第51話 キメラオーガ製造拠点を破壊せよ3

作戦決行日が近づく……

獣人国に、グレーとレッドに運ばれてきた志願部隊200名が集合する。

俺は作戦参加者全員の、2週間の食料をマジックバックに詰め込んでいく。


俺の近くに志願部隊200人を集合させる。


「今から強化スキルを使って、試しに全員の魔法やスキルのパワーを10倍にしてみるぞ。他の者と間隔を十分にとって、10倍になった魔法やスキルのパワーを順番に確認してほしい。一斉に始めると危ないから注意して下さいね!」


全員が早く試してみたくて仕方がない様子だ。


まず火魔法系の騎士たちが横に並んで確かめ始める。

出てくる炎の大きさがいつもの10倍になっていることに驚いている。

周りで見ている者たちも早く自分の番がこないかと、待ち切れない様子だ。


剣技系の騎士たちも、10倍になったスキルで模擬戦を始めている。

相手を変えながら、熱心な模擬戦が続いている。


「実戦までに、威力をしっかりと確認しておいて下さい」

皆さん、楽しくて仕方がないみたいで、俺の話は聞いていないみたいだ。


準備が整い、出発日となる……

志願部隊の構成は、将軍級が4名に騎士196名だ。

アンジェとエメットにも、ミスリルの鎧も着込んでもらっている。

もちろん魔虫対策だ。


「さあ行きましょう。ドワブ教の製造拠点を潰して、この世界に平和をもたらしましょう」


ゴンドラを掴んでグレーとレッドが飛び立つ。

目標の魔虫の沼まで高速で移動する予定だ。

到着まで1時間も掛からないはずだ。


やがて、広い森の中央部に気味の悪い窪地が見えてくる。

あれが魔虫の沼なのか。沼から不気味なオーラ出ている。

その沼の横に大きな神殿が見えてくる。


この神殿が、キメラオーガの製造拠点であり研究拠点のようだ。

神殿も巨大だな……


こちらから製造拠点が見えるということは、敵からもこちらが見えているということだ。

さあ、戦闘を開始するぞ。


製造拠点の建物の前に、着地して志願兵を降ろしていく。

全員を集合させて、強化スキルで全員の魔法とスキルと防御力を10倍に引き上げる。

志願部隊は、早く力を試したいようだ。


「これから、製造拠点に対して上空からのを攻撃を開始する。中の奴らが混乱している隙に突入して下さい。我々も後に続きます。ただし邪神の相手はしないで下さい。その他、少しでも危ないと感じたら即撤退です。命を大事にして下さい」


「攻撃の目標は、キメラオーガの製造設備と研究者です。徹底的に破壊して下さい。キメラオーガを作り出すために捕らえられている者たちの救助もお願いします」


俺とアンジェ、エメット、レッド、グレーが上空に舞上がる。

アンジェ、エメットも、強化スキルでパワーと防御力が10倍になっている。もちろん俺も10倍ね。

ドラゴンにそんなものは必要ない。


「製造拠点の建物を軽く破壊しましょう。入口は壊さないで下さい。中に入れなくなります。完全破壊は最後です。目的は敵の注意をこちらに向けること。では始めましょう。攻撃隊が建物に入ったら我々も建物内に突入しますよ」


「了解!」


建物の入口から離れた場所を攻撃していく。

入口には敵の騎士団が集結している。

約200人というところか。


「あの騎士団を排除しておこう。レッドとグレー頼む!」

「了解! 母上! 面白くなってきましたね」


「そなたがフウタとともにいる理由が分かるぞ。いろいろあって飽きないな!」

レッドとグレーの攻撃により、騎士団が次々吹き飛ぶ。

攻撃部隊が建物の入口から内部に侵入していくのが見える。


入口の内部にも、約50人の騎士団が待ち受けている。

敵騎士団からの魔法攻撃が始まる。


敵騎士団からの魔法攻撃に対して、攻撃部隊が敵の攻撃を数倍上回る魔法攻撃で跳ね返していく。

攻撃部隊の方が、魔法のパワーも魔法の発動間隔も短い。

必然的に敵騎士団がどんどん倒されていく。


やがて騎士たちは逃げ出し始める。

剣技系の騎士が、猛スピードで敵騎士を追いかけて始末していく。


攻撃部隊が入口から通路に侵入し、長く伸びる通路を走り始める。

この通路は随分と長いな。


通路の途中に設けられている扉が開かれる、中から約20人の騎士団と、盾を持った兵30人が飛び出てくる。

盾を持つ兵士に守られた後方から魔法騎士の攻撃が始まる。


強化スキルで10倍にパワーアップした攻撃部隊の魔法が、盾ごと兵士を吹き飛ばしていく。

敵が混乱した隙を見逃すことなく剣技系の騎士が、有り得ないスピードで移動する。

魔法騎士たちを切り捨てていく。


攻撃部隊が通路を走る。


通路に設けられている扉が開かれる。

もうこれで3度目だ。


毎回思うが、守備兵や騎士たちからは、何の感情も感じない。

切られても言葉も発しない、気味が悪い。


彼らを倒して先に進む。


「我々も着地して、製造拠点の内部に突入しましょう!」

レッドとグレー、アンジェとエメットとともに通路に侵入する。

飛行スキルを使い、猛烈な速度で通路を飛行しながら移動する。


直ぐに先行する攻撃部隊に追いつく。

「負傷したものはいないか!」

「誰も負傷しておりません。強化スキルのおかげです」と、将軍たちが返答してくれる。


目の前には、頑丈そうな扉が見える。これで長い通路は終わりだ。

「レッド! 扉を吹き飛ばしてくれ!」


扉が吹き飛ぶ。

そのまま攻撃部隊が、部屋の中に飛び込む。


そこは部屋というより、巨大なドーム状の大空間だ。

キメラオーガの製造装置らしきものが、何百台と並んでいる。

この製造装置の中でキメラオーガが作られていくのか。


巨大なドーム状の空間内部は悪意や絶望、恐怖の膨大な感情エネルギーで満たされている。

気を許すとそれらの感情に支配されてしまいそうな程強力なエネルギーだ。

強化スキルで強化されていなければ、攻撃部隊も耐えられなかったかも知れない。


製造装置の脇には、研究者らしき者たちが立っている。

製造装置を操作しているようだ。

見回すと研究者の数は、ざっと200人くらいだ。


攻撃部隊がドーム内に突入してきたのを見ても、研究者たち驚かない。

そのまま装置の操作を続けている。

研究者たちの目は虚ろだ。

守備兵同様、彼らも感情がないようだ。


邪神のみが意志を持ち、残りの生き物は洗脳され意志を持たないロボット、そんな世界に何の意味があるというのだ。



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