第54話 エーデリア王国の最後1

ドラゴン族たちによる魔虫の駆除が終わった。


ドラゴンたちは、もはや興味なしとさっさとドラゴンヒルに帰っていく。

見渡せば魔虫の沼を含め広い範囲が焼け野原となっている。

さすがドラゴンパワーはすごい。


グレーも、一旦ドラゴンヒルに帰るようだ。

ブラックと仲直りできるといいね。


俺たちはそのまま、エーデリア国の王城に向かっている。

グレーがドラゴンヒルに帰ってしまったので、レッドに攻撃部隊のゴンドラを2個運んでもらっている。

レッドがいうには、別に筋力でゴンドラを持ち上げている訳ではないので平気なのだそうだ。


エーデリア国の王都に到着する……

既に王城はキメラオーガ軍により、陥落寸前だ。


陥落寸前だからといって、200人の攻撃部隊が、エーデリア国のために命を賭ける必要はないだろう。

城から離れた場所で、出番がくるまで待機してもらう。


彼らには、王宮内に捕らえられているかもしれないエルフ族や獣人族を、救出をしてもらう予定だ。

攻撃部隊を待機させると、レッドの背に乗りアンジェとエメットと共に城の上空を旋回する。


上空から眺めると、キメラオーガは王都外壁を乗り越え、市街地での防衛線も撃破、最後の防衛線である王宮の外壁も突破している。


王宮の建物の入口では、王宮を守る兵士や騎士がキメラオーガと必死に戦っている。

入口とは別に、キメラオーガの別働隊が王宮の建物を登っている。

王宮内でも戦闘が行われているに違いない。


ここまで攻め寄せられては、エーデリア国の敗戦は確定だな。


まずは、キメラオーガ軍をコントロールする念話騎士を探そう。

きっと戦況が見渡せるところに護衛とともにいるはずだ。


レッドが直ぐに、念話騎士を見つけてくれる。

城壁の上でキメラオーガ軍に守られている騎士が念話騎士のようだ。


良く見ると騎士はキメラワイバーンの背に乗っている。

ワイバーンの頭部には獣人の顔が浮き出ている。


キメラワイバーンまで作り出してしまったのか!

どこまでやるつもりだ!


念話騎士が背に乗るキメラワイバーンを、同じキメラワイバーン20体が守っている。

襲われて危なくなれば、念話騎士は空に逃げる作戦のようだ。


俺たちは、念話騎士が背に乗るキメラワイバーンに近づいて攻撃を始める。

その攻撃をキメラオーガ20体が身を挺して防ごうとする。


念話騎士が乗ったキメラワイバーンと、護衛のキメラワイバーンが一斉に空に飛び立つ。

こいつらもドーピングで本来の身体能力の5倍、防御力は5倍、俊敏性も5倍になっているみたいだ。

空中での動きが素早い。


「キメラワイバーンを全て始末しよう」


4人が分散し、まずは護衛のキメラワイバーンへの攻撃を始める。

しかし空中を自在に素早く飛び回るキメラワイバーンには、矢も槍も火球も弾丸も簡単に当たらない。


矢も槍も火球も、当たる直前で飛行進路を変えられて躱されてしまう。

躱すと同時に背後を取られて、逆にキメラワイバーンに火球で攻撃をされてしまう。


戦闘機による空中戦のようだ。

空中戦だと飛行士の技量が上の方が有利となる。

だから、俺たちの有利を作り出さないと勝てないな!


「アンジェ、エメット! 3人でレッドの背に乗るぞ」


「キメラワイバーンの火球は俺たちが防ぐし,キメラワイバーンへの攻撃も俺たちが行う。レッドは、念話騎士の追跡だけに集中してくれ」


「俺は念話騎士の乗るキメラワイバーンを、ライフルで仕留めることに集中する。アンジェとエメットは、俺たちを攻撃しようとするキメラワイバーンを牽制して、レッドを攻撃させないようにしてくれ」


俺は対戦車ライフルを構えて、念話騎士の乗るキメラワイバーンを撃ちまくる。

揺れるレッドの背中からの射撃は中々あたらない。


念話騎士の乗るキメラワイバーンの進路を予測して、撃って、撃って、撃ちまくる。

何発撃っても、弾切れなしだ。


やがて、キメラワイバーンの硬い皮膚を貫通して弾丸がめり込む。

めり込んだ弾丸が体内で爆発する、5発目の命中でキメラワイバーンが落下していく。


「レッド! 落下するキメラワイバーンにトドメの火球を撃ち込んでくれ」

「了解だ」


キメラワイバーンが念話騎士ごと燃えつきる。

俺たちを追跡していたキメラワイバーンの動きも止まる。


「動きが止まったキメラワイバーンを、片っ端から始末していこう」


キメラワイバーンを4人がそれぞれ攻撃し、次々爆発させていく。


「続いてキメラオーガも始末するぞ」

動きが停止した地上のキメラオーガを、次々ばらばらに吹き飛ばしていく。

王宮の外側にいるキメラオーガは全て始末した。


後は王宮内のキメラオーガだな。


「レッド! 攻撃部隊を王宮前に運んできてくれ。攻撃部隊とともに王宮内に突入しようと思う」

「了解だ」


攻撃部隊200人をレッドが運んでくる。

攻撃部隊に伝達する。


「キメラオーガをコントロールしている騎士を始末した。王宮内のキメラオーガは動きが止まっているはずだ。」


「キメラオーガの始末は俺たちが行う。君たちは、ドワブ教団の騎士や兵士がいれば、見つけしだい捕らえてくれ。神官はいないだろうと思うがいれば同様だ。捕縛に抵抗するものは始末していい」


「また、牢に閉じ込められている者がいれば解放してほしい」


攻撃部隊と俺たちが王宮内に突入すると、至るところに兵士や騎士が倒れている。

王宮内は既に静かだ。

キメラオーガの動きが止まったからだろう。


「代理でキメラオーガをコントロールできる念話騎士がいれば、動き出すからな。攻撃部隊は、キメラオーガに対して気を抜かないように」


「動くキメラオーガがいれば相手をせず俺たちに任せてほしい。王宮の生き残りだが、王族であっても特別扱いする必要はない。奴らを助けにきた訳ではないからな」


王宮内で唯一騒然としている場所がある。攻撃部隊が急いでその場所に移動する。

部屋の前には、ドワブ教団側の者と思われる騎士たち50名が攻撃態勢をとっている。


攻撃部隊とドワブ教団の騎士たちの戦闘が始まる。

王宮内のキメラオーガを全て始末し終え、俺たちも攻撃部隊の戦闘場所に急ぐ。


ドワブ教団の騎士たちは、強化スキルでパワーアップした攻撃部隊の敵ではない。

10分と掛からず、ドワブ教団の騎士たちを制圧する。

生き残った騎士たちを拘束していく。


部屋のドアを必死で守っているエーデリア国の騎士たちが安堵で崩れ落ちる。

どの騎士も深手を負っている。


俺たちと、攻撃部隊がドアを開けて中に入る。

中でも戦闘が行われたようだが、もはや戦闘が終わっているようだ。

傷だらけの女性が1名だけ生き残っている。


「攻撃部隊は、王宮内に残っている敵の確認を行ってくれ。捕らえられているエルフや獣人たちを探し出して解放してくれ」


攻撃部隊が、王宮内の捜索に向かう。

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