第16話 勇者パーティSIDE 本当に必要だった人
「銀貨3枚(約3万円)の化粧水でこんな品質な訳」
「これでも男爵夫人が使うレベルの物なのですが……」
「リメル、このクリームも銀貨3枚です」
「うわぁ、この香水なんて金貨1枚もするよ」
私達は化粧品店に来ています。
今迄はこう言った物もリヒトが用意してくれていたのですが、貰っていた分を使い切ってしまい買いに来たのですが……
思った以上に高くて驚いています。
しかも、化粧水をはじめ、サンプルを使っただけでも品質が凄く悪く感じるのです。
「また来ます! リメル、リリア、行きますよ」
「ああっ」
「うん」
ライトから貰った金貨1枚じゃ到底3人分は揃えられないわ。
◆◆◆
仕方なく近くのカフェにきたのだけど……
「どうしようか? 僕そうとうボロボロじゃない?」
「ええっ、それは私も同じだわ、肌もあれて来ているし……手荒れもね」
「本当に最悪だよ! 洗濯位は自分でしろって……」
「いや、リリア、それは当たり前だよ! 僕たちは女の子なんだから下着もあるし、今迄しなかった事が可笑しいんだよ」
「そうね……リヒトは良く、男の癖に下着まで……ハァ~ 洗えたもんね」
「だけど、こんなに雑用ばかりじゃ討伐なんて出来ないよ」
「そうだな、やはりリヒトは必要な存在だったんだよ!」
「今更ですよ……雑用を全部一人でこなして討伐の準備から、武器の手入れまで、あんな存在は他に居ないわよ」
「だよね。お金出して頼んでも全部リヒトみたいには誰も出来ないもの」
「そうだな……やはり帰って来て貰うしかないんじゃないか?」
「言ったでしょう? それは無理だって」
「あのさぁ……それってパートナーがいないからだよな? この中の誰かがパートナーになれば良いんじゃないか?」
「そうだね、その条件なら帰って来るかも知れない」
「そうね……」
「だけど、誰がライトから離れてリヒトの所に行くの?」
「「「……」」」
「ふっ……それじゃ僕が」
「仕方ない私が……」
「私しか……」
「「「えっ」」」
やはりこうなるのね。
◆◆◆
『マリアンヌの場合』
不味い、私だけじゃなくて皆が気がついてしまっていた。
『私達が実質男』なのだと言う事に……
勿論、本当に男という訳じゃないわ。
生き方が男なのよ。
私は聖女、治療のエキスパートね。
レベルが上がれば上がる程、どんな治療でも出来るようになるわ。
『魔王討伐』 それが終わったあとの私はきっとヒーラーとして生きていく事になるわ。
その時に必要なのは『共に肩を並べて戦う仲間』じゃない。
私をサポートしてくれる人、それが必要なの。
そのサポートしてくれる最高の人材がリヒトだ。
なんてこと無いわ……私が欲していたのは『旦那』じゃなく『お嫁さん』だったのよ。
女らしい『癒しの聖女』なんて呼ばれていた私が実質男みたいな物だと気がついたのは最近の事よ。
ならば、私が……リヒトの妻になるべきね。
◆◆◆
『リメルの場合』
クソッ遅かった。
僕がリヒトを狙っていたのに……
良く考えたら僕、剣聖だよ。
剣を振るうのが僕の仕事。
やっている内容は『男の仕事その物』じゃない。
魔王討伐後は冒険者になるか騎士になるか……いずれにしても戦闘職。
そして……私は家事が出来ないし、武器の手入れが苦手。
リヒトが居ればどれだけ助かるか……
家事は完璧にこなし、一緒に肩を並べて戦える相手……それがリヒト。
リヒトで良い……ううん、リヒトが良い。
◆◆◆
『リリアの場合』
良く考えたら私は妹分なんだよね。
いる時は気がつかなかったんだよね。
『お兄ちゃん』って凄いなって。
何でもしてくれるし、優しいし……最高の存在じゃない。
今迄も賢者だから守って貰っていたけど、家事迄してくれるんだもん。
『最高のお兄ちゃん』だった。
魔王討伐までは仕方ないけど……その後はお兄ちゃんと生活した方が良い。
『なんでもしてくれる優しいお兄ちゃん』
これ以上の最高のパートナーは居ないよね。
◆◆◆
「ほら、僕って剣聖じゃない? リヒトと相性が良いと思うんだよね?」
「それを言うなら私だって聖女と剣士なんて最高の組み合わせですよね?」
「なんで、戦闘の事ばかりなの、リヒトは私のお兄ちゃんみたいなもんなんだからね……手を出さないで」
「リリア、もう守らないで良いって言っていたじゃん? もう兄妹関係も終わりだろう?」
「ちょっと待って……忘れているわよ」
「「えっ」」
「リヒトは、エルダを引き取っているわ、もしかしたら今頃、エロエロになっているかもよ」
「そうか……そうだよな……」
「もしかしてリヒトお兄ちゃんは……」
「そう言う事が好きなのかもね……それでどうするの? リヒトを狙うと言う事は愛人つきという事だけど」
「いいんじゃないか? ようはエルダも含んで一緒にリヒトとやれる度胸があれば良いんだろう?」
「妹の魅力で追い出せばいんだもん」
「馬鹿ね、あの女はバルトマン家で代々使われていた『性処理奴隷』よ。村では悪評があるわ。身請けしたリヒトが村に居ると思う?」
「「思わない」」
「そうよ……リヒトの行方が探せないのよ」
そうよ……場所が解るならどうにか探せる。
だけど、魔王討伐の旅をしている私達は……あてもなくリヒトを探すなんて出来ないわ。
「「そうだ(よね)」」
結局、今はどうする事も出来ないわ。
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