第12話 逃げるように旅立ち


「エルダさん、それじゃ行こうか?」


「そうですね」


リメル達の親に出会ってしまう前に村を出る事にした。


特にリリアの親に会いたくない。


『娘を』そう頼まれたのに……もう手遅れだ。


俺が悪い訳じゃない。


だが『あんな娘にしてしまった』


なんとなく罪悪感がある。


『素朴で純情』それが三人だった。


そんな子達だったのに……


今じゃ高飛車で人を見下し散財癖がついてしまった。


それだけじゃない。


夜になると悩ましい声が俺の隣の部屋から聞こえてくる。


4人でまぁエッチな事をしている訳だ。


『御宅の娘さん、高飛車になって散財癖がついて性格が悪くなりましたよ!しかもですね、ライトと一緒に4Pする位破廉恥になりました……凄いですね』とは言えないよな。


だから、村に居る時はなにかと彼女達の家族に会うのを避けていた。


親はきっと今でも『良い子だと思っている』現状を聞かれたら困る。


とは言え『そう言う生活を望んだ』のは彼女達だ。


俺は嫌われてもトゲトゲ最初は注意していたんだ。


ライトは村の領主で勇者だから『仕方なくなのか』そうも思ったが。


だが破廉恥な下着を身に着け、いそいそとライトの元に行く三人を見かけたから絶対に違うという事が解った。


こうなったら、成人で合意なのだから、俺も文句は言いにくい。


しかも、やたらと4人で俺を馬鹿にした様にマウントをとるから……もう匙を投げた。


だから、彼女達の親に会って近況を聞かれたら凄く気まずい。


俺は嘘をつくのが苦手だからな……


◆◆◆


「それでリヒトくん、これから何処に向かうの?」


「場所は決めていないけど南に行こうと思うんだ」


「南に? どうして?」


「北に行くと魔国だから、その反対の南に行けば安全だからかな」


「魔国ってそんなに怖い国なのかな……」


「エルダさん、魔国に行ったことあるの?」


「捕まって奴隷に成る前になら行った事があるけど、そんな悪い人いなかった気がするんだけど……まぁ大昔だから今は違うのかもね」


流石にエルダさんの言う大昔は……確かに今とは事情が違うよな。


「昔は魔族と仲が良かった時代もあるんだね」


「うん、仲は良く無かったけど我関せず。そんな感じだったよ」


エルダさんと一緒に街道沿いを歩いているんだけど……


可笑しな事に魔物と遭遇しない。


いつもならなんかしらの魔物に会うんだけどな。


不思議だ。


まぁ会わない事は良い事だ。


「今と随分事情が違うんだね。 今は完全に魔族と人間は完全に敵対関係だよ」


「そうなんだ。大変なんだね」


「尤も戦っているのは魔国に隣接している国ばかりで遠くの国は支援している位で直接の戦闘には参加してない国もある。だから南に進んでいき、魔族と戦闘をしていない国に行こうと思うんだ」


「そうですか……それで南を目指すんですね。解りました」


「うん、良い場所があったら、村でも街でもそこに定住して生活が出来ればと思うんだけど、エルダさんはどう思う?」


「私、外の世界は余り知らないけどなんだか楽しそうですね。平和が一番ですよ」


「そうだね」


エルダさんと一緒に南を目指し、平和な永住地を探す。


この旅はきっと楽しい物になる。


しかし、本当に魔物に会わない……今日は随分ついているな。




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