第15話 街道にて


ただ、歩く相手が違うだけでこんなに違うんだな。


今迄は、街道を歩いていても面白くもなんとも無かった。


だけど、横に居るのがエルダさんというだけで、楽しく感じる。


「リヒトくん、私の顔に何かついているの?」


「別に何でもないんだ……ただ、その綺麗だなぁ~と思って」


「そうかな?……ありがとう」


少しだけエルダさんの顔が赤くなった気がする。


俺は手が繋ぎたくなったので、そっと手をだした。


「手を繋いで良い?」


「もう、繋ぎたいなら何時でも握ってくれて良いからね……」


そう言っておずおずと手を出してくるエルダさんはやっぱり可愛い。


美人なのに可愛い。


それにスタイルが抜群。


そんなエルダさんが俺の奥さん。


これでテンションが上がらない訳が無い。


◆◆◆


暫く歩いていると、小さな少女が此方に歩いてきた。


一体何の用だろう?


「あの、お婆ちゃんは何処の村の族長ですか?」


「「?」」


「え~と族長ってどう言う事?」


「だって、そっちのお婆ちゃんは古代エルフだよね? だったらどこかの村の族長か長老様かなって思ったの……違うの?」


そうか、耳が髪で隠れていて気がつかなかったけど、この子エルフだ。


「私は、族長でも長老でも無いよ……しいて言うなら横にいるリヒトくんのお嫁さん」


「お嫁さん? 人族の? あの……お兄さん幾つ?」


「17歳だけど?」


「私より年下じゃない! その歳でお婆ちゃんの夫なの」


「歳の事は余り言わないでくれるかな?」


エルダさん……怒っているな。


「だって数千歳生きているお婆ちゃんが17歳の男の子のお嫁さん? 可笑しいよ!」


「そうか? 俺は確かに17歳だけど別に可笑しいとは思わないよ! 好きな人が年上だった。それだけだよ」


「ふ~んお兄ちゃん、年上が好きなんだね……だけど、この年齢差は無いよ」


「あの、貴方はなんで私達に話かけてきたの? 何かようがあるのかな?」


「特に無いよ……ただ、偉い人がいる気がしたから声かけたんだ。だって古代エルフなんて上位の方に会えるなんて滅多に無いからね」


「そうなんだ。へー」


「お婆ちゃんはやめて! これでも新妻なんだから……」


「う~ん。それならお婆様、大おば様、長老様?」


「そう言うんじゃなくて、気軽にエルダさんって……」


「あら、ターニャ。どうしたの? 嘘、なんでこんな所にいらっしゃるのかしら?」


「どうかしたのか? これは……何処の族長様でいらっしゃいますか?」


少し年上のエルフが後ろから歩いてきた。


多分彼女の両親なのかな。


「いえ、私は族長なんかじゃありませんよ! リヒトくんの妻です」


「「そっ、そうなのですか……」」


俺から見たらちょっと年上のセクシーなお姉さん。


だけど、同族から見たら歳って解る物なんだな……


この際、聞いてみるか?


「妻の立場ってエルフの社会ではどうなのかな?」


「そうだな、人間で言うなら王族と長老を兼ねたような存在だよ。古代エルフなんて種族、私は初めてお会いしました。ハイエルフですら会った人数は20人も居ないですね」


「私が小さい頃、治めていた族長様が古代エルフだった位ですね。夫と結婚して村を出てからは初めてです」


「私は40年生きているけど、初めて会ったの」


見た目は12歳~18歳。


12歳位に見えるのが40歳位って考えると、やはりエルフって普通の人間には年齢が解らないな。


父親と母親は見た目17、8歳だけど、40歳の子の親だから……それなりの歳なんだよな。


「それで、私の妻なのですが、エルフの社会で考えて、私と結婚する事で何か不味い事とかありますか?」


「特に問題は無いんじゃないかな? 責任ある立場じゃないんなら。 ただ、エルフって種族は年長者を敬う所があるから、人によっては『様』をつけて呼ばれたり、エルフの里とかでも無条件で顔パスで出入り出来る位だな」


「そうね、あとは……凄いなぁと思われる位かな?」


「『凄い』ってどういう風に思われるのでしょうか?」


「あははは、赤ちゃんみたいな年齢の人間がお婆ちゃんと結婚しているんだから『凄い』でしょう」


この子、何気に口が悪いな。


「そう言う言い方するなら、俺君の事、おばさんって呼ぶよ」


「なんでよ!」


「人族の俺からしたら40歳は充分、おばさんだよ」


「そうか……いいわ! ターニャおば様でもターニャおばちゃんでもいいわ……うんうん良い響きね」


「あの……もしかして『お婆ちゃん』って呼ばれたの気にしていますか?」


俺とエルダさんは軽く頷いた。


「すまない……旦那が人族って事は、人中(ひとなか)で暮らしているんだな。エルフと常識が違うのを忘れていたよ。我々エルフは年上を敬う種族なんだ。だから『お婆ちゃん』や『お婆さん』は軽い言葉だが敬いの言葉だ。本当にすまないな、悪気があってターニャも言っていたんじゃないんだ。ごめん」



「そう言う事でしたか? 教えてくれてありがとう」


「「いえいえ」」


「それじゃぁねーー」


種族の違いについて、少し勉強した方が良いかも知れない。





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