匹を倒して』」


嘘だろう。


地面から巨大な岩で出来た手が出て来て三頭の地竜を掴んだと思ったら、そのまま簡単に潰してしまった。


そうだよな……エルフと言えば『精霊』だ。


エルフは高齢になれば成るほど『精霊との親和』が高くなると聞いた事がある。


その昔、四職を揃えないで勇者とハイエルフだけで魔王を倒したという物語があった。


そんなハイエルフを越える古代エルフ。


ハーフとはいえ弱い訳が無い。


「エルダさん……凄い」


「大した事無いよ! トカゲ位、流石に狩れるし、これ位大した事無いって」


もしかしてエルダさんは魔王より強いんじゃないかな。

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