第37話 空から攻撃

空から船を攻撃できる魔道具を、アンジェがエルフ国から持って帰って来る。

その魔道具は魔弓という。魔弓を引き絞ると自動的に矢が現れ。弓から撃ち出された矢が目標に当たると、矢が爆発する。


この弓は初代エルフ王が使っていたと伝えられる超貴重な宝物なのだそうだ。

エルフ国で矢の威力を試してみたところ、エルフ軍が鹵獲した連合軍の大きな船でも、矢を4発も撃ち込めば沈没させることができたそうだ。


しかし、そんな貴重な宝物を国外に持ち出して良かったのだろうか?


魔弓の欠点は使用する者の魔力の消耗が激しいことだ、アンジェも20発の矢を放つと魔力切れを起こしたそうだ。飛行しながら魔力切れを起こすと、墜落の危険性があるので危険だ。


そういう短所を補うため、魔弓には魔石をはめ込む穴が空いている。

魔弓には魔石を最大5個嵌め込めるようになっている。


アンジェに魔石を渡し、最大の5個を嵌め込んでもらう。

その状態で魔力切れになるまで、何発の矢を放てるかを確認する。


魔石を最大の5個を嵌め込んだ場合、最大200発の矢を放てることが分かる。

魔石はいくらでも生産できるから、ドアーフに魔石を10個嵌め込めるように改造してもらおうかな。

でも宝物を改造したら怒られるかな。


そうなると、問題はアンジェの弓の腕か!


「ところで、アンジェの弓の腕前はどうなの!」

「大丈夫ですよ、小さい頃から指導を受けながら練習してきましたから! 200歩離れたところからでも小さい的を狙えますよ」


「飛行しながら弓を使えるように、飛行射撃を十分練習しておいてほしいな。アンジェの安全を考えると、なるべく遠くから命中させられようになってほしい」

「心配していただいてありがとうございます。しっかり練習しておきます」


「ところでエメットの方はどうだった? 獣人国に良さそうな魔道具はあったの?」

「ありましたよ! 王から頂いた、この魔槍です! この魔槍が目標に当たると爆発します。槍はこのブレスレットとペアになっていて、槍を投げるとすぐに手の中に槍が再生されるのです!」


「それはすごいな。しかし槍を200歩離れたところから投げて、見事目標に当てられるものなの?」

「それは自信ありますよ、子供の時から練習していますしね! こう見えても獣人の力は人族の何倍もあるのですよ」


「その槍も、アンジェの弓と同じで、魔石が必要になるかな?」


「獣人国でいろいろ確かめてきました。まず、槍が1本でも当たれば船は沈没します。しかし私の場合、槍を10回投げると、魔力切れになってしまうみたいです。ブレスレッドには魔石が5個嵌め込めるようになっていますが、魔石を嵌め込んでの確認はまだやっていません」


エメットに魔石を5個渡し、すべて嵌め込んでもらう。

その状態で魔力切れになるまで、槍を何回投げられるか確認してもらう。

魔石を5個嵌め込んだ場合、最大50回の魔槍を投げられることが分かる。


「そうすると予備の魔石も用意しておけば、仮に敵が1000隻ぐらいで攻めてきても、俺とレッド、グレー、アンジェ、エメットで軽く撃退できそうだな」


ロケットを搭載した戦闘機が5機もある時点で、この世界では常識外れの戦力だよな。


「ゴザリア国の港に飛んでいって、軍船を沈めてみるか? レッドは俺たちを見守っていてほしい。万が一にも、魔力切れで墜落するようなことがあれば助けてほしい」


「やりましょう!」エメットとアンジェがやる気満々だ。

なんたって、あの憎きゴザリア国の軍船だからね。


翌日早朝、ゴザリア国の港に向かって4人で飛んで行く。

飛行についても4人が連携して飛べないと、衝突したりすると危ないので、散開したり隊列を組んだりしながら飛行練習を行ってみる。


ますます戦闘機だな。

編隊飛行だよ……


頭に描いたコースを自在に飛行できるといっても、周りとスピードや間隔をキープしないといけないから、編隊飛行は慣れが必要みたいだな。


高速で飛んでいるので、ゴザリア国の港にはすぐに到着。

上空から海面を見下ろすと、タイミング良く軍船が数隻停泊している。

しかも、兵士も乗っていないようなので、攻撃練習に最適だ。


「まずは、私から行きます」


船から200歩ぐらい離れたところまで飛行しながら、エメットが手に持った魔槍を、飛行しながら軍船の中央部に向かって投げる。

軍船に魔槍が当たり大爆発、船が沈没していく。


「次は、私ですよ」


アンジェも、船から200歩ぐらい離れたところまで飛行しながら、魔弓から連続して矢を放つ。

4本の矢が刺さり爆発したところで、軍船が沈没していく。


「最後は俺だ」


万能棒を持って『ロケットランチャー』と念じる。

万能棒がロケットランチャーに変形する。

ロケット弾は既に装填されている。


皆と同じ距離まで飛行しながら、照準を船の中央部の吃水線近くに合わせる、引き金を引くとロケット弾が船に命中する。

沈没どころか、船がバラバラになって吹き飛ぶ。


ロケット弾を撃ち終わると、新しいロケット弾が自動装填される。

今度は、船から500歩ぐらい離れて、ロケット弾を撃ち込んでみた。

これも命中し、船がバラバラになって吹き飛ぶ。


敵が高射砲を撃ってくる訳ではないから、まさに無敵戦闘機と言えるな。


俺の試し打ちはこれで終わりにしよう。


「アンジェとエメットは、飛行しながら軍船を攻撃する練習をしておいてくれ。兵士が空っぽの軍船が後4隻残っている。2回ずつ練習できるぞ」


攻撃の練習が終わったので、ゼピュロス国に戻ることにする。

今までゴザリア国には、散々な事をされてきたので、アンジェとエメットは胸がすく思いだろう。


帰りはレッドに変幻自在な飛行をしてもらい、俺たちがレッドを追尾するという飛行訓練をやってみる。

さすがドラゴンの飛行テクニックはすごい。ついていくのが精一杯だったが、いい訓練になる。


魔法で飛んでいるので、速度はいくらでも上げられるのだが。

実際に限界まで速度を上げて飛行してみると、俺たちはバランスを崩して何回か墜落しそうになる。

その度にレッドに助けてもらうことになる。


しかし自由に空を飛ぶのは楽しい。最高の気分だ。

飛行スキル最高だ。


「空を自在に飛ぶって面白いな。アンジェとエメットはどうだ?」

「本当に楽しいです」と、アンジェとエメットが喜んでいる。


「レッドに見守ってもらわないでも、墜落しないで飛べるように、早くならないといけないな」


それにしても、ドラゴンが2体いて、3機のロケット搭載戦闘機がいるような国に、ノコノコ攻め込んでくる国はないだろうな。


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