第4話 エルダ


私は人では無い……物なの……


本当に人じゃない訳じゃない。


だけど『人』扱いを受けた事が無い。


もうすっかりと忘れたけど、誰かに捕まって奴隷にされ、そこからは『物』として生きてきた。


最初に私を所有したのはビクトリア国の王だった。


王宮に住まわされ、そこのハーレムで暮していた。


その頃の私は、王族を満足させる為にあらゆる性技を叩き込まれた。


この国の王族は執務が忙しく時間が無い。


その為に短時間で満足させなければならない。


その為の技術が『ビクトリア王宮 房中術』


基本的に10分で満足させないと叱責される、そんな生活だった。


性的なことは嫌だったけど……食事も生活もかなり良い物が提供されていた記憶がある。


相手をする王族も、大切には扱ってはくれる。


一番近い物は高級な美術品扱いなのかも知れない。


『貴重な品』だから大切に扱われる。


それだけのことだわ。


私には価値があるらしく、親から子へと引き継がれる事も多かった。


親子で私の体を楽しむ者もいれば……『父が抱いた女は抱けない』と拒む者もいる。


ただ、それでも、私は貴重な古代エルフとのハーフだから財産として引き継がれていく。


貴重品扱いだから大切にされ、性的なこと以外は苦労せず生活していた。


だが、そんなビクトリア国も戦争で負け、私は反乱軍の物になった。


私は人間ではなく『財産』なのだから仕方が無いと諦めていた


碌に鑑定をしなかったからか、古代エルフのハーフとは解らなかったようだ。


敢えて自分からも、それは言わなかった。


言えばきっとまた『籠の鳥』だ。


そう想ったからね。


酷いことはされなかった物の沢山の男性に一日中抱かれる生活だった。


だが、それで終わらなかった。


王族と違い、碌に避妊をしなかった為……私は妊娠したの。


そして、運が悪かった事に、生まれた子供の耳は私と違い『耳が長かった』のよ。


その子供に価値を見出され……私は沢山の子供を産まされた。


沢山の男に抱かれ、飽きた頃……


男女問わず『皆して私を汚い女と』罵るようになった。


暴力という意味では性的な事と悪口以外では酷いことは殆どされない。


それは、見栄えが良い『性処理奴隷』そして『エルフの血を引く子供を産む、金の卵』という財産だったからだと想うわ。


その反乱軍もやがて討伐され……次の私の所持者は、その討伐をした貴族だった。


貴族はお家騒動が起きるからからか、しっかりと避妊をしてくれる。


それだけは助かった。


妊娠、出産は苦しいもの。


だけど、私は最初は大切に扱われていたが、何代か私を使い要らなくなると他の貴族に売られた。


良く私を手放す時に言われたのが


『確かに見栄えは良いけど、爺さんや父さんに散々使われた女は抱きたくない』


いつも、そんな言葉だった。


私は……人間じゃなく、あくまで『財産』なのだから仕方が無い。


そう思い、生きてきた。


そして、最後に売られた先がバルトマン家だった。


私も結構な齢だから、金貨で買える位安くなっていた気がするわ。


私の容姿にはエルフっぽさは無いけど鑑定すれば『古代エルフのハーフ』の種族が出る。


今思えば『古代エルフのハーフ』の所有者、それ欲しさに購入された気がするわ。


私がバルトマン家に売られて来たのはかれこれ350年以上前になる。


バルトマン家の、その時の旦那様は私をたえず求められていた。


私が愛されていると勘違いする程に……


奥方様に凄く嫉妬され意地悪もされた記憶がある。


だが、それも簡単に終わりを告げた。


旦那様が事故で死んでしまった。


その亡くなった時に、私は本当は愛されていないのが良く解ったの。


遺言には私の名は無く、死ぬ間際の手紙も家族への物だけで私には無かった。


そして、私は『相続品の目録』の中にのみ名前があった。


やはり物……それが私なんだと思い知ったわ。


私を相続した息子は、他の貴族と同じように『父が抱いた女は抱けない』と言い、私を使わなかった。


そして、私を売り払おうとしたが、大したお金にならないと解ると渋々使用人として置かれる事になった。


今の自分に価値の無いのは良く解るよ。


私の価値は『美貌』と『エルフの血を引く子』を産む事。


だけど、バルトマン家に来た時に既に『エルフの血を引く子を産む』その能力は既に無くなっていたの。だから古代エルフのハーフが金貨で買えたのよ。


容姿こそ幼いが、実年齢から考えれば老人なのだから、生理なんてとっくに上がっているから子供を産めないのは当然だわ。


そして容姿も、耳こそ普通だけど今迄の私は『少女』だった。


胸が小さくスレンダーの愛くるしい少女……それが昔の私


だが、今現在はエルフ特有の少女の様な面影はなく、胸も大きくなりお尻も大きくなってきていた。


そして、見栄えは兎も角、私は『老人』だから当たり前。


これからは普通の人間の様に成長して姿が変わる。


『財産として価値すら無くなった女』それが私。


この屋敷に住んでいるのは……奴隷の権利だからだわ。


奴隷を購入したら、最低線の生活、命の保証をしないといけないからね。


◆◆◆


凄く若い子に『愛している』って言われた。


私の事を、真っすぐな目で見つめて来る子。


こんな経験は初めてだった。


私は恋なんて物は知らないし、財産で所有物だからする事が出来ない。


それに私は貴方のお婆ちゃん処じゃない位の歳なのよ。


しかし、こんな体の何処が良いのかしら。


胸もお尻も大きいし、顔だって少女っぽくないのに……


まぁ子供だし本気じゃないわよね。


それに私はバルトマン家の一応所有物だから……


仕方なく、まだ子供だったリヒトくんに、その事を伝えたら、泣きながら帰っていった。


何故か『心が痛かった』のは覚えている。


伝えたにも関わらずリヒトくんはその後も私の前に現れた。


ただ、挨拶をし、世間話をするだけ……


だけど、その時間が凄く楽しく感じたのよね。


◆◆◆


まさか、本当に思われているって思わなかったわ。


勢いでやってしまったけど


歳の差は3300歳以上……良いのかなぁ~


まぁ好きになったのはリヒトくんだし大丈夫だよね。













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る