第9話 叶った夢
昨日はエルダさんと手を繋いで一緒に寝た。
「おはよう……エルダさん」
「おはよう……リヒトくん」
朝起きた時に横にエルダさんが居る。
それだけで凄く1日が楽しい。
勇者パーティの時は凄く朝が憂鬱だった。
最初の頃は良かったんだ……だけど、ライトの影響で性格の悪くなったあいつ等とは話をするのも段々嫌になっていったんだよな。
朝から、有名店の朝食の予約を取れだ、猫撫で声を出す時は『欲しい物があるんだけど、お金貸してくれない』
だもんな。
「それじゃ、朝食作るから、エルダさんはもう少し休んでいて」
「リヒトくんの方こそ休んでいて、私が作るから」
「そう、それなら明日はエルダさんに作って貰おうかな? 今日は俺が作るよ! エルダさんに食べて貰いたい物があるから」
「そう? 明日は絶対に私が作るからね。ゆっくり休んでね」
「解った」
俺って現金だな。
エルダさんの為。
そう考えると家事すら、凄く楽しい。
さてと……
さっとご飯をケチャップで炒める。
転生者や転移者が昔から僅かながらいたから、結構あっちの食材もあるんだよな。
それを手早くお皿に盛って卵を1人に二つ使い軽くかき混ぜフライパンへ。
トロトロ状態の卵を箸で真ん中をクシャッとしてそのままトントンとケチャップライスに落とす。
そこにハートマークをケチャップで書いて、リヒト特製オムライスの出来上がり。
これにスープを添えて完成と。
「エルダさん、ご飯が出来たよ」
「本当にリヒトくんは料理が上手いよね……あっハートマークが書いてある! 嬉しい!」
「お子様料理ばかりだけどね」
「リヒトくんはお子様料理って言うけどさぁ、リヒトくんの料理って変わっていて凄く美味しいよね。どこで覚えたの?」
「一応、転生者だからね……と言っても記憶が虫食いのタイプだけど」
「あっ、だからこんな珍しい料理が作れるんだ。 だけど、残念だったね、昔だったら王宮に招待して貰えたのに」
「今じゃ、知識チートなんて余程の事じゃ無いと出来ないからね」
ケチャップやマヨネーズは普通にあるし、高級品だけど醤油もソースもある。
この辺りではお米は手に入らないけど、市場には出ている時もある。
今回使った米は、ライトと一緒に居た時に手に入れたお米だ。
「その分『そうなんだ』で済むから良かったんじゃない?」
「今の世の中は、転生者でも普通に暮らせるから確かに楽だよ」
『珍しいな』で済むから凄く楽だ。
「だけど、凄く美味しいよ、これ! これもこの間のカレーやハンバーグもそうだけど、こんな美味しい料理他じゃ食べられないよね」
「確かに、珍しいかも。前の世界、日本の料理だからね、だけどライトと旅行した時に何回かは似たような料理を見たから、食べられないは大げさかも」
「それでも、珍しいと思う……こんな料理王宮でも食べた事ないもん。それに凄く美味しいし」
「エルダさんが気にいってくれたなら良かった。まだまだレパートリーは沢山あるからね、こんな物で良いなら何時でも作ってあげるよ」
「本当!? ありがとう……あっ、私もリヒトくんの為にご飯作りたいんだけど?」
「それじゃ交代交代にしようか? 今日一日は俺が作るから明日はエルダさんが作ってくれる?」
「私、それで本当に良いのかな?」
「うん、エルダさんは奥さんだからね」
「リヒトくん、それは可笑しいよ。奴隷じゃないにしても家事は普通は奥さんの仕事じゃないのかな?」
「普通はそうかも知れないけど、俺の場合は料理を含み家事が得意だから、エルダさんが喜んでくれるなら別に……」
「リヒトくん、私だって少しはリヒトくんの役に立ちたいんだから」
エルダさんが傍に居てくれる。
それだけで本当に充分なんだけどな。
だけど、エルダさんの『役に立ちたい』はエルダさんの愛情。
「そうだね、俺達は夫婦なんだから、役に立つとか考えないでお互いに支え合っていけば良いんじゃないかな」
「うん、そうだね……それじゃリヒトくんは私にして貰いたい事ある?」
「今の生活で充分だな」
「なんにも無いの?」
「うん……エルダさんとの生活が俺の夢だったからね……その夢はもう叶った。次はどうしたいかは、ゴメンまだ思いつかない」
「私との生活が夢……そうなんだ。それじゃもし私にして欲しい事が見つかったら何でも言ってね……リヒトくんの為ならなんでもしてあげるからね」
「うん」
エルダさんが『何でもしてくれる』って……
つい、変な事を妄想してしまうのは仕方ないよな。
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