第42話 ゴザリア国5
ザクセン城に向かい、キメラオーガ1000体が行軍中だ、体格は人の1.5倍ぐらいかな。
自分の意志を持たず、念話騎士にコントロールされるロボットとなったキメラオーガは、虚ろな目で前方のみを見つめて移動している。
彼らの後ろを、騎乗した騎士500騎が、一定間隔で移動する。
あの騎士の中に、キメラオーガをコントロールする奴がいるに違いない。
そいつを倒せば、キメラオーガの動きは止まるはずだ。
しかし、騎士は500騎もいて、誰が念話騎士だか分からない。
念話騎士をカモフラージュするため、そして攻撃から念話騎士を守るために500騎を揃えたのだな。
念話でコントロールする騎士とキメラオーガとの通信距離は、どれくらいまでが限界なのだろうか。
いろいろ確認しておきたいところだ。
観戦武官とともに、攻防戦が良く見えるところまでさらに近づき身を隠す。
やがてザクセンへの攻城戦が開始される。
城内からは引っ切り無しに矢が放たれている。
無数の矢が放たれるが、キメラオーガは意に返さないで前進を続ける。
放たれた矢は、キメラオーガに命中するものの、硬化した皮膚が全ての矢を跳ね返している。
矢による攻撃は何の効果もない、しかし城からは矢を放ち続ける。
城壁にたどり着いたキメラオーガは、当たり前のように城壁をスルスルと登っていく。
地面を走っているような移動速度で登っていき、直ぐに城壁の上に到達する。
よく見ると手足には、壁を登るための鉤爪のようなものが付けられている。
鉤爪を物凄い力で壁に食い込ませることで壁を登っているのだ。
鉤爪はキメラオーガの手足に食い込んでいる。
普通なら手足が痛いはずだ、ドーピングで痛覚を消し去っているのだろう。
俺はレッドに乗って、ザクセン城の上空を旋回する。
城の上空から戦況を偵察する。
キメラオーガ軍は城壁の上を、狼のような速度で移動している。
城壁を登り終えると、城壁の上で防御陣形を組んでいる兵と騎士たちに襲いかかる。
疲れるという感覚はないのかもしれない。
動きは素早いが攻撃はシンプルだ、体当たりで相手を吹き飛ばすか、鋭い爪で相手を切り裂くかのどちらかだ。
細かい戦闘バリエーションなどはないようだ。
兵たちが振り下ろす剣も、突き刺す槍も、キメラオーガの硬化した皮膚で全て跳ね返されている。
剣技スキルに優れた騎士による斬撃であれば、キメラオーガに多少の傷を付けることはできるようだ。
しかし、キメラオーガの動きは素早く、簡単に倒れてくれるキメラオーガはいないようだ。
兵と騎士がどんどん倒されていく。
兵と騎士が、全て倒されるのは時間の問題だろう。
上位の剣技スキル程度では、キメラオーガを倒せないことが分かった。
であるならば、レッドの火球はどうなのだろう?
キメラオーガに試してもらおう。
城壁の上は混戦状態なので、城壁の下で待機しているキメラオーガに放ってもらった。
火球がキメラオーガに対して撃ち込まれる。
あれ、魔法無効化はどうなったのかな!
ドラゴンは、人族程度の魔法無効化の小細工なんかで、どうにかできる相手ではないみたいだ!
やはり世界最強、規格外だ。
レッドは俺の嫁さんなのだが、本当に俺なんかが夫でいいのかな?
レッドの火球で、キメラオーガが吹き飛んでバラバラになる。
念話でコントロールする騎士と、キメラオーガとの距離はどれくらいなのかを確かめないといけないな。
今だと、コントロールする騎士と、キメラオーガとの距離は400mぐらいかな。
敵の矢が届かないぎりぎりの距離から、念話でコントロールできるようにしているようだな。
こいつらの戦い方がだいたい分かってきた。
逆に言えば、キメラオーガから半径400mの範囲内に念話騎士が必ずいる訳だから、探すのはそんなに大変ではない、見つけて始末すればこちらの勝ちということだ。
「レッド! キメラオーガに念話を送り続けている騎士が、どこかにいるか分かるかい?」
「面白そうだな。やってみるか!」
レッドが調べている。
「分かったぞ。念話をずっと送り続けているやつを探すのなんか簡単だぞ」
数秒も経っていないのに、すごい探知能力だな……
「キメラオーガとの戦い方が分かった。レッドに念話騎士を探してもらい、そいつを始末すればいいだけじゃないか。もちろん俺たちの戦い方を相手が知れば、改良を加えてくるはずだけどね」
「次は、俺の物理攻撃がキメラオーガに有効なのかも試してみよう」
俺は万能棒を持ち『対戦車ライフルになれ』と念じる。
万能棒が、通常のライフルと比較にならない威力を発揮する対戦車ライフルに変わる。
レッドに、キメラオーガ軍から、500歩ぐらい離れた場所に降ろしてくれるよう頼んだ。
俺は対戦車ライフルを地面にセットし、スコープを見ながら照準を、キメラオーガの体の真ん中に合わせて引き金を引く。
「チューン」という音がして、キメラオーガの腹に弾丸が命中する。キメラオーガが後ろに飛ばされる。
しばらく痙攣していたが動かなくなった。
しかししばらく経てば、脅威の再生能力で復活しそうだ。
レッドの火球のように、バラバラにしないとダメなようだな。
俺は再びレッドの背に乗り空中に飛び立つ。
万能棒を持ち『グレネードランチャーになれ』と念じる。万能棒がグレネードランチャーに変わる。
キメラオーガに200mくらい近づいてもらい、グレネード弾を発射する。
キメラオーガ数体がバラバラに吹き飛ぶ。
見た限り、再生しそうにはない。
キメラオーガの体をバラバラにしないと、脅威の再生能力で復活再生してしまう点は要注意だな。
そうなると、剣技による攻撃は難しいな。
遠くから攻撃して、船を沈めることができる火球砲は、有効かもしれない。
次に、レッドに教えてもらった念話騎士に照準を合わせ、グレネード弾を発射した。念話騎士がいると思われる場所の10人ぐらいの騎士が吹き飛ぶ。
しかしキメラオーガの動きに変化はない。
周りの騎士が身を挺して、念話騎士を守ったようだ。
グレネード弾は自動的に装填されるので、続けて引き金を引く。
また10人ぐらいの騎士が吹き飛ぶ。
このままでは念話騎士がやられてしまうと思ったのか、騎士たちが慌てて撤退し始める。
このぐらいにしておこう。
「俺たちが、念話騎士を探せることができることは、知られない方がいい」
キメラオーガも撤退を開始し始める。
キメラオーガ軍の様子を見る限り、城壁での戦いによる損傷はほとんどないようだ。
キメラオーガが撤退してしまう前に、魔法攻撃が無効化される距離を確認しておきたい。
アンジェとエメットに、キメラオーガから200歩ぐらい離れた距離から、魔弓と魔槍で攻撃をしてもらう。
魔法攻撃が無効化されることなく、キメラオーガはバラバラに吹き飛ぶ。
続けて、100歩と50歩の距離を試してもらう。
50歩ぐらいの距離まで近づくと、魔法攻撃が無効化されてしまうことが分かる。
キメラオーガ軍としては、50歩以上離れたところからの魔法攻撃なら、大した威力はないだろうと判断したのかもしれない。
キメラオーガ軍が引き上げたので、俺たちもゼピュロス国に帰還することにする。
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