第53話 邪神ドワブを倒せ

「あなた! ありがとう!」

「気にするな! 妻と娘が襲われて、何もしなければドラゴン王の名が廃るというものだ」


俺たちは、ドラゴン族の後ろに移動させてもらう。

ドラゴン族総出の攻撃が始まる。

魔虫は粉々になったり、燃え尽きたりしながら、次々地表に落下していく。


その時……ドラゴン族や俺たちの頭に強烈な念話が響き渡る。


「ドラゴン族風情が、神である我の邪魔をするのか! 我に臣従するのであれば生かしておいてやろう。ここで死に絶えるか、臣従するかどちらかを選べ!」


「ドワブ教の邪神よ! 信者たちにキメラオーガを大量に作らせる目的はなんですか!」

俺は頭の中で邪神に語りかけた。


「この世界の生き物を、全て絶滅させるつもりだ! 我を認めぬ神も生き物も全て無にしてやるのだ!」

「俺は神からあなたを倒すよう命じられています」


「人族風情が我を倒すだと……お笑いだな……」

「戦ってみますか?」


「いいだろう!」

魔虫の巨人の中から、邪神ドワブが現れる。

外見は小柄な女性のようにも見える。


俺は飛行スキルでドワブの近くに移動する。

容姿の整った綺麗な女性ではあるが、目は昆虫なのだ。

色は真っ黒、どこを見ているのかは分からない。


気味が悪い、それ以外の表現方法がない!

「人族のお前から攻撃をさせてやる。どうせ我に傷一つ付けることすらできないだろうからな!」


これはチャンスだ、油断してくれて感謝する。


俺をフルパワーにするぞ!

身体強化でドラゴン族と同じ強度の皮膚にし、さらに強化スキルで俺自身の魔法やスキルのパワーを10倍にする。


万能棒を出して『対戦車ライフルになれ。弾丸は徹甲弾と炸裂弾と焼夷弾の三つの機能を持ったものだ』と念じる。

万能棒が対戦車ライフルに変化する。


対戦車ライフルの反動を考えると、こいつを抱えて弾丸を撃ち出すことは無理なのだが、俺の身体能力は10倍になっている。

対戦車ライフルを猟銃のように使えるはずだ!


邪神ドアブに照準を合わせる。

「それは何だ。見たことのない道具だな。まあいい……さっさと使ってみろ」


ドワブの胸に向けて、直径13mmの弾丸を撃ち込む。

硬い戦車の装甲を貫通して内部で爆発するタイプの弾丸だ。


弾芯はタングステンだから、貫通力は抜群だぞ。

ドワブは皮膚を強化しているだろうから丁度いい強度のはずだ。


ドワブの強化した皮膚を貫通し内部で、弾丸が爆発、体が両断される。

2つになった上半身の頭部に向けて、もう一発撃ち込む。

しかし、バラバラになった体が集まって再生しようと動き出す。


このまま放っておけば直ぐに体を再生してしまうだろう。

「ホワイト! 肉片を凍らせてくれ!」


ホワイトが絶対零度に近い風を吹き付けて、バラバラになったドワブの体を凍らせる。

集まろうとしていた肉片の動きが止まる。


しかしもう上半身の再生は、半分終わりかけている。

もう少し冷凍が遅れれば、完全に再生が完了してしまっただろう。

何という再生能力だ!


対戦車ライフルを持って『日本刀になれ』と念じる。

対戦車ライフルが日本刀に変化する。日本刀を上段に構えてドワブに近づく。


『空間よ、裂けろ』と念じながら刀を振り下ろす。


ドワブの上半身に黒い裂け目ができている、空間ごと切り裂いたからだ。

続けて『空間よ、裂けろ』と念じながら水平に刀を振る。


空間が十文字に裂ける、切り裂けた部分が黒くなったままだ。

空間を切り裂くことで、この世界と別の異世界が繋がったはずだ。


ドワブの体が、次々に異世界に吸い込まれていく。

危うく自分自身も吸い込まれそうになったが、レッドが俺を掴まえてくれる。


頭の中に声がしている……

『異世界に飛ばしたぐらいで勝ったと思うなよ。すぐにこの世界に再生してやる。今回は油断したが次はお前を必ず殺す。覚えておけ』


別の声がしてきた。いつもの女神様の声だ。

「飛ばされた異世界に細工をしておいたから。仮にこの世界に転生しても普通の子どもとして転生することになるわ。残念でした、もうあなたが神の力を持つことはありません!」


「何だと! 我の力を侮るな。絶対復活してやる。女神! 覚えておけ」

邪神の声が消える。


「フウタ! 本当に良くやってくれました。お礼は後で考えておきます」

人間である私に、邪神と戦わせないで下さい、殺されるかと思いましたよ。


あれ……女神様の気配が消えた……

お〜い……女神様。

まあいいか、それよりも後始末のほうが大事だ。


「この無数の魔虫を全て退治しておかないといけない。ドアブは体の一部を、この虫に食わせているはずだ。魔虫をそのままにしておけば、ドアブが再生してしまう。レッド! 魔虫の駆除をドラゴン族にお願いしてもいいだろうか?」


「任せて!」


ドラゴン族が虫を駆除していく。

「レッド! グレーとともに魔虫の沼と製造拠点を、跡形もなく燃やし尽くしてほしい。念の為だ!」


「了解だ!」


魔虫の沼と製造拠点が燃え上がっていく。

これで虫の生き残りはいないと思うが。


一匹も魔虫の生き残りがいないかと聞かれれば……自信はない……


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