第33話 グレードラゴン1

翌朝、野菜や果物を詰め込んだ大きな箱をマジックバッグに入れた。

お土産を喜んでもらえるかな。


レッドの背に乗ってケレドロ洞窟に向かう。

ドワーフ5人も一緒だ。


ケレドロ洞窟の前に降りる。

「私が母と話をするから、洞窟の外で待っていてほしい」


「母上、お久しぶりです。レッドです」

レッドが洞窟の奥に、念話を送っている。


洞窟の奥から「レッド、久しぶりね。ちょっと待っていて」

大きな足音が近づいて来る。


グレーの色をした巨大なドラゴンだ、ドラゴン王より少し大きな気がする。

グレードラゴンから漏れ出す強烈なオーラを感じて、ドワーフたちが震え始める。

俺は相変わらず何ともない。


人族の姿になって待つレッドを見つけると、グレードラゴンも人族の姿になる。

グレーの髪色の美人で、目はレッドと同じ金色だ。


久しぶりに会った2人が、抱き合って何か話しているようだ。結婚したことを話しているに違いない。

怒らないでくれると……ありがたいな……


そんなことを思っていたら、母ドラゴンがこちらの方に鋭い視線を送ってくる。

これは……怒っている……


「人族の分際で、ドラゴンを嫁にするとは何事だ!」


レッドの婿になったとかいうこいつに向けて、最大量の威圧スキルを発動しているのだが……反応がないな。

鈍いのか? こいつは何も感じないみたいだけど! 


妙だな。普通の人族ではないようだ……

即刻、始末してやろうかと思ったが、こいつを試してみることにするか……


「お前がレッドの夫に相応しいか確かめさせてもらおう。

この近くにオーガの集落がある。そこに1人で行って、集落をまとめるオーガキングを倒してくるがいい!」


何だ……こいつ飄々としているな……

普通の人族ならオーガキングに瞬殺されるはずだぞ……怖くないのか?

オーガキングを知らないのかな?


「フウタと申します。よろしくお願いします。ところで、そのオーガキングというのは悪い奴なのですか?」


こいつは何を言っているのだ。

オーガキングと戦いたくないから、そんなことを言っているのだな。

「悪い奴とか、善い奴とか、関係あるのか!」


「オーガたちが、集落で誰にも迷惑を掛けることなく幸せに暮らしているのなら。その集落に攻め込むようなことをしたくありません。強い魔物を倒し、強さを証明することについては承知しました。ですから悪いことをしている魔物にしてもらえないでしょうか?」


「変わっているな! そのオーガは人族を食料にしているぞ。生きたまま食べるのが好みのようだ。集落には食料として常時人族が捕らえられている。しかしオーガにとって人族を食べることは生きるためだ、それは悪いことなのか?」


「生きていくために食べることを悪いこととは言えません。しかし食料として人族が捕らえられているという話を聞いた以上、同族としてそのままにはできません。その人族を助けたいと思います。オーガの集落はどこにありますか?」


「フウタ! 私がオーガの集落に連れて行こう」


レッドの背に乗せてもらい、オーガの集落に到着する。

その横にグレードラゴンも降り立つ、そのまま俺の行動を注視している。


集落の入口にドラゴンが2体も立っているのを見て、オーガの集落が騒然となっている。


万能棒を持って『日本刀になれ』と念じる。

「レッド、行ってくる」


フウタがどう戦うのか、見届けてやろうではないか……

こちらに逃げてきたりしたら始末してやる!


日本刀を持って、小走りに集落に入っていく。

オーガキングはあいつだな。


他のオーガの1.5倍はあるから間違いないだろう。

身長が3m近くあるな、奴の前で100体近いオーガが、槍や剣を持って戦闘態勢を整えている。


「オーガキング! 話がある! お前と戦いにきた。他のオーガは関係ないので、お前と1対1で勝負させてくれないか……どうだ」


「人族のくせに生意気な! お前らそいつを殺せ!」


100体近いオーガが、叫び声を上げながら一斉に突進してくる。

オーガキングと1対1の勝負はできそうにないし、日本刀で約100体のオーガを切るのは難しいかな。

日本刀を持って『グレネードランチャーになれ』と念じる。


刀がグレネードランチャーに変形する。


グレネードランチャーの弾丸を、オーガに向けて次々発射する。

グレネード弾は、着弾時の衝撃によって起爆する着発信管タイプだ。


オーガの硬い皮膚に当たると爆発し、爆風と金属破片で近くにいるオーガも、まとめてバラバラにしていく。

100体近いオーガが、全てバラバラになる。


残るはオーガキングだけだ。


グレネードランチャーを持ち『日本刀になれ』と念じる。

日本刀を持って、オーガキングの前に向かう。

オーガキングが持つ剣は、普通の剣に比べて厚さが3倍、幅が4倍の巨大な剣だ。


その剣は、人が振り回すなど、重くて絶対無理だろう。

剣いうより巨大な鉈かな。

使い方は、切るというより壊す感じだろうな。


刀を正眼に構えながら、オーガキングに少しずつ近づく。

オーガキングには剣術など必要ないだろうな。


オーガキングの方も準備運動なのだろう、小刻みに動きながら巨大な鉈を振り回している。

どこからでも、いつでも掛かってこいということかな。


巨体なのに、俊敏に動けることを見せつけている。

素早く動き、桁外れの膂力で巨大な鉈を相手に叩きつければ勝負が決まると思っている。


一発でも鉈の攻撃をもらえば俺の負けだ。

日本刀で巨大な鉈を受け流すのも、受け止めるのは危険だ、体捌きで全ての攻撃を躱さないといけない。


オーガキングが刀の間合いに入る。

俺の攻撃圏内だ、これでいつでもオーガキングを切ることができる。


オーガキングが巨大な鉈を力任せに、俺の頭に向かってものすごいスピードで振り下ろす。

俺を両断にしようとしている。



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